
BCPが後回しになる本当の理由
BCPや事業継続力強化計画が中小企業や個人事業主に広がりにくい理由を、 経営者の現実に寄り添って解説します。
対象読者:中小企業経営者、個人事業主、フリーランス
読了時間:約5分
テーマ:BCP、事業継続力強化計画、ジギョケイ、災害対策、経営リスク
Executive Summary
- BCPは重要でも緊急に見えにくい
- 多くの事業者は人手と知識で悩む
- 小規模事業者ほど必要性を感じにくい
- しかし災害時の差は準備で決まる
- まずは簡易版から始めればよい
導入
地震、豪雨、停電、感染症、取引先の停止など、事業が止まるきっかけは身近にあります。 それでもBCPや事業継続力強化計画は、日々の売上や人手不足への対応に比べると、 どうしても後回しになりがちです。 本記事では、中小企業経営者、個人事業主、フリーランスがなぜ計画策定に踏み出しにくいのかを整理します。 まずは「できていないこと」を責めるのではなく、止まったら困る業務を見つけるところから始めます。 小さく考えれば、BCPは特別な大企業向けの書類ではなく、事業を守るための実用的な備えになります。
1. BCPが後回しになる理由
BCPとは、災害や事故などで事業が止まりそうになったとき、 重要な業務をどう続けるか、どう早く再開するかを決めておく計画です。 中小企業庁も、業務中断リスクを下げ、短期間で復旧するためにBCP策定が重要だと説明しています。
参考: 中小企業庁「2025年版中小企業白書 第1部 第2章 第4節」
しかし、経営の現場では次のような声が多くあります。
- 「今すぐ売上につながらない」
- 「何から書けばよいかわからない」
- 「災害が起きたら、その時に考えるしかない」
- 「一人事業だから関係ないと思っていた」
この感覚は自然です。 BCPは、売上アップ施策のように成果がすぐ見えません。 だからこそ、重要なのに先送りされやすいのです。
たとえば、目の前に納期が迫っている仕事がある。 今月の資金繰りを確認しなければならない。 人手不足で現場にも出なければならない。 そのような状況で、まだ起きていない災害や事故への備えを優先するのは簡単ではありません。
しかし、事業が止まるリスクは、ある日突然やってきます。 大きな地震や豪雨だけではありません。 代表者の体調不良、主要取引先の停止、通信障害、パソコンの故障、データ消失なども、 小さな事業にとっては深刻な影響を与えます。
つまりBCPは、特別な会社だけが作るものではありません。 むしろ、代わりの人や余裕資金が少ない中小企業、個人事業主、フリーランスほど、 早めに考えておきたいテーマです。
2. 「必要性はあるが手が回らない」という現実
2025年版中小企業白書では、BCPを策定していない理由として、 「策定に必要なスキル・ノウハウがない」 「策定する人材を確保できない」 といったリソース不足が比較的高い割合で挙げられています。 小規模事業者では「必要性を感じない」とする割合も中小企業より高い傾向が示されています。
参考: 中小企業庁「2025年版中小企業白書 第1部 第2章 第4節」
つまり問題は、経営者の意識が低いことではありません。
多くの場合、問題は「忙しすぎる」「専門用語が難しい」「相談先がわからない」ことにあります。
中小企業の経営者は、営業、採用、資金繰り、現場対応、顧客対応など、 いくつもの役割を一人で担っています。 個人事業主やフリーランスであれば、仕事を取ること、納品すること、請求すること、 税務や事務処理まで、すべて自分で行うことも珍しくありません。
その中で「BCPを作りましょう」と言われても、 何から始めればよいのか分からず、結局そのままになってしまう。 これはとても現実的な課題です。
また、BCPという言葉自体が少し難しく感じられることもあります。 「専門家でなければ作れないのではないか」 「大企業のような分厚いマニュアルが必要なのではないか」 と思ってしまうと、最初の一歩が重くなります。
しかし、本当に大切なのは、立派な冊子を作ることではありません。 事業が止まりそうになったときに、何を優先し、誰に連絡し、どう動くかを決めておくことです。
3. ジギョケイは小さく始められる
事業継続力強化計画、いわゆるジギョケイは、 中小企業にとって取り組みやすいBCPと位置づけられています。 中小企業庁によると、認定を受けた事業者は税制措置、金融支援、 補助金加点などの支援を受けられる場合があります。
参考: 中小企業庁「事業継続力強化計画」
最初から立派な計画を作る必要はありません。
まずは次の3つだけでも十分です。
- 止まると困る仕事は何か
- 誰に連絡すべきか
- 何日以内に再開したいか
この3つが見えるだけで、事業の守り方は大きく変わります。
たとえば、飲食店であれば、停電時の冷蔵・冷凍品の管理、 予約客への連絡、仕入先の変更、営業再開の判断が重要になります。
建設業であれば、現場の安全確認、協力会社への連絡、資材の確保、 工期変更の連絡手順が重要になります。
フリーランスであれば、パソコンの故障、データの消失、体調不良、 納期遅延時の連絡方法などが重要になります。
業種や規模によって備える内容は違います。 だからこそ、自社に合った形で考えることが大切です。
ジギョケイを考えることは、災害時だけでなく、平時の経営改善にもつながります。 重要な業務を整理すれば、普段のムダも見えやすくなります。 連絡先を整理すれば、日常の対応も早くなります。 代替手段を考えれば、取引先や顧客への安心材料にもなります。
BCPやジギョケイは、単なる「もしもの備え」ではありません。 事業を続ける力を高めるための、経営の見直しでもあります。
まとめ+要約
- BCPは重要だが緊急に見えにくい
- 策定されない理由は人手・知識・時間不足が大きい
- 小規模事業者ほど「自分には関係ない」と感じやすい
- ジギョケイは中小企業向けの始めやすい制度
- 最初は「止まると困る業務」を決めるだけでよい
次の一手: まず、自社で1日止まると困る業務を3つ書き出しましょう。
FAQ
Q1. 一人で事業をしていてもBCPは必要ですか?
必要です。 むしろ代わりがいない分、体調不良、停電、パソコン故障、 取引先停止への備えが重要です。
Q2. BCPとジギョケイは同じですか?
近い考え方ですが、ジギョケイは中小企業が取り組みやすいように整理された認定制度です。 BCPを本格的に作る前の第一歩としても活用しやすい制度です。
Q3. 何から始めればよいですか?
まず「守るべき仕事」「連絡先」「復旧までの目標日数」を決めることから始めると進めやすくなります。 完璧な計画を作ろうとするより、実際に使える簡単なメモを作る方が現実的です。
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