
年末調整・確定申告に向けて、今からできる準備は?控除・副業・開業の基本を確認しよう
「控除証明書は届いているけれど、まだ何も整理していない」
「今年から副業を始めた。少額だから申告しなくてもよいのだろうか」
「個人事業主になれば、いろいろな支出を経費にできると聞いたけれど、本当?」
年末が近づくと、年末調整や確定申告について、気になることが増えてきます。
2026年11月の今からでも、資料の整理、収入や経費の確認、必要な手続きの確認など、進められることはあります。ただし、すべての制度や申請に、今から必ず間に合うわけではありません。
まずは「今年の収入」「使える可能性のある控除」「確認が必要な期限」を整理することから始めましょう。
この5日間では、年末調整と確定申告の違い、各種控除、副業の20万円の考え方、開業と経費、具体的な準備の順番を、分かりやすく確認していきます。
最初に押さえておきたい5つのポイント
- 年末調整で終わる人と、確定申告が必要な人では、準備する内容が異なります。
- 控除を確認するときは、証明書だけでなく、支払者や家族の状況も確認します。
- 「20万円以下なら申告不要」は、一定の給与所得者などに関する条件付きの取扱いです。
- 開業届を出すだけで、私生活の支出が経費になったり、青色申告を使えたりするわけではありません。
- 節税のために無理に支出せず、必要な記録と手続きを先に整えましょう。
この記事で考えたい問いは、「自分の2026年分の手続きについて、何を集め、何を確認すればよいかが分かっているか」です。
1.年末調整と確定申告は、何が違う?
年末調整は、勤務先が、その年に給与から差し引いた所得税などと、年間の正しい税額との差を精算する手続きです。対象となる会社員などは、必要な申告書や資料を勤務先へ提出します。
確定申告は、原則として、本人が1年間の所得や控除などを整理し、税額を計算して申告する手続きです。
年末調整を受けた人でも、副業などの状況によって確定申告が必要になる場合があります。また、医療費控除などを受けるために、確定申告を行う場合もあります。
| 主な状況 | 最初に確認したいこと |
|---|---|
| 勤務先で年末調整を受ける | 社内の提出期限、申告方法、必要な証明書類。 |
| 給与以外の収入がある | 収入の種類、必要経費、所得金額、確定申告の要否。 |
| 個人で事業を行っている | 売上や経費の記録、申告方法、届出・申請の状況。 |
| 医療費や寄附などがある | 控除の条件と、年末調整で扱えるか、確定申告が必要か。 |
「経営者」「会社員」「主婦」という立場だけで、必要な手続きは決まりません。実際の所得や働き方、適用する制度から確認しましょう。
2.今からできること① 今年の収入を一覧にする
最初に、2026年中の収入を、種類ごとに書き出します。
- 勤務先からの給与や賞与。
- 別の勤務先から受け取る給与。
- 業務委託、講師、制作、販売などの報酬や売上。
- 家賃収入や年金など、ほかに確認が必要な収入。
通帳への入金額だけで判断しないことも大切です。報酬から税金や手数料が差し引かれている場合、入金額と収入金額が異なることがあります。
また、事業の売上では、入金日だけでその年の収入が決まるとは限りません。請求書や取引の記録も合わせて確認してください。
家族に関する控除の確認にも役立つ
配偶者や子どもなどの所得が、家族の控除に関係する場合もあります。
その際は、収入と所得を区別して確認します。税法上の扶養、健康保険の扶養、勤務先の家族手当は、同じ基準とは限りません。
2026年分には制度変更もあるため、前年の金額や記載をそのまま使わず、その年分の案内を確認しましょう。
3.今からできること② 控除の資料を集める
各種控除は、対象となる条件を満たし、必要な申告をすることで適用を受けます。
まずは、次のような資料があるか確認してみてください。
| 確認する控除など | 準備のきっかけとなる資料 |
|---|---|
| 生命保険料控除 | 控除証明書、契約や実際の支払者が分かる情報。 |
| 地震保険料控除 | 控除証明書、対象となる契約や支払状況。 |
| 社会保険料控除 | 本人が支払った保険料の資料、必要な控除証明書。 |
| iDeCo・小規模企業共済など | 対象となる掛金の控除証明書など。 |
| 医療費控除 | 医療費通知、領収書、医療費を補う給付金などの情報。 |
| 寄附金控除など | 寄附金の受領証明書や、対応する電子データ。 |
| 配偶者・扶養などの控除 | 家族の年齢、所得、生計の状況など。 |
この表は一般的な確認項目です。資料があるだけで、必ず控除を受けられるという意味ではありません。
また、控除額がそのまま戻ってくるわけでもありません。所得から差し引く控除と、税額から差し引く控除では仕組みが異なり、実際の税額への影響は人によって変わります。
控除を増やすために買い物や保険加入を急ぐ前に、すでに支払ったものと、現在の条件を確認しましょう。
4.「収入20万円なら、確定申告しなくてよい」は要注意
よく聞く20万円の話は、すべての人に共通する非課税の枠ではありません。
代表的には、給与を1か所から受け、その給与の全部が源泉徴収の対象となっている人について、給与所得・退職所得以外の所得の合計額が20万円以下である場合などに、所得税の確定申告が不要となる取扱いがあります。
ただし、給与収入が2,000万円を超える場合など、別の申告条件もあるため、20万円だけで判断はできません。
国税庁の「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」で、自分の条件を確認してください。
事業や業務委託では「収入」と「所得」を分ける
たとえば、給与以外の業務委託収入が30万円あり、その収入を得るための必要経費が12万円であれば、その活動の所得は18万円となる計算が考えられます。
これは、必要経費として認められる支出が12万円あるという前提の例です。ほかの所得や本人の条件も確認しなければ、申告不要とは決められません。
一方、副業がアルバイトなどの給与である場合は、同じように自分で経費を引いて20万円と比べる考え方ではありません。給与が複数ある場合の条件を確認します。
給与のない人に、そのまま当てはめない
給与収入がなく、販売や業務委託などをしている人は、上記の給与所得者向けの取扱いを、そのまま使えるわけではありません。
主婦・主夫の方も、「副業が20万円以下だから」という言葉だけで判断せず、所得と控除などから申告の必要性を確認しましょう。
5.20万円以下でも、確認や記録は必要です
所得税の確定申告が不要になる条件に当てはまっても、何もしなくてよいとは限りません。
住民税の申告は別に確認する
所得税の20万円以下の取扱いが、そのまま住民税にも適用されるわけではありません。所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告が必要になることがあります。
住んでいる市区町村の案内で確認してください。
別の理由で確定申告するなら、対象所得も含める
医療費控除などのために所得税の確定申告をする場合は、20万円以下の給与以外の所得も、原則として申告に含める必要があります。
「医療費控除だけ申告し、副業分は20万円以下だから省略する」という扱いにはしないよう注意しましょう。
なお、法律上の申告不要制度が別にある所得などは、個別の確認が必要です。
6.開業届を出せば、何でも経費になるわけではありません
「個人事業主になれば、家賃や買い物を経費にできる」と聞くことがあります。
しかし、必要経費になるかは、開業届を出したことだけでは決まりません。
収入を得るために直接必要だった費用や、業務上の費用などかを確認します。私生活の支出が、開業したという理由だけで経費へ変わるわけではありません。
自宅の通信費など、仕事と生活の両方で使う支出は、業務に必要な部分を区分できるかなどの確認が必要です。
また、業務に関する雑所得でも、必要経費を差し引いて所得を計算します。「開業していないから、経費を一切差し引けない」という理解も正しくありません。
基本は、国税庁「No.2210 必要経費の知識」で確認できます。
事業所得かどうかは、活動の実態から考える
開業届を出しただけで、すべての収入が事業所得になるわけではありません。
活動の継続性や規模、営利性、記録などを含む実態に応じた判断が必要です。事業所得と雑所得では、赤字の扱いや利用できる制度などにも違いがあります。
節税のために形だけ整えるのではなく、どのような事業を継続して行うかを先に考えましょう。
7.個人事業として取り組むメリットと負担を知る
事業として継続する場合、売上と支出を記録することで、利益や資金の状況を把握しやすくなります。
また、条件を満たして青色申告の承認を受ければ、青色申告特別控除などの制度を利用できる場合があります。
一方で、帳簿の作成、証憑の保存、申告などの作業が必要です。会計ソフトや専門家への依頼に費用がかかる場合もあります。
| 検討する視点 | 考えたいこと |
|---|---|
| 事業の見通し | 誰に何を提供し、継続して収入を得るか。 |
| 制度の利用 | 事業所得などの条件や、青色申告の申請期限を満たすか。 |
| 事務の負担 | 記帳、資料保存、申告を誰が行うか。 |
| 費用と資金 | 必要な支出に対して、利益や手元資金を確保できるか。 |
| 家族や勤務先との関係 | 扶養の判定、社会保険、勤務先の副業規程などを確認したか。 |
青色申告は、開業届とは別に承認申請が必要です。新規開業の場合には、開業日から原則2か月以内となるケースがあります。
すでに活動を始めている人が、今から届出を出せば今年分の青色申告を必ず使える、ということではありません。開始日や提出状況を確認してください。
詳しくは、国税庁「No.2070 青色申告制度」をご覧ください。
8.申告するメリットは「必ずお金が戻る」ことではない
確定申告によって、申告しなければ反映できない控除を適用し、納め過ぎた税金が戻る場合があります。
ただし、所得を合算した結果、追加の納税が必要になることもあります。還付されることだけを期待して判断しないようにしましょう。
収入や経費を記録することには、自分の仕事の利益や支出を把握し、家族の控除や住民税の申告を正しく確認しやすくなる利点もあります。
一方、申告内容によって、所得に連動する制度や負担に関係する場合もあります。任意に申告を検討する際も、税額だけでなく全体を確認してください。
申告義務がある場合は適切に申告し、義務がない場合は、申告による影響も確認したうえで判断することが大切です。
9.今日から始めたい、3つの準備
① 今年の収入と必要経費を整理する
給与明細、売上明細、請求書、領収書などを集めます。副業は、仕事ごとの収入と支出が分かるようにしましょう。
② 控除資料を3つに分ける
「そろっているもの」「不足しているもの」「条件や金額の確認が必要なもの」に分けます。再発行が必要な資料は、早めに発行元へ確認します。
③ 確認する期限と相談先を決める
勤務先の提出期限、青色申告などの申請状況、申告方法を確認します。
証明書の表示は発行元、社内の提出方法は勤務先、個別の税務判断は税務署や税理士など、内容に合わせて相談先を選びましょう。
よくある質問
Q1.今からでも準備は間に合いますか?
資料の整理や記帳、必要な確認は今から進められます。ただし、勤務先の提出期限や各種申請の期限は個別に確認が必要です。すべての制度を今年分から利用できるとは限りません。
Q2.副業の売上が20万円以下なら、何もしなくてよいですか?
そうとは限りません。本人の給与の状況、収入の種類、所得金額などを確認します。所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になることがあります。
Q3.主婦・主夫でも、個人事業を始められますか?
働き方や事業内容に応じて検討できます。ただし、開業するだけで税務上有利になるとは限りません。収支、事務負担、扶養や社会保険などへの影響も確認しましょう。
Q4.年末に仕事用の物を買えば、今年の経費にできますか?
購入や支払いだけで決まるわけではありません。業務との関係、使用開始の状況、費用を計上する時期、減価償却の要否などを確認します。節税だけを理由に不要な支出を増やさないことが大切です。
Q5.FPに、確定申告もすべて任せられますか?
FPなどによる家計や資料の整理は準備の助けになりますが、税理士資格などに基づく権限がなければ、個別の税務相談、申告書の作成、申告代理などを行えるわけではありません。相談内容に応じて確認先を分けましょう。
まとめ+要約
- まずは2026年分の収入、経費、控除資料を整理しましょう。
- 20万円以下の取扱いは条件付きであり、すべての人に共通する非課税枠ではありません。
- 所得税と住民税、年末調整と確定申告の違いを確認します。
- 開業届だけで経費や青色申告の取扱いが決まるわけではありません。
- 無理に支出せず、不足資料と確認事項、期限を明らかにしましょう。
今日の一歩は、「今年、どこから、どのような収入を得たか」を一覧にすることです。
そこに控除資料と疑問点を加えると、自分に必要な準備が見えてきます。
次回は、見落としやすい控除と、年内に確認したいことを整理します
Day2では、保険料、社会保険料、iDeCo、医療費、寄附、家族に関する控除などを確認します。「今ある支払いを正しく整理すること」と「新たな支出をすること」を分けて考えていきましょう。
何から始めればよいか分からない方は、資料と疑問点の整理から進めてみませんか。
「副業の収支が分からない」「控除証明書がたまっている」「開業と家計への影響を整理したい」という方はご相談ください。
家計や保障、資料の状況を整理し、必要な確認先を明らかにするところからお手伝いします。個別の税務判断や申告書の作成・申告代理などは、税務署や税理士などへの確認・依頼が必要です。
参考資料
- 国税庁「令和8年分年末調整のしかた」
- 国税庁「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「No.2210 必要経費の知識」
- 国税庁「No.2070 青色申告制度」
- 一宮市「市民税・県民税申告書を提出していただくかた」
※本記事は、2026年11月1日時点で確認した公的資料を踏まえた一般的な情報です。主に2026年分の所得について、年末調整や翌年の確定申告に向けた準備を扱っています。申告義務、所得区分、控除、届出・申請の期限などは個別の状況で異なります。自治体資料は住民税と所得税の違いを確認する参考とし、対象年度や提出期限は最新の案内をご確認ください。