
難しいBCPは不要?小さな会社の90日防災計画
会社の地震対策が必要だと分かっていても、 「通常業務が忙しく、計画を作る時間がない」 「BCPは難しそうで、どこから始めればよいか分からない」 と感じる経営者や総務担当者は少なくありません。
防災対策を調べると、 専門用語や分厚い資料が多く、 小さな会社には大がかりすぎるように 見えることがあります。
しかし、最初から完璧な計画書を作る必要はありません。 本当に必要なのは、 災害が起きたときに人を守り、 重要な仕事をできるだけ早く再開するための 実行できる準備です。
この記事では、 小さな会社や個人事業主でも取り組みやすいように、 地震対策を90日間に分けて整理します。
この記事の要点
- BCPは、難しい計画書を作ることが目的ではありません。
- 最初の30日で、人命と初動対応を整えます。
- 次の30日で、重要業務と代わりの方法を決めます。
- 最後の30日で、訓練と見直しを行います。
- 90日後も、年に一度以上更新することが大切です。
地震や大規模災害が起きると、 従業員の安全、建物、設備、電気、通信、 物流、取引先などへ同時に影響が出る可能性があります。
災害直後は、限られた人数と情報の中で、 避難するのか、待機するのか、 会社を休業するのか、 どの仕事から再開するのかを判断しなければなりません。
平常時に何も決めていなければ、 経営者や総務担当者に判断が集中します。 連絡や対応が遅れ、 従業員や顧客へ不安を与えることもあります。
一方で、事前にすべての状況を予測することもできません。 そのため、防災計画は、 どのような災害でも迷わない完璧な答えを作るものではなく、 判断の順番と担当者を決めるものと考えてください。
90日計画では、 最初の30日で命を守る準備を行い、 次の30日で仕事を守る準備を行い、 最後の30日で実際に動けるかを確認します。
90日防災計画の全体像
| 期間 | 主な目的 | 取り組む内容 |
|---|---|---|
| 1日目から30日目 | 命と初動を守る | 危険箇所、安否確認、避難、備蓄、 緊急連絡先、判断者を整理する |
| 31日目から60日目 | 重要な仕事を守る | 重要業務、必要な人や設備、データ、 取引先、資金、代替方法を整理する |
| 61日目から90日目 | 実際に動ける状態にする | 安否確認、避難、データ復旧、 机上訓練を行い、計画を修正する |
BCPは何のために作るのか
BCPとは、 災害や事故などが起きたときに、 重要な仕事を続けたり、 中断した仕事を早く再開したりするための計画です。
日本語では、 「事業継続計画」と呼ばれます。
しかし、言葉を覚えることよりも、 次の四つを決めておくことが重要です。
- 誰の命と安全を守るか
- 何の仕事を優先するか
- 誰が判断するか
- 何が使えない場合にどうするか
例えば、 社長だけが顧客情報を持っている会社では、 社長と連絡が取れないと顧客対応が止まります。
一台の機械だけで製造している会社では、 その機械が壊れると生産が止まります。
一つの仕入先だけから材料を買っている会社では、 その仕入先が被災すると商品を作れなくなります。
BCPでは、こうした弱い部分を見つけ、 代わりの方法や判断手順を準備します。
BCPの完成度より、 災害時に従業員が迷わず動けるかどうかが大切です。
始める前に経営者が決める三つのこと
防災担当者を決めても、 経営者の関与がなければ、 予算や社内ルールを変更できず、 対策が途中で止まることがあります。
90日計画を始める前に、 経営者が次の三つを決めてください。
1.責任者
90日計画全体を進める責任者を一人決めます。 総務担当者、管理職、経営者本人など、 会社の規模に合った人で構いません。
2.時間
毎週30分など、 防災対策に使う時間をあらかじめ予定へ入れます。 空いた時間に進めようとすると、 通常業務が優先されやすくなります。
3.優先順位
最初からすべてに取り組まず、 人命、安全、安否確認、重要業務を優先します。 見た目のよい計画書づくりは後回しにします。
小規模な会社では、 一人が複数の役割を持っても構いません。
ただし、責任者が不在の場合に備えて、 代理となる人も決めてください。
1日目から30日目:命と初動を守る
最初の30日では、 詳細な事業計画よりも、 地震が起きた直後に人を守れる状態を目指します。
この期間に整えるのは、 危険箇所、避難、安否確認、備蓄、 緊急連絡先、判断者です。
1週目:会社の危険箇所を確認する
まず、経営者、総務担当者、 現場責任者など二人以上で、 会社の中と周辺を確認します。
一人で見ると、 普段から見慣れている危険を 見落とすことがあります。
室内で確認する場所
- 背の高い棚や書庫が固定されている
- 棚の上に重い物を置いていない
- 複合機や大型機器の移動防止をしている
- 窓ガラスや照明の落下対策をしている
- 通路や非常口を物がふさいでいない
- 消火器の場所と使用期限を確認している
- 机の下など頭を守れる場所がある
- 割れたガラスに備えた靴や履物がある
建物周辺で確認する場所
- 看板や外壁の落下が心配な場所を確認している
- 古いブロック塀の近くを避ける経路がある
- 避難場所までの道を確認している
- 津波、土砂災害、火災などの地域リスクを確認している
- 建物管理者の避難ルールを確認している
危険を見つけたら、 すぐ直せるものと、 費用や工事が必要なものに分けます。
| 危険箇所 | 考えられる被害 | 応急対応 | 本格対応 | 期限 |
|---|---|---|---|---|
| 背の高い書庫 | 転倒、けが、通路封鎖 | 周辺に座席を置かない | 壁へ固定する | 記入 |
| 非常口前の荷物 | 避難の遅れ | 当日移動する | 保管ルールを変更する | 記入 |
| 高い棚の商品 | 落下、破損 | 低い場所へ移す | 落下防止器具を付ける | 記入 |
2週目:安否確認と緊急連絡を整える
地震発生後に、 従業員一人ひとりへ電話をかける方法だけでは、 通信が混雑したときに確認が進まない可能性があります。
電話、メール、社内チャット、 安否確認サービス、災害用伝言サービスなど、 複数の方法を用意します。
安否確認で決める内容
- どの程度の地震や災害で確認を始めるか
- 最初に使う連絡手段は何か
- 使えない場合の第二手段は何か
- 誰が返信を集計するか
- 返信がない人へ誰が連絡するか
- いつまでに状況を経営者へ報告するか
最初の報告は簡単にする
災害直後から詳しい説明を求めると、 従業員の負担が大きくなります。
最初は、本人の安全、現在地、 家族対応の必要性、業務対応の可否に絞ります。
安否確認メッセージのひな形
地震が発生しました。 まず、ご自身と周囲の安全を確保してください。 安全が確認できた方は、 次の四項目を返信してください。
- 本人の状況:無事/けがあり
- 現在地:自宅/会社/移動中/その他
- 家族への対応:必要/不要
- 業務対応:可能/困難/現時点では不明
個人の電話番号や健康に関する情報を扱う場合は、 利用目的、保管場所、閲覧できる人を明確にします。
3週目:避難、待機、帰宅の基準を決める
大きな地震が発生したとき、 従業員をすぐ帰宅させることが 必ず安全とは限りません。
交通機関が止まり、 道路や駅が混雑している状態では、 一斉に移動することで危険が増す場合があります。
一方で、建物に損傷がある、 周辺で火災が発生している、 津波や土砂災害の危険がある場合は、 建物内にとどまることが危険です。
そのため、 一律に帰宅または待機と決めるのではなく、 判断項目と責任者を決めます。
| 確認項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 建物 | 傾き、ひび、天井落下、設備損傷などがないか |
| 周辺 | 火災、落下物、倒壊、津波などの危険がないか |
| 交通 | 鉄道、バス、道路が利用できるか |
| 時間・天候 | 夜間や悪天候で移動が危険ではないか |
| 従業員事情 | 家族支援、健康状態、自宅までの距離など |
| 公的情報 | 自治体、消防、警察、建物管理者の指示 |
建物の安全を目視だけで断定せず、 自治体、建物管理者、専門家などの情報も確認してください。
4週目:最低限の備蓄と緊急用品をそろえる
従業員が会社内で待機する可能性がある場合は、 水、食料、携帯トイレ、毛布、 明かり、情報収集手段などを準備します。
すべてを一度に購入する必要はありません。 まず人数を確認し、 命と衛生に関わる物から優先します。
優先して用意する物
- 飲料水
- 加熱せずに食べられる食料
- 携帯トイレ
- トイレットペーパー
- 救急用品
- 懐中電灯やランタン
- ラジオ
- モバイルバッテリー
- 予備電池
- 毛布や保温シート
- マスク、消毒用品、使い捨て手袋
備蓄品の購入後は、 数量、保管場所、期限、管理担当者を記録します。
倉庫の奥など一か所にまとめると、 扉が開かない場合や、 その場所へ近づけない場合に使えなくなります。
可能であれば、 各階や複数の場所へ分けて保管します。
30日目の確認
- 会社内の危険箇所を記録した
- すぐ直せる危険を一つ以上改善した
- 安否確認の担当者と代理を決めた
- 安否確認の第一、第二手段を決めた
- 避難場所と避難経路を確認した
- 待機と帰宅の判断者を決めた
- 最低限の水、食料、携帯トイレを確認した
- 緊急連絡先を紙でも保管した
31日目から60日目:重要な仕事を守る
次の30日では、 従業員の安全を確保した後に、 会社を存続させるために必要な仕事を整理します。
平常時の仕事をすべて続けようとせず、 特に重要な仕事を一つから三つに絞ります。
5週目:重要な仕事を一つから三つに絞る
災害後は、人、設備、通信、材料、 移動手段などが限られる可能性があります。
その中で、 すべての仕事を通常どおり続けようとすると、 本当に重要な業務へ人や物を集中できません。
重要業務を選ぶ質問
- 止まると人の命や安全へ影響する仕事は何か
- 止まると顧客へ大きな損害が出る仕事は何か
- 止まると売上や入金へ大きく影響する仕事は何か
- 法律や契約上、期限を守る必要がある仕事は何か
- 再開までに長い準備が必要な仕事は何か
例えば、製造業では、 重要製品の製造や出荷が該当するかもしれません。
小売業では、 店舗の安全確認、商品管理、 顧客への営業案内が優先される場合があります。
士業や個人事業主では、 期限のある手続き、 顧客からの緊急連絡、 重要データの復旧が優先されることがあります。
重要業務の記入欄
| 優先順位 | 重要な仕事 | 止まった場合の影響 | 目標再開時期 |
|---|---|---|---|
| 1 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 2 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 3 | 記入 | 記入 | 記入 |
6週目:重要業務に必要なものを整理する
重要な仕事を決めたら、 その仕事を続けるために必要なものを整理します。
「担当者がいればできる」と思っていても、 パソコン、専用設備、顧客情報、 仕入先、通信などがなければ、 業務を再開できないことがあります。
| 項目 | 確認する内容 | 使えない場合の代わり |
|---|---|---|
| 人 | 担当者、資格者、判断者 | 代理担当者、外部支援 |
| 場所 | 事務所、店舗、工場 | 自宅、別拠点、貸し会議室 |
| 設備 | 機械、車両、パソコン | 代替機、レンタル、外注 |
| 通信 | 電話、インターネット | 携帯回線、別サービス |
| 情報 | 顧客情報、手順書、設計図 | クラウド、紙の控え |
| 取引先 | 仕入先、配送会社、委託先 | 代替候補、別ルート |
代替方法を今すぐ契約する必要はありません。 まず候補と連絡先を調べ、 実際に使える条件を確認しておきます。
7週目:重要なデータと手順を守る
建物や設備が無事でも、 顧客情報や会計データを失うと、 仕事を再開できないことがあります。
まず、失うと困る情報を整理します。
- 顧客情報
- 契約書
- 請求、入金、会計データ
- 設計図や製造データ
- 予約情報
- 従業員情報
- 業務手順書
- 取引先の連絡先
別の場所へバックアップする
パソコンと外付け記録媒体を 同じ事務所内に置いている場合、 同時に失う可能性があります。
クラウドサービス、 別の事業所、 遠隔地の保管先など、 同じ災害で同時に失いにくい場所へ保存します。
復元できることまで確認する
バックアップがあっても、 ログイン方法が分からない、 担当者しか復元できない、 必要なデータが保存されていない場合があります。
別のパソコンでデータを開き、 必要な情報を取り出せるか確認します。
紙の手順も用意する
停電や通信障害があると、 クラウド上の手順書を確認できない場合があります。
緊急連絡先、初動手順、 重要業務の手順などは、 必要な範囲で紙でも保管します。
データの確認
- 重要データを一覧にした
- バックアップの頻度を決めた
- 別の場所へバックアップしている
- 復元方法を確認した
- 担当者以外も復元できる
- ログイン情報を安全に管理している
- 最低限の手順を紙でも用意した
8週目:取引先、保険、資金を確認する
自社に大きな被害がなくても、 仕入先、配送会社、委託先、 外部システムが止まると、 仕事を続けられないことがあります。
重要業務に関係する取引先を整理し、 緊急連絡先と代替候補を確認します。
取引先について確認すること
- 重要な仕入先を把握している
- 配送や物流の代替方法を確認している
- 一社だけに依存している業務を把握している
- 緊急時の連絡先を確認している
- 顧客への連絡担当者を決めている
休業中の資金を確認する
売上が止まっても、 給与、家賃、借入金の返済、 システム利用料などの支払いが 続く場合があります。
一か月、二か月、三か月休業した場合に、 どれくらいの資金が必要かを確認します。
| 支出項目 | 月額 | 1か月分 | 3か月分 |
|---|---|---|---|
| 給与・人件費 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 家賃・設備費 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 借入金返済 | 記入 | 記入 | 記入 |
| 通信・システム費 | 記入 | 記入 | 記入 |
| その他固定費 | 記入 | 記入 | 記入 |
保険の対象を確認する
事業用の保険に加入していても、 地震による建物、設備、在庫、 休業損失などが、 すべて補償されるとは限りません。
保険会社や代理店へ、 補償対象、免責金額、 保険金請求に必要な書類、 災害時の連絡先を確認します。
保険や税制、金融支援には 対象条件や期限があります。 実際に利用する際は、 制度を担当する公的機関、 金融機関、税理士、保険会社などへ 最新情報を確認してください。
60日目の確認
- 重要な仕事を一つから三つに絞った
- 重要業務に必要な人と代理を決めた
- 必要な場所、設備、通信を整理した
- 代替方法の候補を調べた
- 重要データを別の場所へ保存した
- バックアップを復元できるか確認した
- 重要な取引先と代替候補を整理した
- 休業時の固定費を確認した
- 保険の補償内容と連絡先を確認した
61日目から90日目:実際に動けるか確認する
計画書や連絡網を作っても、 一度も試していなければ、 災害時に使えない可能性があります。
最後の30日では、 安否確認、避難、データ復旧、 経営判断を実際に試します。
9週目:安否確認を試す
まず、事前に日時を伝えたうえで、 安否確認メッセージを全従業員へ送ります。
最初の訓練では、 正しくできるかを評価するよりも、 連絡先や手順の不足を見つけることを目的にします。
訓練で確認すること
- 全員へメッセージが届いたか
- 従業員が返信方法を理解していたか
- 担当者が返信を集計できたか
- 返信がない人へ連絡できたか
- 経営者へ状況を報告できたか
- 担当者不在でも代理が対応できたか
連絡先が古い、 メッセージが長すぎる、 返信の形式が分かりにくいなどの問題があれば、 その場で修正します。
10週目:避難場所と備蓄品を確認する
次に、従業員と一緒に避難場所まで歩きます。
地図で確認するだけでは分からない、 狭い道路、古い塀、急な階段、 夜間に暗くなる場所などが見つかることがあります。
あわせて、 備蓄品の保管場所を全員で確認します。
備蓄品の確認内容
- 保管場所を全員が知っている
- 鍵や扉をすぐ開けられる
- 水と食料の期限が切れていない
- 携帯トイレの使い方が分かる
- 懐中電灯やラジオが動く
- モバイルバッテリーが充電されている
- 必要な物を取り出せる状態になっている
携帯トイレや発電機などは、 製品の説明書を読み、 平常時に安全な使い方を確認します。
発電機や燃焼器具は、 一酸化炭素中毒や火災の危険があるため、 屋内や換気の悪い場所で使用してはいけません。 必ず製品の注意事項を守ってください。
11週目:データ復旧と代替業務を試す
バックアップしたデータを、 通常とは別のパソコンで開きます。
担当者が不在という想定で、 代理担当者が必要なデータを取り出せるか確認します。
確認する内容
- ログイン情報を確認できる
- 多要素認証の手続きを行える
- 必要なデータが保存されている
- 別のパソコンでファイルを開ける
- 顧客や取引先の連絡先を確認できる
- 手順書を見ながら代理担当者が作業できる
あわせて、 事務所が使えない場合に、 自宅や別の場所から 最低限の仕事ができるかを確認します。
実際の顧客情報や機密情報を使う場合は、 情報漏えいが起きないよう、 通信環境、端末、閲覧権限を適切に管理してください。
12週目:経営判断の机上訓練を行う
最後に、実際の災害を想定して、 経営者と担当者が話し合う 机上訓練を行います。
机上訓練とは、 実際に建物から避難するのではなく、 想定した状況に対して、 誰が何を判断するかを話し合う訓練です。
想定する状況の例
平日の午後2時に大きな地震が発生しました。 従業員10人のうち、7人が会社、 2人が外出中、1人が在宅勤務です。
会社では棚が倒れ、 従業員1人が軽いけがをしています。 停電し、電話はつながりにくい状態です。 鉄道は運転を見合わせています。
重要な取引先から、 本日中に納品できるか問い合わせが来ています。
話し合う質問
-
最初の5分で何をするか
身の安全、けが人、火災、避難の確認を行います。 -
誰が安否を確認するか
社内、外出中、在宅勤務の従業員を確認します。 -
会社に残るか避難するか
建物と周辺の情報を基に判断します。 -
従業員を帰宅させるか
交通や周辺の安全を確認します。 -
取引先へ何を伝えるか
確認できた事実と次回連絡時刻を伝えます。 -
営業を休止するか
安全とサービス提供の可否を基に判断します。 -
翌日までに何を確認するか
建物、設備、人員、データ、取引先を確認します。
正解を当てることが目的ではありません。 判断者が不明、 必要な連絡先がない、 情報が集まらないといった不足を見つけます。
13週目:結果を一枚の対応表にまとめる
90日間で確認した内容を、 災害時にすぐ見られる一枚の対応表へまとめます。
詳細な資料が別にあっても、 最初の行動が分かる短い資料を 入口として用意すると使いやすくなります。
| 全体責任者 | 氏名、連絡先、代理者を記入 |
| 安全確認 | 負傷者、火災、建物、設備を確認する担当者 |
| 安否確認 | 連絡手段、集計担当者、報告先 |
| 避難場所 | 第一候補、第二候補、避難経路 |
| 待機・帰宅 | 判断者と確認項目 |
| 重要業務 | 優先する仕事を一つから三つ記入 |
| 顧客連絡 | 担当者、連絡手段、文章ひな形 |
| 休業判断 | 責任者、代理者、判断条件 |
| 再開判断 | 責任者、代理者、確認項目 |
| 緊急連絡先 | 自治体、消防、警察、建物管理者、保険、金融機関 |
対応表は、 経営者や総務担当者だけが持つのではなく、 必要な担当者へ共有します。
停電や通信障害に備えて、 紙でも保管してください。
個人情報や機密情報を含む場合は、 閲覧できる人と保管方法を決めます。
90日目の確認
- 安否確認訓練を行った
- 避難場所まで実際に歩いた
- 備蓄品の場所と使い方を確認した
- バックアップデータを復元した
- 代理担当者が重要業務を確認した
- 経営判断の机上訓練を行った
- 訓練で見つかった問題を修正した
- 初動対応を一枚にまとめた
- 次回の見直し日を決めた
役割は一人に集中させない
小さな会社では、 総務担当者や社長一人に、 防災の役割が集中しやすくなります。
しかし、災害時にその人が不在、 けが、連絡不能となる可能性があります。
一人が複数の役割を持っても構いませんが、 主要な判断や連絡には、 必ず代理を決めてください。
| 役割 | 主な仕事 | 担当者 | 代理者 |
|---|---|---|---|
| 全体責任者 | 避難、休業、再開の判断 | 記入 | 記入 |
| 安全確認 | けが人、火災、建物の確認 | 記入 | 記入 |
| 安否確認 | 従業員への連絡と集計 | 記入 | 記入 |
| 情報収集 | 自治体、交通、ライフライン情報 | 記入 | 記入 |
| 顧客対応 | 顧客、取引先への連絡 | 記入 | 記入 |
| 業務再開 | 設備、データ、重要業務の確認 | 記入 | 記入 |
費用をかける前に優先順位を決める
防災対策には、 費用がほとんどかからないものと、 設備投資が必要なものがあります。
不安を感じた直後に多くの商品を購入すると、 本当に必要な対策へ予算を使えないことがあります。
まず、命への影響、 発生する可能性、 仕事への影響を基に優先順位を決めます。
| 優先度 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 最優先 | 命や避難へ直接影響する | 家具固定、避難経路、安否確認 |
| 高い | 事業の停止へ大きく影響する | データ保全、重要設備、代理担当者 |
| 中程度 | 復旧の早さや負担へ影響する | 代替拠点、予備機器、取引先候補 |
| 見直し | 効果が不明、優先度が低い | 目的が明確でない防災用品 |
無料でできる対策には、 連絡先の更新、 棚の上の重い物の移動、 役割分担、 顧客向け連絡文の作成などがあります。
費用が必要な対策については、 事故や休業による損失と比較し、 段階的に実施します。
事業継続力強化計画の活用も検討する
中小企業庁には、 中小企業が取り組みやすい防災・減災計画として、 「事業継続力強化計画」の認定制度があります。
計画では、 自社が受ける可能性のある災害リスク、 初動対応、事業継続のための対策、 実施体制などを整理します。
認定を受けた中小企業には、 税制、金融、補助金審査上の加点などの 支援措置が用意されている場合があります。
ただし、 すべての会社がすべての支援を受けられるわけではありません。 会社の規模、設備、申請時期、計画内容などによって 条件が異なります。
また、制度の内容や期限は変更される場合があります。 申請や設備投資を行う前に、 中小企業庁や経済産業局などの公式情報で 最新の条件を確認してください。
認定を受けること自体が目的ではありません。 自社で実行できる防災・事業継続対策を整えることが中心です。
90日後も見直しを続ける
防災計画は、 一度作れば終わりではありません。
従業員の入退社、 事務所の移転、 新しい設備やシステムの導入、 取引先の変更によって、 必要な対策は変わります。
災害や停電、 システム障害などを経験した場合は、 その内容も計画へ反映します。
見直す時期の例
- 年に一度の防災訓練の日
- 年度や事業計画の更新時
- 従業員が大きく増減したとき
- 事務所や店舗を移転したとき
- 新しい設備やシステムを導入したとき
- 重要な取引先が変わったとき
- 実際に災害や障害が発生した後
毎回すべてを作り直す必要はありません。 連絡先、担当者、備蓄期限、 重要業務、取引先を中心に確認します。
90日防災計画の一覧
- 1週目 会社と周辺の危険箇所を確認します。
- 2週目 安否確認方法、連絡手段、担当者を決めます。
- 3週目 避難、待機、帰宅の判断基準を決めます。
- 4週目 水、食料、携帯トイレなどを確認します。
- 5週目 重要な仕事を一つから三つに絞ります。
- 6週目 重要業務に必要な人、設備、情報を整理します。
- 7週目 データのバックアップと復元方法を確認します。
- 8週目 取引先、保険、休業中の資金を確認します。
- 9週目 安否確認訓練を行います。
- 10週目 避難経路と備蓄品を確認します。
- 11週目 データ復旧と代替業務を試します。
- 12週目 経営判断の机上訓練を行います。
- 13週目 結果を一枚の対応表にまとめます。
今日の20分防災アクション
90日計画の初日として、 経営者と担当者で次の五つを決めてください。
-
計画の責任者を一人決める
代理担当者も一人決めます。 -
毎週の確認時間を決める
週30分など、予定へ入れます。 -
最も危険な場所を一つ挙げる
棚、通路、設備などを確認します。 -
最優先の仕事を一つ挙げる
災害後に止めたくない仕事を選びます。 -
90日後の確認日を予定へ入れる
訓練と見直しを行う日を決めます。
すべてを今日決められなくても構いません。 担当者、時間、最初の課題が決まれば、 90日計画を始められます。
まとめ+要約
- BCPは、難しい計画書ではなく、 災害時に人と仕事を守るための準備です。
- 最初の30日で、 危険箇所、安否確認、避難、備蓄を整えます。
- 31日目から60日目で、 重要業務、データ、取引先、資金を整理します。
- 61日目から90日目で、 安否確認、避難、復旧、経営判断を試します。
- 計画は一度で完成とせず、 訓練や事業の変化に合わせて見直します。
次の一手: 防災責任者と代理担当者を決め、 毎週30分の確認時間を予定へ入れましょう。
よくある質問
Q1.小さな会社でもBCPを作る必要がありますか?
必要です。 小さな会社では、 一人の担当者、一台の機械、 一つの取引先が止まるだけで、 事業全体へ影響が出る場合があります。
ただし、 最初から分厚い計画書を作る必要はありません。
従業員の安全、 安否確認、 最優先の仕事、 必要な人や設備、 休業と再開の判断者を 一枚にまとめるところから始めてください。
Q2.90日で会社の防災対策を完成できますか?
すべての対策を完成させることが 90日計画の目的ではありません。
危険箇所、連絡方法、備蓄、 重要業務、データ、資金、 役割、訓練の基本を整えることが目的です。
90日後も、 費用が必要な対策や設備の改善を 優先順位に沿って続けます。
Q3.事業継続力強化計画の認定は必ず受けるべきですか?
認定申請は必須ではありません。
まずは、 自社で必要な安全対策と事業継続の準備を 実際に進めることが大切です。
そのうえで、 制度の目的、申請条件、 支援措置が自社に合うかを確認し、 必要に応じて活用を検討してください。
制度や支援内容は変更される場合があるため、 申請時点の中小企業庁などの 公式情報を確認する必要があります。
自社に合った90日防災計画を整理しませんか
「BCPを何から始めればよいか分からない」 「担当者は決めたものの、計画が進んでいない」 「自社に必要な対策を90日単位で整理したい」 という方は、お気軽にご相談ください。
会社の防災・事業継続について相談する参考情報
-
中小企業庁「事業継続力強化計画」
https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.html -
中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」
https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/index.html -
内閣府「企業防災のページ」
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/index.html -
内閣府「事業継続ガイドライン」
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/index.html -
中小企業基盤整備機構「中小企業強靱化支援」
https://kyoujinnka.smrj.go.jp/
本記事は、一般的な企業防災と事業継続に関する情報を 提供するものです。 必要な対策は、地域、建物、業種、従業員数、 法令、契約、自治体や建物管理者のルールなどによって異なります。 制度、税制、金融支援、補助金などを利用する場合は、 申請時点の公式情報と適用条件を確認してください。 実際の災害時には、気象庁、自治体、消防、警察、 建物管理者などが発表する最新情報を確認し、 人命と安全を最優先に行動してください。