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同一労働同一賃金、会社は何から対応する?

同一労働同一賃金、会社は何から対応する?

同一労働同一賃金に何から対応すればよいかわからない中小企業向けに、 待遇の一覧化、仕事内容の確認、待遇差の理由の整理、 就業規則や賃金制度の確認まで、 実際に取り組みやすい順番でわかりやすく解説します。

Executive Summary

  • 最初から給与制度を全部作り直す必要はありません。
  • まず正社員とパートなどの待遇の違いを一覧にします。
  • 次に、実際の仕事内容と責任の違いを確認します。
  • 待遇差について「なぜ違うのか」を説明できるか確認します。
  • 説明しにくいところから優先順位をつけて見直します。

「同一労働同一賃金の意味は何となく分かった。 でも、うちの会社は結局何から手をつければいいのか?」

ここで止まってしまう中小企業の経営者や個人事業主の方は 少なくないのではないでしょうか。

正社員とパートの給与を全部比べるのか。 就業規則を作り直すのか。 給料を上げるのか。 社会保険まで確認するのか。

一度に考え始めると、 とても大きな作業に見えてしまいます。

しかし、 最初から会社の給与制度をすべて作り直す必要はありません。

まず必要なのは、 今の会社で 「誰に、どんな仕事をお願いし、どんな待遇にしているのか」 を見えるようにすることです。

そのうえで、 正社員とパート・有期雇用労働者などの待遇に違いがある場合、 なぜ違うのかを一つずつ確認していきます。

今回は、 小さな会社でも進めやすいように、 同一労働同一賃金への対応を順番に整理していきます。

まず「すぐに給料を上げなければ」と考えなくて大丈夫です

同一労働同一賃金と聞くと、 経営者として最初に頭に浮かぶのは、 やはり人件費ではないでしょうか。

「パートの給料を全部上げなければならないのか?」

「正社員との差をなくしたら、 人件費がいくら増えるのか?」

この不安から、 対応を後回しにしてしまうケースもあります。

しかし、 最初に行うべきことは、 一律の給与アップではありません。

まず確認するのは、 現在どのような待遇差があり、 その違いにどのような理由があるのか ということです。

理由を整理してみた結果、 仕事内容や責任の違いなどから説明できるものもあるでしょう。

一方で、 「なぜ違うのか誰も分からない」 「昔からそうしていただけ」 という待遇も見つかるかもしれません。

まずは、 その違いを見つけることから始めれば大丈夫です。

ステップ1 正社員とパートの待遇を全部並べる

最初に行うのは、 雇用形態ごとの待遇を一覧にすることです。

たとえば、 正社員、契約社員、パート、アルバイトなどについて、 次のような項目を書き出します。

  • 基本給
  • 時給
  • 賞与
  • 昇給
  • 通勤手当
  • 役職手当
  • 皆勤手当
  • 食事手当
  • 住宅に関する手当
  • 資格手当
  • 休暇制度
  • 慶弔に関する制度
  • 福利厚生
  • 健康診断
  • 研修や教育の機会

ここでは、 良い悪いを判断する必要はありません。

まずは、 「実際にどんな違いがあるのか」を見えるようにする ことが目的です。

頭の中だけで考えるのではなく、 紙や表に書き出すことをおすすめします。

簡単な待遇比較表を作ってみましょう

難しい書式を用意する必要はありません。

まずは、 次のような簡単な表でも十分です。

確認項目 正社員 パート 違いがある理由
基本給・時給 月給制 時給制 仕事内容・責任などを確認
賞与 あり なし 賞与の目的を確認
通勤手当 あり あり 支給条件を確認
役職手当 あり なし 役職・責任の違いを確認
研修 あり 一部なし 業務との関係を確認
福利厚生 あり 一部利用不可 利用条件や目的を確認

この表を作るだけでも、 今まで気づかなかった違いが見えてくることがあります。

たとえば、 「通勤手当は同じ条件だった」 「賞与だけ理由が説明できない」 「研修は正社員だけだった」 などです。

ステップ2 契約書ではなく「実際の仕事内容」を確認する

次に確認するのが、 実際にどのような仕事をしているのかです。

ここで大切なのは、 雇用契約書や求人票に書いてある仕事内容だけを見ないことです。

長く働いているうちに、 実際の仕事が変わっていることは珍しくありません。

たとえば、 入社時には 「簡単な補助業務」 として採用したパート社員がいたとします。

しかし数年後には、 新人教育を任され、 お客様への対応も行い、 店長がいないときには現場の判断までしているかもしれません。

一方、 書類上では今も 「パート・補助業務」 のままというケースがあります。

このような場合、 会社が想定している役割と、 現場で実際に担っている役割にズレがないか を確認する必要があります。

仕事内容だけでなく「責任」も確認します

同じ作業をしているからといって、 必ずしも同じ役割とは限りません。

たとえば、 正社員もパートもレジを担当しているとします。

しかし正社員には、

  • 売上金の管理
  • 新人への指導
  • シフト作成
  • クレームへの最終対応
  • 欠員時の勤務調整
  • 店舗運営に関する判断

まで任せているかもしれません。

この場合、 レジという一つの作業だけを見るのではなく、 仕事全体や責任の範囲を確認することが大切です。

反対に、 パート社員にも正社員とほぼ同じ責任を持たせているのであれば、 その実態も正確に把握する必要があります。

ステップ3 待遇が違う理由を書いてみる

待遇と仕事内容を整理したら、 次は待遇差について理由を書いてみます。

ここが、 同一労働同一賃金への対応で非常に大切な部分です。

たとえば、

「正社員には役職手当があるが、 パートにはない」

という違いがあるとします。

その理由が、 「正社員だけだから」 ではなく、

「店舗運営の責任を負う役職者に対して、 その責任に応じて支給している」

と整理できるのであれば、 なぜ違うのかを説明しやすくなります。

一方で、

「パートには通勤手当がない」

という違いについて理由を考えたとき、

「昔からパートには払っていない」

しか理由が出てこない場合は、 一度詳しく確認した方がよいでしょう。

「なぜ?」を3回繰り返すと見えてきます

待遇差の理由を整理するときは、 一度だけ理由を考えるのではなく、 「なぜ?」を繰り返してみると分かりやすくなります。

たとえば、

「なぜ正社員だけにこの手当を支給しているのか?」

「正社員だから」

では、 もう一度考えます。

「なぜ正社員であることが、その手当の支給理由になるのか?」

さらに、

「その手当は、そもそも何に対して支給しているのか?」

と考えていきます。

すると、 手当の本来の目的と、 今の運用が合っているかが見えてきます。

「雇用形態が違うから」ではなく、 仕事や責任、制度の目的まで掘り下げる ことが重要です。

ステップ4 説明しにくい待遇から優先順位をつける

待遇差を整理すると、 「これは説明できる」 というものと、 「これは少し説明しにくい」 というものが出てきます。

ここで、 一度にすべてを変えようとする必要はありません。

優先順位をつけて確認していきます。

たとえば、 次のようなものから確認すると進めやすいでしょう。

  1. 待遇差の理由をまったく説明できないもの
  2. 正社員とパートで仕事内容がほぼ同じなのに差が大きいもの
  3. 従業員から質問や不満が出ているもの
  4. 賞与や手当など金額への影響が大きいもの
  5. 採用や定着に影響しているもの

この順番で見ていくと、 「全部直さなければ」 という状態から、 「まずここを確認しよう」 という状態に変えられます。

ステップ5 就業規則や賃金規程と実際の運用を確認する

会社によっては、 就業規則や賃金規程に書いてある内容と、 実際の給与の支払い方が違っていることがあります。

たとえば、 規程では 「一定の条件を満たした者に手当を支給する」 と書いてあるのに、 実際には正社員だけに支給しているケースです。

また、 雇用契約書に書かれている業務内容と、 実際の仕事内容が大きく違っている場合もあります。

そのため、 待遇差を確認するときには、 次の資料も確認しておきましょう。

  • 就業規則
  • 賃金規程
  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 給与明細
  • 各種手当の支給ルール
  • 評価制度

書類と実際の運用が一致しているかを見ることが大切です。

就業規則をいきなり書き換えない

待遇差に気づいたからといって、 すぐに就業規則を書き換えるのはおすすめできません。

まず、 実態を確認します。

次に、 どの待遇をどう見直すのかを検討します。

そのうえで、 必要に応じて就業規則や賃金規程、 雇用契約などを整えます。

特に、 従業員にとって不利益になるような労働条件の変更については、 別の法律上の問題も関係します。

「差をなくしたいから正社員の手当をなくす」 というような単純な変更は避ける ことが大切です。

大きな制度変更を行う場合は、 社会保険労務士などの専門家に確認しながら進めることをおすすめします。

給与を上げる前に、社会保険への影響も確認する

Day3でもお伝えしたように、 同一労働同一賃金と社会保険は別の制度です。

ただし、 給与や労働時間を見直すことで、 社会保険の加入や保険料に影響する場合があります。

そのため、 パート社員の給与を見直すときには、 給与額だけを変更するのではなく、 次の項目も一緒に確認すると安心です。

  • 週の所定労働時間
  • 月額の賃金
  • 現在の社会保険加入状況
  • 変更後の社会保険への影響
  • 会社負担の社会保険料
  • 年間の総人件費

こうしておけば、 待遇を改善したあとで 「思ったより会社負担が増えてしまった」 ということを減らせます。

従業員にも分かる言葉で説明できるようにする

制度を整理したら、 次に重要なのが従業員への説明です。

経営者や人事担当者だけが理解している状態では十分ではありません。

たとえば、 従業員から

「どうしたら時給が上がるんですか?」

「なぜ正社員にはこの手当があるのですか?」

「正社員と同じ仕事をしていると思うのですが、 なぜ待遇が違うのですか?」

と聞かれたときに、 分かりやすく答えられる状態を目指します。

そのためには、 難しい人事用語を使う必要はありません。

たとえば、

「この手当は、店舗全体の管理責任を持つ人に支給しています」

「この仕事までできるようになると、 次の時給区分になります」

と説明できれば、 従業員にも理解しやすくなります。

「説明できる会社」にすると採用や定着にも役立ちます

同一労働同一賃金への対応は、 法律への対応だけで終わらせる必要はありません。

給与や役割を整理すると、 採用にも活用できます。

たとえば求人を出すときに、

「入社時の時給は1,200円。 この仕事まで担当できるようになると1,300円」

「責任者になると役職手当を支給」

と説明できれば、 応募者にも将来の働き方が伝わりやすくなります。

現在働いている従業員にとっても、 「何を頑張れば評価されるのか」 が分かりやすくなります。

これは、 従業員の納得感や定着にもつながる可能性があります。

90日で進めるなら、この順番がおすすめです

「やることは分かったけれど、 日々の仕事が忙しくて一気にはできない」

という経営者も多いでしょう。

その場合は、 3か月程度に分けて進めると取り組みやすくなります。

1か月目:現状を見える化する

  • 雇用区分を整理する
  • 給与・賞与・手当を一覧にする
  • 福利厚生や研修制度も一覧にする
  • 実際の仕事内容を確認する

この段階では、 すぐに制度を変更する必要はありません。

2か月目:待遇差の理由を確認する

  • 正社員とパートの仕事内容を比較する
  • 責任の違いを確認する
  • 待遇差の理由を書き出す
  • 説明しにくい項目を見つける

3か月目:必要なところから見直す

  • 優先順位を決める
  • 必要な待遇を見直す
  • 社会保険を含めて人件費を試算する
  • 就業規則や賃金規程を確認する
  • 従業員への説明方法を準備する

このように、 一度にすべて変更するのではなく、 現状把握 → 理由の確認 → 必要な見直し の順番で進めると分かりやすくなります。

会社の中だけで判断できないときは相談する

実際に確認を始めると、 判断に迷う項目が出てくることがあります。

たとえば、

  • この待遇差は問題ないのか
  • 賞与をどのように考えればよいのか
  • 就業規則を変える必要があるのか
  • 給与を変更した場合、社会保険はどうなるのか
  • 従業員へどのように説明すればよいのか

といった内容です。

こうした場合に、 経営者だけで無理に判断する必要はありません。

厚生労働省では、 同一労働同一賃金への対応を含む働き方改革について、 中小企業や小規模事業者が相談できる窓口を案内しています。

また、 給与制度や就業規則など個別の会社事情に関する判断については、 社会保険労務士などの専門家へ相談する方法もあります。

経営者が最初に見るべきなのは「金額」より「理由」です

同一労働同一賃金への対応を考えると、 どうしても 「いくら給与を上げればいいのか」 が気になります。

しかし、 最初から金額だけを考えると、 何を基準に見直せばよいのか分からなくなってしまいます。

先に確認するのは、

  • どんな仕事をしているのか
  • どんな責任を負っているのか
  • 待遇にどんな違いがあるのか
  • なぜ違うのか

という部分です。

そのうえで必要があれば、 給与や手当などの金額を見直します。

給与を先に変えるのではなく、 会社の仕事と待遇の関係を先に整理する。

これが、 中小企業にとって進めやすい対応方法です。

まとめ+要約

  • 同一労働同一賃金への対応は、 最初から給与制度をすべて作り直す必要はありません。
  • まず正社員、パート、有期雇用労働者などの待遇を一覧にして、 どこに違いがあるのかを確認します。
  • 次に、契約書だけではなく、 実際の仕事内容や責任の違いを確認します。
  • 待遇差について 「なぜ違うのか」を説明できるか確認し、 説明しにくい項目から優先順位をつけて見直します。
  • 給与を変更する場合は、 就業規則や社会保険への影響も含めて確認することが大切です。

次の一手: A4用紙1枚でも構いません。 「正社員・パート待遇比較表」を作り、 違いがある項目ごとに 「なぜ違うのか」を書いてみましょう。

FAQ

Q. 専門家に頼まないと対応できませんか?

最初の待遇の棚卸しや仕事内容の確認は、 自社でも始められます。 まずは正社員とパートなどの待遇を一覧にして、 実際の仕事内容や責任を書き出してみましょう。 そのうえで、 待遇差が適切か判断しにくい場合や、 就業規則・賃金規程を変更する場合は、 社会保険労務士などの専門家への相談をおすすめします。

Q. 従業員にも待遇差について説明した方がいいですか?

会社として、 正社員とパートなどの待遇がなぜ違うのかを 説明できる状態にしておくことが大切です。 給与制度を変更するときだけではなく、 従業員から質問された場合に、 仕事内容や責任、制度の目的などに基づいて 分かりやすく説明できるよう整理しておきましょう。

Q. 2026年10月に向けて、まず何を確認すればいいですか?

まず自社の正社員とパート・有期雇用労働者について、 基本給、賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練などの待遇を一覧にしましょう。 そのうえで、 仕事内容や責任などと照らして、 待遇差について説明できるかを確認します。 改正された同一労働同一賃金ガイドライン等の内容も確認しながら、 必要な部分から見直していくことが大切です。

Q. 待遇差をなくすために、正社員の手当を減らしてもいいですか?

単純に正社員側の給与や手当を下げれば解決する、 という考え方は避けた方がよいでしょう。 労働条件を不利益に変更する場合には、 同一労働同一賃金とは別の法律上の問題も関係します。 変更を検討する場合は、 現在の就業規則や雇用契約などを確認し、 必要に応じて専門家へ相談してください。

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参考資料

※本記事は、 同一労働同一賃金について一般的な理解を深めることを目的とした内容です。 実際に待遇差が適切かどうかは、 仕事内容、責任、配置変更の範囲、人事制度、雇用契約、 就業規則、賃金規程など個別の事情によって判断が異なります。 給与制度や労働条件の変更を行う場合は、 必要に応じて社会保険労務士や都道府県労働局などの 専門家・専門機関へご確認ください。

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