
BCP策定が進まない3つの壁
BCPや事業継続力強化計画が進まない理由を、 人手不足・知識不足・優先順位の観点からわかりやすく解説します。
対象読者:中小企業経営者、個人事業主、フリーランス
読了時間:約5分
テーマ:BCP、事業継続力強化計画、ジギョケイ、人手不足、知識不足、小規模事業者
Executive Summary
- 最大の壁は知識不足ではなく着手不足
- 忙しい会社ほど備えが後回しになる
- 難しい書類と思うほど進まない
- 相談相手がいると一気に進みやすい
- 完璧より更新できる計画が大切
導入
BCPやジギョケイが進まない理由は、経営者が災害を軽く見ているからではありません。 多くの場合、日々の資金繰り、受注対応、人材不足、納期管理に追われ、 未来のリスクまで手が回らないのです。 本記事では、策定を妨げる3つの壁を整理し、どうすれば一歩目を軽くできるかを考えます。 計画は一度で完成させるものではなく、事業の変化に合わせて直していくものです。 まずは完璧な文書ではなく、使えるメモから始めることが現実的です。
1. 壁1:何を書けばよいかわからない
BCPと聞くと、分厚いマニュアルを想像する方が多いかもしれません。 「災害時の行動計画」「復旧手順」「代替拠点」「取引先対応」など、 難しそうな言葉が並ぶと、それだけで手が止まってしまいます。
しかし、小規模事業者に必要なのは、最初から立派な資料を作ることではありません。 最初の目的は、災害やトラブルが起きた時に、何を優先するかを決めておくことです。
まず決めるべきことは、シンプルです。
- 災害時に最優先で守るもの
- 事業を止めないために必要な人・物・情報
- 復旧までの連絡手順
- 代替手段
この程度でも、何も決めていない状態とは大きく違います。
たとえば飲食店であれば、停電時に食材をどう守るか、 予約客にどう連絡するか、仕入先が止まった時にどこへ相談するかが重要です。 建設業であれば、現場の安全確認、協力会社への連絡、資材の確保が優先課題になります。 フリーランスであれば、パソコンの故障、データ消失、体調不良、納期遅れへの備えが大切です。
つまり、BCPは特別な専門書類ではありません。 自分の事業が止まりそうになった時に、困ることを先に書き出す作業です。
ここで大切なのは、最初から正解を求めすぎないことです。 一度で完璧な計画を作ろうとすると、かえって動けなくなります。 まずは「これだけは止めたくない」という業務を1つ選ぶだけでも十分です。
2. 壁2:担当者がいない
中小企業白書では、BCP未策定の理由として、 人材を確保できないことや、必要なスキル・ノウハウがないことが挙げられています。
参考: 中小企業庁「2025年版中小企業白書 第1部 第2章 第4節」
これは中小企業や個人事業主にとって、とても現実的な問題です。
経理も営業も採用も社長が見ている。
フリーランスなら、営業、納品、請求、事務をすべて一人で行う。
その中でBCPまで考えるのは、簡単ではありません。 「担当者を決めてください」と言われても、そもそも人が足りない。 「社内で検討してください」と言われても、検討する時間が取れない。 こうした状況は、多くの小規模事業者に共通しています。
だからこそ、外部の専門家や商工会議所、支援機関を活用する意味があります。 すべてを社内だけで抱え込む必要はありません。
外部に相談するメリットは、単に書類作成を手伝ってもらえることだけではありません。 自社では当たり前になっているリスクを、第三者の目で見つけてもらえることにも価値があります。
たとえば、ある業務を「社長しかできない」と思い込んでいたとしても、 実際には手順を整理すれば家族や従業員に一部を任せられるかもしれません。 仕入先が1社だけだと思っていたとしても、代替候補を調べておくことで、 いざという時の選択肢を増やせるかもしれません。
BCPは、経営者一人で背負うためのものではありません。 事業を続けるために、周囲の協力を得やすくするための整理でもあります。
3. 壁3:必要性が伝わりにくい
BCPは「何も起きなかったら使わない計画」に見えます。 そのため、従業員や家族、取引先に必要性を説明しにくいことがあります。
経営者自身も、どこかで次のように感じているかもしれません。
- 本当に今やる必要があるのか
- 売上に直接つながるのか
- 忙しい時期に時間を割く価値があるのか
- 災害が起きなければ無駄になるのではないか
しかし実際には、BCPは災害時だけのものではありません。
たとえば、次のような平時の改善にもつながります。
- 連絡先の整理
- 業務の優先順位づけ
- 仕入先や外注先の見直し
- データのバックアップ
- 属人化している仕事の見える化
これはそのまま、日常業務の効率化にもつながります。
たとえば、緊急時の連絡先を整理することは、 普段の顧客対応や取引先対応を早くすることにもつながります。 重要業務を整理することは、日々の優先順位を見直すきっかけになります。 データのバックアップを整えることは、パソコン故障や誤削除への備えにもなります。
また、BCPやジギョケイに取り組んでいることは、 顧客や取引先に対して「この事業者は継続性を考えている」という安心材料にもなります。 特に法人取引では、納期、品質、安定供給への信頼が重要です。
つまりBCPは、災害時にだけ使う非常用の書類ではありません。 平時の事業を整え、顧客からの信頼を守るための経営ツールでもあります。
まとめ+要約
- BCPが進まない背景には現実的な壁がある
- 知識不足、人手不足、優先順位の低さが主な理由
- 完璧な計画より、使える簡易版が大切
- 外部の相談先を使うと着手しやすい
- BCPは日常業務の見直しにもなる
次の一手: BCP担当者を置けない場合は、まず外部相談を前提に進め方だけ決めましょう。
FAQ
Q1. BCPは社長だけで作れますか?
作れます。 ただし、従業員や家族、取引先が関わる部分は、早めに共有した方が実用的になります。 社長だけが知っている計画では、いざという時に動けない可能性があるためです。
Q2. 忙しくて時間が取れません。
最初は1時間で十分です。 重要業務、連絡先、代替手段の3つだけ決めましょう。 まとまった時間を取ろうとすると後回しになりやすいため、 まずは短時間で書き出すことをおすすめします。
Q3. 専門知識がなくても作れますか?
作れます。 ジギョケイは中小企業が取り組みやすい制度として整備されています。 難しい言葉をすべて理解してから始める必要はありません。 自社にとって重要な業務と、止まった時の対応を整理するところから始めれば十分です。
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