
紙だけBCPが危ない理由
Executive Summary
- 使えないBCPは現場に届いていません
- 原因は共有・訓練・更新の不足です
- 介護現場では人員変化が大きなリスクです
- 小さな確認を続けることが重要です
- 経営者の関与が実効性を高めます
BCPを作ったのに、いざという時に使えない。これは珍しい話ではありません。災害や感染症が起きた時、介護サービスを安定して続けることが重要であるため、厚生労働省も作成支援資料だけでなく、机上訓練に関する資料を示しています。
本稿では、なぜBCPが「紙だけ」になってしまうのかを扱います。対象は、中小零細企業、とくに介護事業者です。判断の基準は、計画書の完成度ではなく、現場が実際に動けるかどうかです。
まず、紙だけBCPに共通する3つの原因を整理します。次に、経営者が現場に確認すべき質問を示します。もし原因がわかれば、BCPは大がかりに作り直さなくても、少しずつ使える計画へ変えられます。
1. 紙だけBCPに共通する3つの原因
紙だけBCPには、よくある原因があります。
1つ目は、作った人しか知らないことです。
経営者、管理者、外部支援者だけで作り、現場職員に十分共有されていないケースです。
2つ目は、一度も練習していないことです。
非常時の動きは、読んだだけでは身につきません。避難、安否確認、連絡、代替業務の確認は、短時間でも練習が必要です。
3つ目は、古いまま残っていることです。
退職者の名前、変更前の電話番号、使っていない備品、古い送迎ルートが残っていると、非常時に混乱します。
2. 介護事業者で起きやすいズレ
介護事業者では、現場の変化が早く起こります。
新しい利用者が増える。
要介護度が変わる。
夜勤体制が変わる。
送迎担当が変わる。
感染症対応の考え方が変わる。
こうした変化がBCPに反映されていないと、計画と現場がずれていきます。
厚生労働省の資料でも、入所系、通所系、訪問系、居宅介護などに分けてBCP作成支援資料が整理されています。サービスの形が違えば、備えるべき動きも変わるからです。
つまり、他社のひな形をそのまま使っただけでは不十分です。自社の人員、自社の利用者、自社の地域リスクに合わせる必要があります。
3. 職員が動ける計画にする質問
BCPを見直す時は、難しい言葉よりも、現場が答えられる質問に変えることが大切です。
たとえば、次のような質問です。
「停電したら、最初に誰へ連絡しますか?」
「職員が半分しか来られない時、何を優先しますか?」
「送迎車が使えない時、どうしますか?」
「管理者が不在なら、誰が判断しますか?」
「利用者家族への連絡順は決まっていますか?」
この質問に答えられない場合、BCPはまだ現場に根づいていない可能性があります。
責める必要はありません。むしろ、答えられない点が見つかることは前進です。そこが改善ポイントだからです。
4. 今日からできる小さな改善
最初から大きな訓練をする必要はありません。
まずは15分の確認会で十分です。テーマを1つに絞ります。
たとえば今月は「停電時の動き」。
来月は「感染症発生時の連絡」。
再来月は「職員不足時の優先業務」。
このように小さく分けると、職員の負担が少なくなります。経営者も管理者も続けやすくなります。
BCPの本質は、立派なファイルを作ることではありません。困った時に、少しでも早く、落ち着いて、必要な行動ができる状態を作ることです。
まとめ+要約
- 紙だけBCPは共有不足から生まれます
- 訓練していない計画は非常時に使いにくいです
- 介護現場では日々の変化がBCPを古くします
- 質問形式にすると弱点が見つかります
- 小さな確認会を続けることが効果的です
次の一手:次回の職員会議で「停電時に最初にすること」を5分だけ確認しましょう。
FAQ
Q1. 職員にBCPを読ませれば十分ですか?
読むだけでは十分とはいえません。実際の行動を声に出して確認し、役割を試すことで、非常時に動きやすくなります。
Q2. 訓練をすると現場の負担が増えませんか?
大きな訓練にしなくても大丈夫です。15分の机上確認や、連絡網の確認だけでも改善につながります。
Q3. ひな形を使って作ったBCPでも問題ありませんか?
ひな形は便利ですが、そのままでは危険です。自社の利用者、職員、設備、地域事情に合わせて直す必要があります。
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参考資料
-
厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/douga_00002.html