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家族・従業員に伝わってこそ備えになる

家族・従業員に伝わってこそ備えになる

家族・従業員に伝わってこそ備えになる

Executive Summary

  • 防災は「決めたこと」より「伝わっていること」が重要です。
  • 家族や従業員全員が最低限の行動を知る必要があります。
  • 安否確認・避難・判断者をあらかじめ共有します。
  • 周知は一度ではなく、繰り返し確認することが大切です。
  • 小さな訓練を続けることで、実際に動ける備えになります。

Day1では「備えているつもり」になっていないかを考え、Day2では自宅や会社の備えを「人・場所・情報・モノ・仕事」の5つに分けて整理しました。

Day3では、BCPや事業継続力強化計画、いわゆるジギョケイを「作って終わり」にせず、実際に使える状態にすることの大切さを確認しました。

Day4では、さらに重要なところに目を向けます。

それは、

「その備えは、家族や従業員に本当に伝わっていますか?」

ということです。

会社では経営者や防災担当者だけがBCPを理解している。

家庭では親だけが避難場所や防災用品の場所を知っている。

こうした状態は珍しくありません。

しかし、大規模災害は、

「詳しい人がその場にいるとき」

に起きるとは限りません。

社長が出張中かもしれません。

店長が休みかもしれません。

家族がそれぞれ学校や職場へ出ている時間かもしれません。

だからこそ、防災では、

「誰か一人が知っている」から 「みんなが最低限知っている」

へ変えていくことが大切です。

今回は、家庭と会社の両方で使える「伝える防災」について考えていきます。

目次

  1. 「伝えた」と「伝わった」は違う
  2. 家庭で最低限共有しておきたいこと
  3. 会社で最低限共有しておきたいこと
  4. 役割分担は「誰が何をするか」まで決める
  5. 小さな訓練を繰り返して「動ける備え」にする

1.「伝えた」と「伝わった」は違う

防災について話をすると、

「避難場所は前に伝えました」

「会社のマニュアルに書いてあります」

「グループチャットで連絡しました」

という言葉を聞くことがあります。

ここで一度考えてみたいのが、

「伝えたこと」と「相手に伝わっていること」は同じではない

という点です。

たとえば従業員に、

「災害時は指定避難場所へ避難してください」

と伝えていても、

その避難場所がどこにあるのか。

どの道を通ればよいのか。

店内にお客様がいる場合はどうするのか。

誰が最後に建物を確認するのか。

そこまで理解されていなければ、災害時には迷いが生まれます。

家庭でも同じです。

親が、

「何かあったら避難所に集合しよう」

と考えていても、子どもが避難所の名前を知らなければ、実際には集合できないかもしれません。

さらに、

「避難所」

「避難場所」

「一時的に安全を確保する場所」

など、言葉の意味を家族それぞれが違って理解している可能性もあります。

だからこそ、周知では、

「言ったから大丈夫」

ではなく、

「相手が自分の言葉で説明できるか」

を確認することが大切です。

難しいテストをする必要はありません。

家庭なら、

「大きな地震が起きて家に帰れなかったら、どこへ行く?」

会社なら、

「店長がいないときに災害が起きたら、誰の判断で避難する?」

と聞くだけでも構いません。

答えが一致しているかを確認する。

それだけでも、備えの実効性は大きく変わります。

2.家庭で最低限共有しておきたいこと

家庭の防災では、最初から細かなルールを何十個も決める必要はありません。

まずは、

「家族全員が最低限知っておくこと」

をそろえてみましょう。

たとえば、次のような内容です。

  • 自宅周辺で起こりやすい災害
  • 避難場所
  • 避難経路
  • 家族が離れているときの集合方法
  • 電話がつながらない場合の連絡方法
  • 非常用品の置き場所
  • 高齢者や子どもの対応
  • ペットがいる場合の対応

特に大切なのが、

「家族がバラバラの場所にいる場合」

を想定することです。

大きな地震が起きたとき、家族全員が自宅にいるとは限りません。

平日の昼間であれば、

  • 父親や母親は勤務先
  • 子どもは学校
  • 高齢の家族は病院や買い物先

ということも考えられます。

そのときに、

「とにかく家に戻る」

というルールだけでは危険な場合があります。

道路が寸断されているかもしれません。

火災が発生しているかもしれません。

自宅周辺が浸水している可能性もあります。

そのため、

「それぞれがまず自分の安全を確保する」

ことを前提にしながら、

「連絡が取れない場合はどうするか」

「どこで安否を確認するか」

を家族で話しておくことが大切です。

防災について家族全員で長時間話し合う必要はありません。

夕食のときに5分だけ、

「もし今、大きな地震が起きたら?」

と話してみる。

そこから始めても十分です。

3.会社で最低限共有しておきたいこと

会社では、経営者や防災担当者だけが防災の内容を理解していても十分ではありません。

災害が発生する時間帯によっては、

社長がいない。

管理職がいない。

防災担当者が休み。

という可能性があります。

そのため、全従業員が最低限知っておきたいことを整理しておきます。

たとえば、

  • 災害発生時に最初に何をするか
  • 避難場所はどこか
  • 避難経路はどこか
  • 安否確認はどの方法で行うか
  • 誰の指示に従うのか
  • 責任者不在時は誰が代わるのか
  • 出勤できない場合はどう連絡するか
  • 会社から連絡がない場合はどう行動するか

といったことです。

店舗であれば、

  • お客様の安全をどう確保するか
  • 店内からどう誘導するか
  • 閉店を誰が判断するか
  • 店長不在時の責任者は誰か

についても共有しておきたいところです。

工場や倉庫であれば、

  • 機械を止める必要があるか
  • 危険物や重量物がある場所はどこか
  • 立ち入りを避ける場所はどこか

など、職場ごとの危険についても考える必要があります。

ここで大切なのは、

「全員にBCPのすべてを覚えてもらう」

ことではありません。

数十ページある計画書を、従業員全員が細部まで覚えるのは現実的ではありません。

むしろ、

「最初の10分に何をするか」

を全員が理解しているほうが重要です。

自分の身を守る。

周囲の安全を確認する。

必要なら避難する。

安否を報告する。

その後の指示を確認する。

こうした基本的な流れを共有することから始めてみましょう。

4.役割分担は「誰が何をするか」まで決める

災害時の計画でよくあるのが、

「担当部署が対応する」

「責任者が判断する」

という書き方です。

しかし、実際に災害が起きたときには、

「具体的に誰が何をするのか」

まで決まっていたほうが動きやすくなります。

たとえば会社なら、

  • 避難の判断をする人
  • 従業員の人数を確認する人
  • 安否確認をまとめる人
  • お客様を誘導する人
  • 取引先へ連絡する人
  • ホームページやSNSを更新する人
  • 建物や設備の被害を確認する人

などがあります。

ただし、

「担当者を一人決めれば安心」

ではありません。

その人自身が出勤できない可能性があるからです。

そのため、

「第一担当」と「第二担当」

を決めておく方法もあります。

たとえば、

「安否確認は総務担当。総務担当が不在なら営業責任者」

「休業判断は社長。社長と連絡が取れなければ専務」

という形です。

個人事業主の場合も、

「自分しか知らないこと」

を一度整理してみましょう。

たとえば、

  • 顧客への連絡方法
  • 進行中の仕事
  • 取引先情報
  • 支払い予定
  • 請求予定
  • 重要書類の場所
  • データのバックアップ方法

などです。

もちろん、個人情報やパスワードなどを無条件で誰かに共有する必要はありません。

適切な管理をしたうえで、

「自分が数日動けない場合、何をどうするか」

を考えておくことが大切です。

役割分担とは、人に仕事を押しつけることではありません。

災害時に、

「みんなが誰かの指示を待って止まってしまう時間」

を減らすための準備です。

5.小さな訓練を繰り返して「動ける備え」にする

周知した内容が本当に伝わっているかを確認するには、実際に試してみることが一番です。

とはいえ、

「防災訓練をする時間がない」

「従業員全員を集めるのが難しい」

という会社も多いでしょう。

そこでおすすめしたいのが、

「小さな訓練を短時間で行う」

という方法です。

たとえば、

安否確認だけ試す

決めている連絡方法を使って、全従業員へ安否確認の連絡を送ってみます。

すると、

  • 連絡先が古い
  • グループに入っていない人がいる
  • 誰が回答を集計するのかわからない

という問題が見つかるかもしれません。

避難場所だけ確認する

朝礼や会議で、

「うちの避難場所はどこですか?」

と聞いてみます。

全員が同じ場所を答えられるでしょうか。

答えが違っていたら、その場で確認できます。

責任者不在を想定する

「今日は社長と店長がいないとします」

「今、大きな地震が起きました」

と仮定して、

「誰が判断する?」

と話してみます。

これだけでも、役割分担が本当に機能するか確認できます。

非常口まで歩いてみる

実際に非常口や避難経路まで歩いてみます。

すると、

  • 途中に荷物が置かれている
  • 扉の開け方を知らない人がいる
  • 夜間は暗くなる場所がある

といったことに気づくかもしれません。

家庭でも同じです。

たとえば休日に、

家族で避難場所まで歩いてみる。

非常用品の場所を全員で確認する。

災害用伝言サービスの使い方を確認する。

それだけでも立派な訓練です。

大切なのは、

「大きな訓練を年に一度だけやる」ことより、 「小さな確認を何度も行う」こと

です。

防災は、一度聞いたから一生覚えているものではありません。

人も変わります。

建物も変わります。

連絡方法も変わります。

だからこそ、繰り返し確認することが大切です。

「みんな知っているはず」を5つの質問で確認してみましょう

家庭でも会社でも、次の5つを聞いてみてください。

1.避難場所を全員が言えますか?

  • 場所の名前を知っていますか
  • そこまでの経路を知っていますか
  • そこへ行けない場合の代替案がありますか

2.連絡方法を全員が知っていますか?

  • 電話がつながらない場合の方法はありますか
  • 誰へ安否を報告するか決まっていますか
  • 連絡先は最新ですか

3.最初に何をするか分かっていますか?

  • まず自分の身を守ることを共有していますか
  • 避難の判断方法は決まっていますか
  • 安全確認の順番は決まっていますか

4.責任者がいなくても動けますか?

  • 代わりに判断する人は決まっていますか
  • その人自身が役割を知っていますか
  • 第二の担当者まで決まっていますか

5.最近、一度でも確認しましたか?

  • 安否確認を試しましたか
  • 避難場所を確認しましたか
  • 非常用品の場所を確認しましたか
  • 新しく入った従業員にも説明しましたか

ここで大切なのは、

「全部できていなければダメ」

という考え方ではありません。

一つでも、

「これは共有できていなかった」

と気づければ、それが見直しの第一歩です。

周知は「一度説明して終わり」にしない

防災で難しいのは、

一度伝えても時間がたつと忘れてしまうことです。

これは特別なことではありません。

日々の仕事や生活の中では、防災より優先しなければならないことがたくさんあります。

だからこそ、

「忘れないようにする」より、 「忘れてもまた思い出せる仕組みを作る」

と考えるほうが現実的です。

会社なら、

  • 入社時に防災ルールを説明する
  • 半年に一度、安否確認を試す
  • 防災週間などに5分だけ確認する
  • 責任者が変わったらBCPを見直す
  • 事務所を移転したら避難経路を確認する

といった方法があります。

家庭なら、

  • 防災用品の期限を確認するときに話し合う
  • 学校や勤務先が変わったときに集合方法を見直す
  • 引っ越したときにハザードマップを確認する
  • 年に一度、避難場所まで歩いてみる

といった方法でもよいでしょう。

防災を特別な行事にするのではなく、

「生活や仕事の中で、ときどき確認するもの」

にしていくことが、長く続けるためのポイントです。

まとめ+要約

今回、覚えておきたいのは次の5点です。

  • 防災では「伝えた」だけでなく「伝わっているか」の確認が重要です。
  • 家庭では避難場所、連絡方法、集合方法などを家族全員で共有します。
  • 会社では、最初の行動、安否確認、避難、判断者を従業員へ共有することが大切です。
  • 責任者不在に備えて、代わりに判断する人まで決めておきます。
  • 大規模な訓練だけでなく、短時間の小さな確認を繰り返すことが実効性につながります。

次の一手:今日、家族または従業員に「災害が起きたとき、最初に何をする?」と聞いてみてください。

全員が同じような答えを出せれば、備えは少しずつ共有されています。

答えが違っていても問題ありません。

その違いを今見つけることが重要です。

災害が起きてから初めて、

「そんな話は聞いていなかった」

となるよりも、

平常時に一度確認しておく。

その小さな会話が、いざというときの行動を変える可能性があります。

FAQ

Q1.従業員にBCPの内容をすべて覚えてもらう必要がありますか?

すべてを暗記してもらう必要はありません。

BCPの内容が多い場合、全従業員が細部まで理解するのは現実的ではありません。

まずは、

  • 自分の身をどう守るか
  • どこへ避難するか
  • 安否をどう報告するか
  • 誰の指示を受けるか
  • 責任者がいない場合はどうするか

といった、災害直後に必要な基本事項から共有するとよいでしょう。

そのうえで、役職や担当業務に応じて必要な内容を追加していく方法があります。

Q2.アルバイトやパートにも防災の説明は必要ですか?

災害は正社員だけが勤務している時間に起きるとは限りません。

店舗や事業所では、アルバイトやパートだけで現場を担当している時間帯に災害が発生する可能性もあります。

そのため、

  • 避難場所
  • 非常口
  • お客様の誘導方法
  • 安否確認方法
  • 責任者不在時の連絡先

など、勤務中に必要となる内容は雇用形態にかかわらず共有しておくことが大切です。

特に新しく入ったスタッフには、勤務開始時の説明に防災項目を加えておくと周知しやすくなります。

Q3.防災訓練を嫌がる従業員もいるのですが、どうすればよいでしょうか?

長時間の大掛かりな訓練だけを考える必要はありません。

まずは朝礼や定例会議の数分を使って、

「避難場所はどこ?」

「社長がいないときは誰が判断する?」

と確認するだけでも構いません。

安否確認のメッセージを試しに送るだけでも、一つの訓練になります。

大切なのは、

「訓練を実施したという記録を作ること」

ではなく、

「実際に動けるかを確認すること」

です。

短く、具体的で、仕事への負担が大きすぎない方法から始めると継続しやすくなります。

出典・参考情報

ご相談について

📩 「BCPやジギョケイはあるが、従業員への周知までできていない」「災害時の役割分担が曖昧になっている」「安否確認や防災訓練をどう始めればよいかわからない」など、災害への備えや事業継続について個別のご相談も承っています。

防災では、経営者や担当者だけが詳しくても十分ではありません。

いざというときに必要なのは、

「その場にいる人が、自分で次の行動を判断できる状態」

です。

すべてを一度に整える必要はありません。

まずは避難場所、安否確認方法、責任者不在時の対応など、重要なところから一つずつ共有していきましょう。

こちらからご相談ください

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