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職場の熱中症事故を防ぐ経営判断。今日決めるべき5つのこと

職場の熱中症事故を防ぐ経営判断。今日決めるべき5つのこと

職場は熱中症対策していますか?|Day5

職場の熱中症事故を防ぐ経営判断。
今日決めるべき5つのこと

Executive Summary

  • 熱中症対策は経営課題です
  • 現場任せでは事故を防げません
  • 作業停止の権限を明確にします
  • 設備と働き方を一緒に見直します
  • 今日決めたことを毎日実行します

熱中症対策は、 総務担当者や現場責任者だけの仕事ではありません。

暑さが危険な状態でも仕事を続けるのか、 空調設備の修理や交換に費用をかけるのか、 納期や営業時間を変更するのか。

こうした判断は、 現場の担当者だけでは決められないことがあります。

特に中小企業では、 経営者の判断が安全対策の実行速度を大きく左右します。

最終日の本記事では、 これまでの内容を振り返りながら、 職場の熱中症事故を防ぐために、 経営者が今日決めるべきことを五つに整理します。

1.熱中症対策を経営課題として考える

職場の熱中症事故は、 体調を崩した本人だけの問題ではありません。

事故が起きれば、 救急対応、労災手続き、人員不足、 納期の遅れ、取引先への説明など、 会社全体への対応が必要になります。

一緒に働く人が不安を感じ、 職場への信頼を失うこともあります。

採用活動や従業員の定着、 取引先からの評価に影響する可能性もあります。

一方で、事故を恐れるあまり、 現場では使えない複雑な制度を作っても意味がありません。

分厚いマニュアルを作ることよりも、 危険なときに確実に作業を止めることが重要です。

異変があったときに、 迷わず責任者へ連絡できることも必要です。

身体を冷やす場所を用意し、 必要な場合には救急要請を行える体制も欠かせません。

熱中症対策は、 書類を作って終わる仕事ではありません。

設備、人員、働き方、予算、 作業停止の判断を含む経営課題です。

現場に「気をつけてください」と伝えるだけでは、 会社の対策として十分とはいえません。

経営者が安全を優先する姿勢を示し、 実際に休憩、作業変更、設備対応へつなげる必要があります。

2.今日決めるべき五つのこと

1.誰が作業を止められるか

暑さや体調不良による危険を感じたときに、 誰が作業を止められるのかを明確にします。

現場責任者だけでなく、 作業をしている本人や周囲の人も、 危険を感じたら中断を申し出られる職場にすることが大切です。

社長や管理者の許可が出るまで作業を続ける仕組みでは、 対応が遅れるおそれがあります。

緊急時には、 現場責任者が先に作業を止め、 その後に経営者へ報告できる体制が必要です。

作業を止めた人が責められたり、 評価を下げられたりする職場では、 危険があっても報告されなくなります。

経営者は、 安全のために作業を止めた判断を尊重することを、 はっきり伝えてください。

2.どの状態で作業を止めるか

誰が止められるかを決めたら、 どのような状態で止めるかも決めます。

室温やWBGTなどの数値だけでなく、 作業内容や働く人の体調も確認します。

例えば、次のような場合は、 作業の中断や見直しが必要です。

  • 室温やWBGTが高くなっている
  • 冷房や換気設備が故障している
  • 休憩しても職場の暑さから離れられない
  • 水分補給が難しい作業が続いている
  • 一人で長時間作業している
  • 作業者に頭痛や吐き気がある
  • 受け答えや歩き方がおかしい
  • 強いだるさやふらつきがある
  • 自力で水を飲めない
  • 意識がはっきりしない

特に、意識がおかしい、 自力で水分を取れない、 呼びかけへの反応が悪い場合は、 緊急性の高い状態です。

本人が「まだ働けます」と言っていても、 周囲から見て異常がある場合は、 作業を止めて対応してください。

3.冷房が止まったらどうするか

エアコンや冷房設備は、 真夏でも突然故障することがあります。

故障してから対応を考えると、 判断が遅れやすくなります。

次のような代替策を、 事前に決めておきます。

  • 冷房の効く別室へ移動する
  • 別の事業所や拠点へ移動する
  • 在宅勤務へ切り替える
  • 営業時間を短縮する
  • 作業時間を早朝や夕方へ変更する
  • 負担の大きい作業を延期する
  • 休憩回数を増やす
  • スポットクーラーなどを使用する
  • 業務を一時的に停止する
  • 安全を確保できない場合は休業する

修理業者へ連絡しただけでは、 従業員の安全が確保されたことにはなりません。

修理が終わるまでの間に、 どのような環境で働くのかを決める必要があります。

代替策を取っても安全を確保できない場合は、 業務停止や休業を検討します。

4.誰が毎日確認するか

熱中症対策は、 一度決めれば自動的に実行されるものではありません。

誰が毎日の暑さや体調を確認するのかを決めます。

確認する内容には、 次のようなものがあります。

  • 室温やWBGT
  • 空調設備の状態
  • 休憩場所の温度
  • 飲み物の準備状況
  • 作業者の体調
  • 休憩が予定どおり取れているか
  • 一人作業者から連絡があるか
  • 体調不良やヒヤリとした事例がないか

担当者が休みの日に、 誰も確認しない状態を避けるため、 代理の担当者も決めます。

責任者へ任せきりにせず、 経営者も定期的に現場を確認してください。

実際に休憩が取れているか、 冷房が十分に効いているか、 報告しやすい雰囲気があるかを確かめます。

5.対策が実行されたかどうか

最後に、 決めた対策が実際に行われているかを確認します。

手順書を掲示していても、 誰も読んでいなければ緊急時に使えません。

WBGT計を購入していても、 測定していなければ意味がありません。

休憩時間を決めていても、 忙しさを理由に取れていなければ、 対策として機能していません。

次のような内容を簡単に記録します。

  • 温度やWBGTの測定結果
  • 休憩や水分補給の実施状況
  • 空調設備の異常
  • 作業時間や作業場所を変更した内容
  • 体調不良者への対応
  • 救急や医療機関へ連絡した内容
  • 従業員へ周知した内容
  • ヒヤリとした事例

事故が起きなかったから問題なし、 と考えないことが重要です。

「危なかった」 「休憩が遅れた」 「冷房が効かなかった」 といった小さな出来事も、 次の事故を防ぐための情報になります。

3.よくある反対意見への回答

「対策に使える予算がありません」

高価な設備を、 一度にすべて導入できない会社もあると思います。

その場合でも、 作業時間の変更、休憩の追加、 報告体制の整備、冷房のある場所への移動など、 すぐに始められる対策があります。

まずは危険の高い場所や作業から、 優先順位をつけて改善します。

一方で、設備不足が明らかで、 現在の環境では安全を確保できない場合があります。

その場合は、 空調の修理、増設、作業場所の変更などを、 必要な経営費用として判断しなければなりません。

費用がかかることを理由に、 危険な環境をそのままにすることは避ける必要があります。

「体調管理は本人の責任ではありませんか」

働く人自身が、 睡眠や食事、水分補給などに気をつけることは大切です。

しかし、職場の温度、湿度、 作業時間、休憩、設備、仕事量は、 本人だけでは変えられません。

これらは会社が管理する必要があります。

本人の自己管理だけに任せると、 具合が悪くても言い出せない人や、 自分の異変に気づけない人への対応が遅れます。

会社による環境整備と、 働く人による体調管理の両方が必要です。

「忙しくて作業を止められません」

納期や顧客対応があり、 簡単には止められない仕事もあるでしょう。

しかし、止められない仕事ほど、 事前の人員配置や工程調整が必要です。

暑くなる時間帯を避ける、 作業を複数日に分ける、 応援の人員を確保するなど、 事故が起きる前に計画を変えます。

熱中症事故が起きれば、 救急対応や人員不足によって、 予定よりも長く業務が止まる可能性があります。

危険な時間だけ計画的に止めるほうが、 結果として事業への影響を抑えられる場合があります。

「去年は問題なかったので、今年も大丈夫です」

去年事故がなかったことは、 今年も安全であることを保証しません。

気温や湿度、 従業員の体調、 作業内容、 空調設備の状態は毎年変わります。

特に、古い空調設備は、 動いていても冷房能力が落ちていることがあります。

過去の経験だけに頼らず、 今年の職場環境を実際に測定して判断してください。

「担当者へ任せているので問題ありません」

担当者を決めることは重要です。

しかし、担当者だけでは、 設備への支出、営業時間の変更、 人員追加、業務停止などを決められない場合があります。

経営判断が必要な場面で、 担当者の報告が止まらない仕組みを作る必要があります。

経営者は、 担当者から定期的に報告を受け、 必要な判断を速やかに行ってください。

4.経営者向け意思決定ブリーフ

テーマ

職場における熱中症事故の予防と重症化防止

推奨する行動

すべての事業所と作業場所の暑さを確認し、 報告体制、緊急対応、予防策、 空調設備の故障時に取る代替策を整備します。

主な理由

  1. 2025年6月から、 一定の暑熱環境で行う作業について、 報告体制と重症化防止の対応手順を整え、 関係する作業者へ周知することが求められています。
  2. 職場の熱中症による死傷災害は、 建設業や製造業だけでなく、 運送、警備、商業、清掃など、 幅広い業種で発生しています。
  3. 使用者には、 労働者が生命や身体の安全を確保しながら働けるよう、 必要な配慮を行うことが求められています。

主なリスク

  • 体調不良の発見が遅れる
  • 救急要請や医療機関の受診が遅れる
  • 空調設備の故障や能力不足を放置する
  • 一人作業で異変に気づけない
  • 休憩を取りづらい職場風土がある
  • 手順書と実際の運用が一致していない
  • 経営者への報告が遅れる
  • 危険でも納期を優先してしまう

必要な対策

  • 報告先を明確にする
  • 作業を止める権限を明確にする
  • 室温やWBGTを確認する
  • 休憩と水分補給を確実に行う
  • 身体を冷やせる場所を確保する
  • 一人作業者の定時連絡を行う
  • 空調設備の点検を行う
  • 冷房故障時の代替策を決める
  • 対応手順を教育する
  • 実施内容を記録し、定期的に見直す

確認する指標

  • 温度やWBGTを測定した割合
  • 休憩が予定どおり行われた割合
  • 水分補給を確認した回数
  • 対応手順の教育を受けた人の割合
  • 体調不良者やヒヤリ事例の件数
  • 空調設備の異常件数
  • 設備異常を把握してから対応するまでの時間
  • 一人作業者の連絡確認率

担当者と役割

経営者は、 作業停止、休業、設備費用、人員配置などの 最終判断を行います。

熱中症対策責任者は、 暑さの確認、手順の周知、 休憩や水分補給の確認、 記録の管理を担当します。

現場責任者は、 作業者への声かけ、異変の発見、 作業中断、緊急連絡を担当します。

働く人は、 自分と周囲の異変を早めに報告し、 決められた休憩と水分補給を行います。

次の一手

経営者、現場責任者、総務担当者で 30分の確認会議を開きます。

未対応の項目について、 担当者と実施期限を決めてください。

まとめ+要約

  • 熱中症対策は、 経営者が関与すべき経営課題です
  • 現場が危険を感じたときに、 作業を止められる体制を作ります
  • エアコンや冷房設備が故障した場合の 代替策を事前に決めます
  • 暑さの確認、休憩、水分補給、 体調確認を毎日の仕事に組み込みます
  • 手順を作成した後も、 現場で実行されているかを確認します

次の一手:今日中に 「誰が、どの状態で、仕事を止めるか」を決定してください。

FAQ

Q1.対応手順を作成すれば、 熱中症対策の義務を果たしたことになりますか?

報告体制や対応手順を整え、 関係する作業者へ周知することは重要です。

しかし、手順書を作成しただけで、 熱中症事故を防げるわけではありません。

実際の職場では、 暑さの測定、休憩、水分補給、 作業時間の変更、空調設備の確認なども必要です。

手順が現場で理解され、 異変が起きたときに実行できるかまで確認してください。

Q2.職場で熱中症が起きたら、 必ず安全配慮義務違反になりますか?

熱中症が起きたという事実だけで、 一律に安全配慮義務違反と判断されるわけではありません。

職場の暑さや危険を予測できたか、 会社がどのような対策を行っていたか、 体調不良が起きた後にどのような対応をしたかなど、 個別の事情によって判断されます。

危険を把握していたのに放置した場合や、 必要な対応を取らずに働かせ続けた場合には、 会社の対応が問われる可能性があります。

個別の事故や法的責任については、 弁護士や社会保険労務士などの専門家へ相談してください。

Q3.最初に専門家へ相談するときは、 何を整理しておけばよいですか?

まず、 どのような場所で、 どのような作業を、 何時間行っているかを整理します。

次に、 室温やWBGTの測定状況、 空調設備の状態、 休憩や水分補給の方法を確認します。

さらに、 体調不良者の報告先、 作業を止める基準、 緊急時の連絡方法が決まっているかを確認します。

現在の手順書や点検記録、 過去に起きた体調不良やヒヤリ事例があれば、 それらも用意すると相談しやすくなります。

参考資料

  1. 厚生労働省 「労働安全衛生規則の一部を改正する省令」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc9174&dataType=1&pageNo=1
  2. 厚生労働省 「令和6年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001426738.pdf
  3. 厚生労働省 「労働契約法」
    https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=73aa9536
  4. 厚生労働省 「職場における熱中症予防基本対策要綱」
    https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000633853.pdf

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