
職場は熱中症対策していますか?|Day4
中小企業でも実行できる熱中症対策。
90日を待たずに始める実践手順
Executive Summary
- 最初から完璧を目指す必要はありません
- まず担当者と連絡方法を決めます
- 暑い場所を実際に確認します
- 緊急時の行動を一枚にまとめます
- 毎日の確認で対策を改善します
「専門の担当者がいない」 「予算がない」 「何から始めればよいかわからない」。
中小企業や個人事業主の職場では、 このような悩みがあると思います。
しかし、熱中症対策は、 大がかりな設備投資だけを意味するものではありません。
今日決められること、 1週間以内に変えられること、 1か月以内に設備や働き方として見直すことに分ければ、 無理なく取り組みやすくなります。
最初から完璧な制度を作ることよりも、 命を守るために必要な行動を、 一つずつ確実に始めることが大切です。
1.今日中に決めること
まずは、難しい計画を作る前に、 今日中に決められる四つの項目から始めます。
責任者を決める
熱中症対策の責任者を一人決めます。
責任者は、職場の暑さを確認し、 休憩や水分補給が行われているかを確認する役割を担います。
ただし、その人にすべてを任せるという意味ではありません。
作業の中止、営業時間の短縮、 設備への支出などの重要な判断は、 経営者が責任を持って行う必要があります。
責任者が休みの日や外出している場合に備えて、 代理の担当者も決めておきます。
報告先を決める
体調不良や暑さによる異変を、 誰に伝えるかを明確にします。
電話、社内チャット、口頭、無線など、 現場で確実に使える方法を選びます。
連絡方法が複雑だと、 緊急時に報告が遅れるおそれがあります。
「まずこの人に連絡する」と、 全員がすぐに答えられる状態を目指します。
一人で外回りや作業をする人については、 定期的に連絡を取る時刻も決めておきます。
作業を止める基準を決める
熱中症が疑われる症状がある場合は、 本人が「大丈夫です」と言っても、 作業を続けさせない判断が必要です。
例えば、次のような変化が見られた場合は、 作業を止めて状態を確認します。
- ふらついている
- 返事がおかしい
- 普段より動きが遅い
- 強いだるさを訴えている
- 頭痛や吐き気がある
- 筋肉がつる
- 大量に汗をかいている
- 暑いのに汗が出ていない
- 顔色が悪い
- まっすぐ歩けない
意識がはっきりしない、 呼びかけへの反応がおかしい、 自力で水を飲めないといった場合は、 緊急性が高い状態です。
判断に迷う場合も、 救急要請をためらわないことが重要です。
身体を冷やす場所を決める
体調不良者を、 どこへ移動させるかを事前に決めます。
冷房の効いた部屋や休憩室がある場合は、 すぐに使える状態にしておきます。
物置になっている、 鍵がかかっている、 誰が鍵を持っているかわからないという状態では、 緊急時に使えません。
社内に冷房の効いた場所がない場合は、 近隣の事業所や施設を利用できるか確認します。
車両を一時的な冷却場所として使う場合は、 エアコンが確実に使える状態かを確認します。
エンジンを止めた車内は、 短時間で危険な暑さになることがあります。
人を車内に残したままにせず、 必ず安全な状態を確認してください。
2.1週間以内に行うこと
今日中に責任者や報告先を決めたら、 次は実際の職場環境を確認します。
暑い場所を洗い出す
経営者や責任者が、 実際に職場を歩いて確認します。
事務所から見ただけでは、 現場の暑さを正しく把握できないことがあります。
特に確認したい場所は、次のような場所です。
- 空調が届きにくい部屋
- 窓から強い日差しが入る場所
- 天井付近に熱がこもる場所
- 機械や調理器具から熱が出る場所
- 風通しの悪い倉庫
- 荷物の積み下ろしをする場所
- 屋根や壁が熱くなる仮設の作業場
- 休憩場所まで距離がある作業場所
暑さは時間帯によって変わります。
午前中は問題がなくても、 昼から午後にかけて急に暑くなる場所があります。
可能であれば、午前、昼、午後の複数回に分けて確認します。
暑さを測る方法を準備する
職場の暑さを感覚だけで判断せず、 温度やWBGTを確認できるようにします。
WBGTは、気温だけでなく、 湿度や日差しなども考慮した暑さの指標です。
WBGT計を用意する場合は、 誰が、どこで、いつ測定するかを決めます。
測定する場所は、 管理事務所や入口ではなく、 実際に人が作業する場所です。
機器を購入しただけで使われていない、 測定結果を見ても誰も判断しないという状態を避けます。
測定結果に応じて、 休憩を増やす、作業を短くする、 作業場所を変えるなどの行動につなげます。
対応手順を全員に知らせる
緊急時の手順を作成したら、 配布や掲示だけで終わらせないことが重要です。
朝礼やミーティングで、 内容を読み合わせます。
特に、次の質問に全員が答えられるか確認します。
- 熱中症らしい人を見つけたら誰に伝えるか
- どのような症状で作業を止めるか
- 身体を冷やす場所はどこか
- 救急車を呼ぶのは誰か
- 責任者が不在のときは誰に連絡するか
長いマニュアルを作るよりも、 緊急時の行動を一枚にまとめて、 見やすい場所へ掲示する方法も有効です。
緊急連絡先を確認する
近隣の医療機関、 救急要請の方法、 従業員の家族への連絡方法などを整理します。
医療機関については、 診療時間や受け入れ状況が変わる場合があります。
古い電話番号や、 現在は使われていない連絡先が残っていないか確認します。
緊急時に住所を伝えられるよう、 事業所や作業現場の住所も掲示しておきます。
建設現場や農地など、 住所だけでは場所が伝わりにくい場合は、 目印や入口までの経路も整理しておきます。
3.1か月以内に見直すこと
応急的な対策を整えた後は、 設備や働き方そのものを見直します。
空調設備を確認する
エアコンが動いているだけで、 安全な環境とは限りません。
実際に人が作業する場所まで、 冷気が届いているかを確認します。
次のような点も確認してください。
- 設定温度を下げても室温が下がらない
- 一部の部屋だけ冷えない
- 異音や異臭がする
- 水漏れがある
- フィルターが汚れている
- 室外機の周囲に物が置かれている
- 日差しや機械の排熱に能力が追いついていない
真夏に故障してから修理を依頼すると、 業者の予約が取れない場合があります。
本格的に暑くなる前に、 点検や清掃を行う計画を立てます。
故障した場合に備えて、 代替の作業場所や働き方も決めておきます。
仕事の割り振りを見直す
暑い時間帯に、 負担の大きい仕事が集中していないか確認します。
可能であれば、 重い作業や屋外作業を、 比較的涼しい時間帯へ移します。
一つの作業を長時間続けるのではなく、 複数の人で交代する方法も検討します。
納期や営業時間を変えられない場合でも、 作業の順番、休憩の取り方、人員配置を変えられることがあります。
「いつもこの方法でやっているから」と決めつけず、 夏季だけ仕事の進め方を変える発想が必要です。
一人作業の体制を見直す
一人作業では、 体調が悪くなっても周囲が気づけないことがあります。
可能な範囲で、 二人以上で互いに確認できる体制を作ります。
一人での作業を避けられない場合は、 定時連絡や電話による確認を取り入れます。
例えば、作業開始時、休憩時、終了時に、 担当者へ連絡する方法があります。
連絡が取れない場合に、 誰が確認へ向かうかも決めておきます。
厚生労働省も、 巡視、電話による報告、 二人以上で互いに確認する方法などを、 報告体制の例として示しています。
健康状態への配慮を見直す
同じ環境で働いていても、 熱中症になる危険は人によって異なります。
睡眠不足、体調不良、 暑さに慣れていない状態などは、 熱中症の危険を高める要因になります。
休み明けの人、 新しく入った人、 暑い職場での作業に慣れていない人には、 特に注意が必要です。
持病や服薬の状況によっては、 暑さへの配慮が必要になる場合があります。
ただし、病気や薬に関する情報は、 個人の大切な情報です。
本人のプライバシーに配慮しながら、 必要に応じて産業医、医師、保健師などの 専門家へ相談します。
経営者や管理者が、 病気や薬について自己判断することは避けます。
4.誰が何を担当するか
小さな会社でも、 役割を分けることで、 緊急時に動きやすくなります。
一人の担当者にすべてを任せるのではなく、 経営者、責任者、現場、働く人が、 それぞれの役割を理解することが大切です。
経営者の役割
- 作業停止や休業の最終判断をする
- 設備の修理や交換に必要な費用を決める
- 必要な人員配置を判断する
- 納期や営業時間の変更を判断する
- 安全を優先する方針を従業員へ伝える
- 対策が現場で実行されているか確認する
熱中症対策責任者の役割
- 室温やWBGTを確認する
- 対応手順を周知する
- 休憩や水分補給の実施状況を確認する
- 冷房や休憩場所の状態を確認する
- 測定結果や対応内容を記録する
- 問題があれば経営者へ報告する
現場責任者の役割
- 作業者へ声をかける
- 顔色や受け答えなどの変化を確認する
- 必要に応じて作業を中断する
- 体調不良者を冷却場所へ移動させる
- 責任者や救急へ連絡する
- 一人作業者の定時連絡を確認する
働く人の役割
- 自分の体調変化を早めに報告する
- 周囲の人の異変にも気づいたら報告する
- 決められた休憩を取る
- 定期的に水分を補給する
- 無理をして体調不良を隠さない
- 緊急時の連絡先と対応手順を確認する
役割を決めても、 担当者が不在の日に誰も動けなければ、 体制として十分ではありません。
責任者、現場責任者、連絡担当者には、 それぞれ代理の人を決めておきます。
人数が少ない職場では、 一人が複数の役割を担当することもあるでしょう。
その場合でも、 何を確認し、 どの段階で経営者へ報告するかを、 はっきりさせておく必要があります。
「担当者に任せているから大丈夫」 という状態は避けてください。
経営者は、対策を決めるだけでなく、 実際に行われているかまで確認する必要があります。
まとめ+要約
- 今日中に責任者と報告先を決めます
- 作業を止める基準と冷却場所を共有します
- 1週間以内に暑い場所を確認し、 温度やWBGTを測ります
- 空調設備と仕事の進め方を見直します
- 担当者が不在の場合の代理も決めます
FAQ
Q1.専任の安全担当者がいなくてもできますか?
専任の担当者がいなくても、 熱中症対策の責任者と役割を決めることはできます。
人数が少ない職場では、 経営者や現場責任者が兼任する場合もあるでしょう。
大切なのは、 誰が暑さを確認し、 誰が作業を止め、 誰が緊急連絡をするのかを明確にすることです。
作業停止や設備費用などの重要な判断には、 経営者が関与する必要があります。
Q2.WBGT計は必ず必要ですか?
WBGT計は、 対象となる作業の判断や、 日々の暑さ管理に役立ちます。
一般的な温度計だけでは、 湿度や日差しなどを十分に反映できません。
屋外、倉庫、工場、厨房など、 暑さの影響を受けやすい場所では、 WBGTを確認できるようにすることが重要です。
測定機器を用意した場合は、 実際の作業場所で使用し、 測定結果を休憩や作業中止の判断につなげてください。
Q3.一人で外回りをする従業員には、 どのように対応すればよいですか?
一人で働く人については、 異変の発見が遅れない仕組みが必要です。
例えば、作業開始時、休憩時、終了時などに、 電話や社内チャットで連絡する方法があります。
休憩できる場所、 飲み物を補給できる場所、 緊急時の連絡先も事前に確認します。
連絡がない場合に、 誰が本人へ連絡し、 必要に応じて現地確認を行うかも決めておきます。
位置情報などを利用する場合は、 利用目的や管理方法を説明し、 プライバシーにも配慮してください。
参考資料
-
厚生労働省
「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9174&dataType=1&pageNo=1 -
厚生労働省
「職場における熱中症予防基本対策要綱」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000633853.pdf