
職場は熱中症対策していますか?|Day3
エアコンの故障や能力不足で事故が起きたら。
会社の責任をどう考えるか
Executive Summary
- エアコンがあるだけでは安心できません
- 故障を把握したら早い対応が必要です
- 修理待ちでも仕事を続けるとは限りません
- 代わりの安全対策を実施します
- 放置すれば安全配慮が問われ得ます
「修理業者には連絡した。来るのは来週なので、 それまでは我慢してもらう」。
真夏の職場で、この判断は大きな危険を伴います。
エアコンが故障した場合、 修理を依頼しただけで会社の対応が終わるわけではありません。
従業員の安全を確保できないのであれば、 作業時間、作業場所、業務内容そのものを変更する判断が必要です。
1.安全配慮義務とは何か
労働契約法第5条では、使用者は、 労働者が生命や身体などの安全を確保しながら働けるよう、 必要な配慮をするものと定められています。
これを一般に「安全配慮義務」と呼びます。
すべての事故が、 直ちに会社の責任になるわけではありません。
しかし、危険を予測できたのに放置した、 必要な対策を取らなかった、 異変を訴えられても働かせ続けたといった事情があれば、 会社の対応が問われる可能性があります。
特に近年の夏は、 過去の感覚だけで判断することが危険です。
「昔も冷房なしで働いていた」
「去年は問題なかった」
このような過去の経験は、 今年の職場の安全を保証するものではありません。
2.エアコン故障時に必要な判断
エアコンが故障したら、 まず実際の室温やWBGTを確認します。
そのうえで、次のような対応を検討します。
- 別の部屋や拠点に移動する
- 在宅勤務に切り替える
- 営業時間や作業時間を短縮する
- 暑い時間帯の作業を中止する
- スポットクーラーなどを用意する
- 休憩回数を増やす
- 身体を冷やせる場所を確保する
- 業務そのものを一時停止する
小型の扇風機を一台置くだけでは、 室温や湿度が高い環境で、 十分な対策にならない場合があります。
扇風機は空気を動かすことはできますが、 室温そのものを下げるものではありません。
特に、室温が非常に高い場合や、 湿度が高く汗が蒸発しにくい場合には、 扇風機だけに頼ることは危険です。
どの対策が適切かは、 職場の状況や作業の負担によって異なります。
重要なのは、 「何か対策用品を置いたか」ではありません。
その対策によって、 従業員が安全に働ける状態になったかどうかです。
3.「修理中」は免責理由にならない
設備は突然故障することがあります。
故障そのものを、 完全に防ぐことは難しいでしょう。
しかし、故障がわかった後に、 会社がどのような対応をしたかは、 会社自身が判断できる部分です。
例えば、室温が高いとわかっているのに 通常どおり働かせることは避ける必要があります。
体調不良者が出ても作業を続ける、 水分補給や休憩を本人任せにする、 修理が終わるまで我慢するよう求めるといった対応も、 適切とはいえません。
修理を依頼しているという事実だけで、 従業員の安全が確保されるわけではありません。
修理が完了するまでの間に、 どのような代替策を取るかを決める必要があります。
代替の作業場所や働き方を用意できず、 安全を確保できない場合は、 休業や業務停止も選択肢になります。
売上への影響や納期の遅れを心配する気持ちは、 経営者として当然のことです。
しかし、熱中症事故が起きれば、 従業員本人と家族に深刻な影響を与えます。
さらに、救急対応、労災手続き、人員不足、 納期の遅れ、取引先への説明など、 会社の事業継続にも影響が及びます。
職場の信用、採用活動、従業員の定着にも、 長く影響する可能性があります。
目の前の業務を続けることよりも、 事故を防ぐことを優先しなければならない場面があります。
4.記録を残す意味
熱中症対策では、 会社が判断し、対応した内容を記録することも重要です。
記録する内容としては、 例えば次のような項目があります。
- 室温やWBGTの測定結果
- 設備の異常を確認した時刻
- エアコンが停止した日時
- 修理を依頼した日時
- 修理業者から伝えられた内容
- 作業時間を変更した内容
- 作業場所を変更した内容
- 在宅勤務へ切り替えた内容
- 従業員へ周知した内容
- 休憩を追加した時間
- 体調不良者への対応内容
- 医療機関や救急への連絡内容
- 空調設備の点検履歴
記録を残す目的は、 単に会社の責任を逃れることではありません。
過去の判断や対応を振り返り、 同じ危険を繰り返さないためです。
例えば、毎年同じ時期に冷房の効きが悪くなる場合は、 真夏になる前の点検や修理が必要かもしれません。
特定の部屋だけ温度が上がりやすい場合は、 部屋の使い方や作業場所を変える必要があります。
休憩を増やしても体調不良者が出る場合は、 作業時間や作業内容そのものを見直す必要があります。
設備の故障が起きてから考えるのではなく、 「真夏に冷房が止まったらどうするか」を 事前に決めておくことが重要です。
代替場所、在宅勤務への切り替え、 営業時間の短縮、業務停止の判断基準などを、 あらかじめ整理しておきましょう。
まとめ+要約
- エアコンの有無ではなく、 実際の職場環境を確認します
- 故障時は作業場所や作業時間の変更を検討します
- 修理依頼だけで安全対策が終わるわけではありません
- 安全を確保できなければ、 業務停止も選択肢です
- 判断や対応の記録を残し、 同じ危険の再発を防ぎます
FAQ
Q1.エアコンが故障したら、 必ず会社を休みにする必要がありますか?
必ずしも一律に休業する必要があるとは限りません。
別室への移動、在宅勤務、作業時間の変更、 休憩の追加などによって、 安全を確保できるかを確認します。
代替策を取っても安全を確保できない場合は、 業務の停止や休業を検討する必要があります。
Q2.従業員が「働ける」と言えば、 仕事を続けてもよいですか?
本人の希望だけで判断しないことが大切です。
室温、湿度、WBGT、作業の負担、 顔色、受け答え、歩き方などを確認します。
本人が大丈夫だと言っていても、 受け答えや動き方に異常がある場合は、 作業を止めて状態を確認してください。
Q3.古い建物で、 冷房を増設できない場合はどうしますか?
設備を増設できない場合でも、 作業時間の変更、休憩回数の追加、 冷房のある休憩場所の確保などを検討できます。
業務の分散、別の場所での作業、 在宅勤務、夏季の作業停止など、 設備以外の方法も含めて安全を確保します。
現在の建物で安全な環境を作ることが難しい場合は、 業務の進め方そのものを見直す必要があります。
参考資料
-
厚生労働省
「労働契約法」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa9536 -
厚生労働省
「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9174&dataType=1&pageNo=1