
年末調整・確定申告で見落としたくない控除とは?年内に確認したい保険料・医療費・家族のこと【Day2】
「控除証明書が届いたけれど、ひとまず置いたままになっている」「会社に書類を出せば、あとは全部やってもらえると思っていた」
年末が近づくと、こうした声をよく耳にします。仕事や家事で忙しいなか、税金の書類まで気が回らないのは無理もありません。
ただ、勤務先が把握していない保険料や家族の状況は、自分から伝えなければ年末調整に反映されないことがあります。また、医療費控除など、年末調整では手続きできないものもあります。
Day1では、年末調整と確定申告の違いや、副業・開業について確認しました。Day2では、すでに支払ったお金や家族の状況から、確認しておきたい控除を整理します。
今回、考えたいのは次の問いです。
「新しくお金を使う前に、今年すでに支払ったものの中に、確認できていない控除はありませんか?」
- 控除額は、そのまま戻ってくる税金の額ではありません。
- 生命保険料・地震保険料・社会保険料・iDeCoは、証明書と支払状況を確認しましょう。
- 医療費控除や、確定申告で行う寄附金控除は、年末調整とは別に準備が必要です。
- 家族の控除は、昨年の情報をそのまま使わず、2026年分の条件で確認します。
- 控除を増やすためだけに、保険加入や買い物を急ぐ必要はありません。
1.そもそも「控除が使える」とは、どういうこと?
控除には、税金を計算するときの所得から一定額を差し引く「所得控除」と、計算した税額から直接差し引く「税額控除」があります。
今回取り上げる生命保険料控除や医療費控除などは、所得控除です。
「控除額が3万円あるから、税金が3万円戻る」という意味ではありません。
たとえば、所得控除が3万円増え、その部分にかかる所得税率が10%だったと仮定すると、所得税への影響は単純計算で3,000円です。これは仕組みを説明するための例で、復興特別所得税や住民税などは含めていません。
実際の効果は、本人の所得やほかの控除によって変わります。すでに所得税がかからない人では、所得控除が増えても所得税が減らない場合があります。
まずは「いくら支払えば得か」よりも、自分が利用できる制度を、漏れなく正しく確認することから始めましょう。
2.まず確認したい控除と、用意するもの
最初からすべてを計算する必要はありません。次の表で、自分に関係しそうな項目を探してみてください。
| 確認する項目 | 主に用意するもの | 手続きの目安 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 控除証明書、支払状況、契約内容が分かるもの | 年末調整または確定申告 |
| 地震保険料控除 | 控除証明書、契約内容が分かるもの | 年末調整または確定申告 |
| 社会保険料控除 | 国民年金の控除証明書、国民健康保険料などの支払額が分かるもの | 年末調整または確定申告 |
| iDeCoなどの小規模企業共済等掛金控除 | 掛金の払込証明書、給与からの控除状況 | 年末調整または確定申告 |
| 医療費控除 | 医療費通知、領収書、保険金や給付金の資料 | 確定申告 |
| 寄附金控除・ふるさと納税 | 寄附金の受領証明書など、寄附先・金額・手続状況 | 確定申告、または条件を満たす場合のワンストップ特例 |
| 配偶者・扶養親族などに関する控除 | 家族の年齢、年間の所得見込み、生計の状況 | 年末調整または確定申告 |
勤務先の提出期限や電子申告への対応は、それぞれ異なります。証明書がそろっていないときも、提出方法や後から対応できる範囲を早めに確認しておくと安心です。
3.生命保険料控除は「証明書の区分」と「今年の変更点」を確認
生命保険料控除では、証明書に記載された区分を確認しましょう。
- 一般生命保険料
- 介護医療保険料
- 個人年金保険料
さらに、新契約・旧契約の違いによって計算方法が異なります。商品名の印象だけで判断せず、保険会社が発行した控除証明書を見て整理するのが基本です。
2026年分は、23歳未満の扶養親族がいるなどの条件を満たす場合、新生命保険料に係る一般生命保険料控除の上限が、所得税で4万円から6万円に引き上げられる特例があります。
ただし、子どもが23歳未満なら無条件で適用されるわけではありません。扶養親族に該当するかなどの確認が必要です。また、介護医療保険料・個人年金保険料を含めた生命保険料控除全体の上限は、所得税で12万円のままです。
「上限が6万円になったから、6万円返ってくる」という意味でもありません。すでに加入している保険で対象になる場合もあり、この特例のために新しい保険に入る必要はありません。
地震保険料についても、控除証明書を確認しましょう。火災保険料の全額が、そのまま地震保険料控除になるわけではありません。
4.社会保険料は「給与から引かれている分」以外も確認する
会社員の方は、毎月の給与から社会保険料が差し引かれているため、「自分で確認するものはない」と思うかもしれません。
しかし、年の途中で転職した場合や、家族の国民年金保険料を支払った場合などには、別に確認したい支払いがあります。
- 就職・転職前に自分で支払った国民年金保険料
- 退職後などに自分で支払った国民健康保険料
- 生計を一にする配偶者や子どもなどのために、自分が実際に支払った対象保険料
社会保険料控除では、誰の保険料かだけでなく、誰が実際に支払ったかが大切です。家族の中で自由に控除を付け替えられる制度ではありません。
たとえば、親の年金から差し引かれた介護保険料などを、子どもが自分の社会保険料控除に入れることはできません。
また、給与から差し引かれてすでに反映されている保険料を、別にもう一度申告しないよう注意しましょう。
参考:国税庁「社会保険料控除」
5.iDeCoは生命保険料控除とは別。加入を急ぐ前に確認を
「個人年金だから、iDeCoも生命保険料控除に入れるのですか?」という疑問を持つ方もいます。
iDeCoの本人が支払った掛金は、生命保険料控除ではなく「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。
その年に支払った対象掛金は全額が所得控除の対象になりますが、全額が税金として戻るわけではありません。また、配偶者のiDeCo掛金を、自分の控除に振り替えることはできません。
すでに加入している方は、払込証明書と給与からの控除状況を確認しましょう。給与から差し引かれている掛金と、自分で払い込んでいる掛金では、勤務先での扱いを確認するポイントが異なります。
これから加入する方は、所得控除だけで判断しないことが大切です。
- 当面の生活費や事業資金に無理がないか
- 原則として老齢給付金を受け取れる年齢まで引き出せない点を理解しているか
- 手数料や運用商品の特徴を確認しているか
- 自分に所得控除の効果があるか
申込みから掛金の引落しまでには時間がかかります。今申し込めば必ず今年分の控除になるとは限らないため、受付状況や初回引落日を金融機関などへ確認してください。
6.医療費控除は「10万円を超えたか」だけで判断しない
医療費控除は、年末調整では受けられません。対象になる場合は、確定申告で手続きします。
基本となる計算は、次のとおりです。
対象となる支払医療費-保険金などで補てんされる金額-10万円
ただし、総所得金額等が200万円未満の場合、最後に差し引く金額は10万円ではなく、総所得金額等の5%です。医療費控除の上限は200万円です。
そのため、「医療費が10万円以下だから関係ない」とは限りません。
自分や生計を一にする家族のために実際に支払った対象医療費について、支払った人が整理します。単に家族全員の領収書を集め、税率が高い人に自由にまとめられるわけではありません。
今のうちに、次のものをまとめておきましょう。
- 病院・歯科医院・薬局などの領収書
- 医療費通知
- 対象になる通院交通費の日付・経路・金額の記録
- 保険金、高額療養費などの金額が分かる資料
医療費通知に年内の支払いがすべて載っているとは限りません。通知に載っていない分や、補てんされる金額も確認します。
なお、補てんされる金額は、その給付の対象となった医療費から差し引きます。余った分を、関係のない別の医療費から差し引く必要はありません。
市販薬については、条件を満たす場合にセルフメディケーション税制という選択肢もあります。ただし、同じ人が同じ年に、通常の医療費控除と併用することはできません。
7.ふるさと納税は「寄附した後の手続き」まで確認する
ふるさと納税は、寄附をしただけで手続きがすべて終わるわけではありません。
確認したいのは、寄附先・金額・証明書に加え、ワンストップ特例を使うのか、確定申告をするのかという点です。
医療費控除などのために確定申告を行うと、申請済みのワンストップ特例は無効になります。その場合は、ワンストップ特例を申請した分も含め、すべてのふるさと納税を確定申告に反映させる必要があります。
「寄附した自治体には申請したから大丈夫」と思い込まず、年末調整・確定申告の予定と一緒に確認しましょう。
また、自己負担が原則2,000円となる寄附額には上限があります。その上限は所得や家族、ほかの控除などによって変わります。
昨年と同額なら大丈夫とは限りません。今年の収入が減った方や、医療費控除などを使う予定の方は、現在の状況で確認することが大切です。
8.家族の控除は「昨年と同じ」で済ませない
保険料の証明書には目が向いても、家族の状況は確認が後回しになりがちです。
しかし、配偶者のパート収入、子どものアルバイト、親への生活費の援助などが変わると、控除の判断に影響することがあります。
2026年分は、基礎控除や給与所得控除、扶養親族等の所得要件にも改正があります。前年の申告書をそのまま写すのではなく、今年の案内で確認してください。
- 配偶者や子どもの年間の給与・副業収入などは、どのくらいか
- 「収入」と、必要経費や給与所得控除を反映した「所得」を混同していないか
- 家族の年齢や、生計を一にしている状況に変化がないか
- 家族同士で同じ扶養控除を重複して申告していないか
税金の扶養、健康保険の扶養、勤務先の家族手当は、別の制度です。一つの条件を満たしたから、ほかも同じ扱いになるとは限りません。
家族の収入に副業が含まれる場合も、給与だけを見て判断しないようにしましょう。
9.年内の準備は「追加で払う」より「確認してそろえる」から
控除を知ると、「年内に何か契約しないともったいない」と感じることがあるかもしれません。
しかし、必要のない保険や買い物で支出を増やすと、税金が多少減っても、手元のお金は減ってしまいます。
今から始めるなら、次の順番がおすすめです。
- すでに支払ったものを確認する。保険料、年金、医療費、寄附金などを洗い出します。
- 証明書をまとめる。紙と電子データの両方を確認します。
- 誰が支払ったかを確認する。家族分の支払いは、通帳や利用明細も見て整理します。
- 手続き先を分ける。勤務先へ出すものと、確定申告で使うものを分けます。
- 期限と不足書類を確認する。勤務先・保険会社・金融機関などへの問い合わせを早めに行います。
証明書が見当たらない場合は、発行元へ再発行や電子交付の方法を確認しましょう。なくしたからといって、すぐに控除を諦める必要はありません。
10.よくある質問
Q1.会社に控除証明書を提出すれば、全部の控除を受けられますか?
年末調整で扱える控除には範囲があります。医療費控除などは確定申告が必要です。また、証明書だけでなく、申告書への記入や家族の情報の申告も必要になります。
Q2.収入が少ない主婦でも、保険料控除を申告した方がよいですか?
本人の所得や税額によって効果が異なります。所得税がかからない場合、控除を追加しても所得税は減らないことがあります。本人が支払った保険料を、自由に配偶者の控除へ移せるわけでもありません。
Q3.個人事業主なら、生命保険料やiDeCoを経費にできますか?
個人の所得控除と、事業の必要経費は別です。個人の生命保険料控除やiDeCoの掛金控除は、必要経費とは区別して扱います。事業に関係する保険の処理など、契約内容で判断が変わるものは税理士へ確認しましょう。
Q4.年末調整で控除を出し忘れたら、もう使えませんか?
すぐに使えなくなるとは限りません。勤務先で修正できるか確認し、対応できない場合は、確定申告などで適用を受ける方法を確認します。提出期限や必要書類は、手続きごとに確かめてください。
Q5.相談すると、保険やiDeCoへの加入を勧められませんか?
まず必要なのは、今ある契約や支払いの整理です。「追加の契約を考える前に、現在の状況を確認したい」と伝えて構いません。説明を受けても、家計や事業資金に無理があれば、その場で契約を決める必要はありません。
まとめ+要約
年末調整・確定申告の準備で大切なのは、控除を増やすために急いでお金を使うことではありません。すでに支払ったものと、今年の家族の状況を正しく整理することです。
- 生命保険料・地震保険料は、控除証明書の区分と支払状況を確認する。
- 社会保険料は、給与からの控除分以外に、自分で支払った対象保険料がないか確認する。
- iDeCoは生命保険料控除とは別の制度で、所得控除だけを理由に加入を急がない。
- 医療費控除は確定申告で手続きし、補てんされる金額も整理する。
- 確定申告を行う場合、ふるさと納税のワンストップ特例申請分も申告に含める。
- 家族に関する控除は、2026年分の条件と今年の所得見込みで確認する。
今日できる一歩は、届いている証明書を一か所に集め、「会社に提出するもの」「確定申告で使うもの」「確認が必要なもの」に分けることです。
次回予告|Day3:「副業が20万円以下なら申告しなくてよい」の思い違い
次回は、副業の「収入」と「所得」の違い、確定申告が不要になる条件、住民税の手続きについて整理します。会社員と、給与収入のない方では判断がどう違うのかも、具体例で確認します。
どこから整理すればよいか迷ったら
「証明書はあるけれど、何を確認すればよいか分からない」「家族の分も含めると整理しきれない」という場合は、現在の契約や支払い、家計の状況をまとめるところから相談してみてください。
相談時には、保険料などの証明書、今年の収入見込み、家族の状況が分かるものがあると話を進めやすくなります。
家計や保険の整理はFPなどへ、個別の控除の適用判断や税額計算、申告書の作成・代理については税理士へ相談しましょう。一般的な税の手続きは、税務署などの公的窓口でも確認できます。
参考情報
※本記事は2026年11月1日時点の公表情報に基づき、主に2026年分の所得税に関する年末調整・確定申告の準備を説明しています。適用条件や必要書類は個別の状況によって異なります。実際の手続きでは、対象年分の最新案内を確認してください。