
確定申告で使える控除は?生命保険・iDeCo・医療費など、最初に確認したい基本
「確定申告に備えて、控除できるものをもう一度教えてほしい」
そんなご相談をいただくことがあります。
生命保険の控除証明書は届いたけれど、ほかにも確認するものがあるのか。iDeCoは申告に関係するのか。会社員でも医療費を申告できるのか。
名前を聞いたことがあっても、自分に当てはまるかまでは分かりにくいものです。
確定申告の準備は、「今年支払ったもの」と「自分や家族の状況」を分けて確認すると進めやすくなります。
この5日間では、控除の基本から、生命保険やiDeCo、医療費、家族に関する控除、申告前の準備までを順番に整理します。
Day1は、まず全体像をつかむところから始めましょう。
この記事で押さえたい5つのポイント
- 控除には、所得から差し引く「所得控除」と、税額から差し引く「税額控除」があります。
- 生命保険料だけでなく、iDeCo、社会保険料、医療費、寄附金なども確認対象です。
- 支払いがなくても、本人や家族の状況によって使える控除があります。
- 年末調整で反映された控除と、確定申告で追加する控除を整理しましょう。
- 控除を増やすために支出する前に、すでに使える控除を確認しましょう。
今回考えたい問いは、「自分がすでに支払ったものや家族の状況に、申告で確認すべき控除がないか?」です。
1.そもそも「控除」とは何でしょうか?
税金の計算では、収入だけでなく、仕事に必要な費用や、本人・家族の状況などを考慮します。
その際、一定の条件に当てはまる金額を差し引く仕組みが「控除」です。
個人の所得税では、主に次の二つを分けて考えると分かりやすくなります。
所得控除:税金を計算する前の所得から差し引く
所得控除は、税率を掛ける前の所得から、一定の金額を差し引く仕組みです。
生命保険料控除、社会保険料控除、医療費控除、iDeCoの掛金に関係する控除などが該当します。
所得控除の金額が、そのまま戻ってくるわけではありません。
実際に税金がどのくらい軽くなるかは、本人の所得や適用される税率、ほかの控除などによって異なります。
税額控除:計算した税額から差し引く
税額控除は、計算した税額から一定の金額を差し引く仕組みです。
代表的なものに、住宅ローン控除があります。正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。
所得控除と税額控除では、差し引く段階が違います。まずは、この違いを押さえておきましょう。
2.「支払額」「控除額」「戻る税金」は別の金額です
控除を考えるときに混同しやすいのが、次の三つです。
- 支払額:保険料や掛金などとして、実際に支払った金額。
- 控除額:制度の条件や計算方法に基づいて、差し引ける金額。
- 税負担の軽減額:控除を反映した結果、軽くなる税金の金額。
例えば、生命保険料は、支払った保険料全額がそのまま所得控除になる仕組みではありません。契約の区分や所定の計算方法、上限があります。
一方、iDeCoなどの対象となる掛金は、その年に支払った掛金の全額が所得控除の対象になります。ただし、その全額が還付されるという意味ではありません。
また、還付は、すでに納めた税金と正しく計算した税額との精算で生じます。控除を申告すれば、誰でも必ずお金が戻るわけではない点も覚えておきましょう。
3.まず確認したい、支払いに関係する主な控除
身近な支払いから確認すると、控除の対象を見つけやすくなります。
次の表は、主な確認先を整理したものです。記載した支払いがすべて無条件に対象になるわけではなく、それぞれ要件があります。
| 控除の種類 | 確認したい支払い | 準備・確認する資料 |
|---|---|---|
| 生命保険料控除 | 対象となる生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料 | 生命保険料控除証明書、契約区分、実際の負担者 |
| 地震保険料控除 | 対象となる地震保険料など | 地震保険料控除証明書 |
| 社会保険料控除 | 国民年金、国民健康保険、介護保険などの保険料 | 控除証明書、納付額の通知、給与の源泉徴収票など |
| 小規模企業共済等掛金控除 | iDeCo、小規模企業共済、対象となる企業型DCの本人掛金など | 掛金払込証明書、給与での控除状況など |
| 医療費控除 | 本人や生計を一にする家族のために支払った対象医療費 | 医療費通知、領収書、補填された金額、明細書作成用の記録 |
| 寄附金控除 | ふるさと納税など、対象となる寄附金 | 寄附金受領証明書、寄附金控除に関する証明書など |
すべての支払いについて、同じ形式の控除証明書が届くわけではありません。
「証明書が届いていないから対象ではない」と決めつけず、支払いの種類ごとに確認しましょう。
4.生命保険料控除は、証明書の区分から確認する
生命保険料控除は、比較的なじみのある控除です。
ただし、生命保険という名前がつく商品なら、すべて同じ扱いになるわけではありません。
主に、次の区分を確認します。
- 一般の生命保険料
- 介護医療保険料
- 個人年金保険料
さらに、契約時期などによる新契約・旧契約の違いがあります。自分で商品名から判断するより、保険会社が発行した控除証明書の記載を確認すると整理しやすくなります。
契約者名だけでなく、誰が保険料を負担したか、保険金の受取人などの条件も関係します。
2026年分の所得税では、23歳未満の扶養親族がいる場合の特例もあるため、前年の計算をそのまま使わず、申告する年の案内を確認してください。
控除のためだけに保険を増やす前に、必要な保障と保険料の負担を確認することも大切です。
5.iDeCoも確定申告や年末調整に関係します
「iDeCoは老後の積立だから、確定申告とは別では?」と思われる方もいらっしゃいます。
iDeCoの本人掛金は、「小規模企業共済等掛金控除」の対象です。生命保険料控除とは別の項目になります。
対象となる、その年に支払った掛金の全額を所得から差し引くことができます。
ただし、本人に課税される所得がない場合は、掛金の所得控除による税負担の軽減はありません。本人の控除を配偶者に移すこともできません。
確認したいのは、次の三つです。
- その年に実際に支払った掛金はいくらか。
- 年末調整で、すでに反映されているか。
- 自分の納付方法では、どの資料を使って手続きするか。
小規模企業共済に加入している経営者や個人事業主も、同じ控除項目の確認が必要です。
個人事業主の場合、iDeCoや小規模企業共済の対象掛金は、事業の必要経費としてではなく、本人の所得控除として整理します。
6.社会保険料は、給与以外で支払った分も確認する
会社員の方は、給与から差し引かれた社会保険料が、源泉徴収票などに反映されます。
一方、転職までの期間に自分で納めた国民年金や国民健康保険などは、別に確認が必要になることがあります。
個人事業主の方も、その年に支払った対象保険料を整理しましょう。
本人だけでなく、生計を一にする配偶者や親族のために本人が支払った社会保険料も、条件を満たせば対象になります。
例えば、家計を共にする子どもの国民年金保険料を親が支払った場合などです。
ただし、家族名義の保険料なら何でも自由に付け替えられるわけではありません。実際に誰が支払ったか、年金から天引きされているかなどを確認してください。
7.医療費控除は「10万円を超えたか」だけで判断しない
医療費控除は、本人や生計を一にする配偶者・親族のために、その年に支払った対象医療費について、一定の計算をする制度です。
基本的には、対象医療費から保険金などで補填された金額を差し引き、さらに10万円を差し引いて控除額を計算します。
ただし、総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。
そのため、医療費が10万円以下でも、控除の対象になる場合があります。
ここでいう「総所得金額等」は、給与収入や事業の売上そのものではありません。
また、医療に関係する支出でも、すべてが対象になるわけではありません。診療や治療の内容、交通費の扱いなどを確認する必要があります。
一定の健康管理の取組などを行い、対象医薬品を購入した場合には、セルフメディケーション税制を検討できることもあります。ただし、通常の医療費控除とは併用できません。
8.ふるさと納税は、確定申告をする場合の扱いに注意する
ふるさと納税は、寄附金控除などに関係します。
控除には上限があり、収入や家族構成、ほかの控除などによって変わります。誰でも同じ金額まで、同じ負担で利用できるわけではありません。
特に注意したいのが、ワンストップ特例を申請した後に確定申告をする場合です。
医療費控除や副業所得の申告などで確定申告をすると、ワンストップ特例の申請は無効になります。
この場合は、ワンストップ特例を申請した分も含め、その年のふるさと納税をまとめて申告する必要があります。
「寄附先で手続きを済ませたから、確定申告には書かなくてよい」と考えないようにしましょう。
9.支払いがなくても、本人や家族の状況で使える控除がある
控除証明書が届くものだけを探していると、本人や家族の状況に関係する控除を見落とすことがあります。
主なものには、次のような控除があります。
- 基礎控除:本人の合計所得金額などに応じて確認する控除。
- 配偶者控除・配偶者特別控除:本人と配偶者の所得などに応じて確認する控除。
- 扶養控除:親族の年齢、所得、生計などの条件に応じて確認する控除。
- 特定親族特別控除:19歳以上23歳未満の親族について、所得などの条件に応じて確認する控除。
- 障害者控除:本人や対象となる家族の状況に応じて確認する控除。
- ひとり親控除・寡婦控除:本人の家族関係や所得などに応じて確認する控除。
- 勤労学生控除:学生本人の所得など、所定の条件に応じて確認する控除。
このほか、災害や盗難などによる一定の損失について、雑損控除の対象になる場合もあります。
家族に関する控除は、「一緒に住んでいる」「仕送りしている」という事実だけで判断できるものではありません。
税金上の扶養と、社会保険上の扶養も別の仕組みです。申告する年の要件に沿って確認しましょう。
10.個人事業主は、必要経費と所得控除を分ける
経営者や個人事業主の方は、「経費」と「控除」が混ざらないように整理することが大切です。
事業に必要な支出は、必要経費として事業の所得を計算する際に確認します。
一方、本人の国民年金保険料やiDeCoの掛金などは、所得控除として確認する項目です。
また、青色申告特別控除は、社会保険料控除などの所得控除とは別の仕組みです。帳簿や申告方法などの要件に応じて、事業所得等の計算で確認します。
同じ支出を、事業の必要経費と個人の所得控除の両方に重ねて計上しないよう注意しましょう。
法人の経営者は、会社の支出と本人の支出も分けて確認してください。
11.会社員は、年末調整の内容から確認する
会社員の方は、すべての控除を確定申告で一から追加する必要があるとは限りません。
生命保険料控除、社会保険料控除、iDeCoに関係する控除などは、年末調整で反映できる場合があります。
一方、医療費控除や雑損控除は、確定申告で対応します。住宅ローン控除も、初めて適用を受ける年は原則として確定申告が必要です。
確定申告をする場合は、源泉徴収票の内容を引き継ぎ、年末調整で反映されていない項目を確認します。
すでに反映された控除と、追加する控除を分けることで、記入漏れや二重計上を防ぎやすくなります。
12.今日できる準備は、三つに分けて集めること
最初から控除額を計算しようとすると、手が止まってしまうことがあります。
まずは、次の三つに分けて情報を集めてみましょう。
① 届いた証明書
生命保険料、地震保険料、国民年金、iDeCo、小規模企業共済などの証明書を、一つの場所にまとめます。電子データで受け取るものも確認しましょう。
② 支払いの記録
医療費、社会保険料、寄附金などについて、その年に支払った金額と支払者を確認します。
医療費については、保険金などで補填された金額も一緒に整理しておきましょう。
③ 本人や家族の情報
本人や家族の所得見込み、年齢、扶養関係、その年に変わったことを整理します。
「配偶者が仕事を始めた」「子どものアルバイト収入が増えた」「退職して社会保険料を自分で払った」といった変化が、確認のきっかけになります。
この三つを集めるだけでも、次に調べることがはっきりしてきます。
よくある質問
Q.控除が増えれば、必ず税金が戻りますか?
A.必ずではありません。控除の種類、本人の所得、すでに納めた税金などによって結果が変わります。控除額と還付額は別の金額です。
Q.生命保険とiDeCoは、同じ控除ですか?
A.別の控除です。対象となる生命保険料は生命保険料控除、iDeCoの本人掛金は小規模企業共済等掛金控除として確認します。
Q.控除証明書が届いていない支払いは、申告できませんか?
A.証明書の形式は項目によって異なります。医療費など、別の資料や明細書で確認するものもあります。証明書が届くかどうかだけで判断しないようにしましょう。
Q.年末調整が済んだ会社員でも、確定申告をする意味はありますか?
A.医療費控除や、年末調整で反映できなかった控除などを確認する必要がある場合があります。ただし、副業などを含めた申告義務の有無と、控除を受けるための申告は分けて整理してください。
Q.控除を増やすために、年末に保険やiDeCoを始めたほうがよいですか?
A.まず、保障や老後資金として必要か、支払いを続けられるかを確認しましょう。支出した金額以上に税金が戻るという考え方はできません。すでに使える控除を整理することから始めると、無理な支出を避けやすくなります。
まとめ+要約
確定申告の準備では、生命保険料だけでなく、iDeCo、社会保険料、医療費、寄附金、本人や家族に関する控除を確認しましょう。
- 所得控除と税額控除では、差し引く段階が異なります。
- 支払額、控除額、実際に軽くなる税金は別の金額です。
- iDeCoは、生命保険料控除とは別の所得控除に関係します。
- 年末調整で反映済みの項目と、確定申告で追加する項目を分けましょう。
- 証明書、支払い記録、家族の情報をまとめることが、準備の第一歩です。
今日の一歩は、「今年支払ったもの」と「今年変わった家族や働き方の状況」を書き出すことです。
対象になりそうなものが見つかったら、申告する年の条件を一つずつ確認していきましょう。
次回は、生命保険・地震保険・iDeCoの証明書を整理します
Day2では、届いた控除証明書のどこを見るか、生命保険とiDeCoでは何が違うか、年末調整や確定申告に向けて何を確認するかを整理します。
「証明書はあるけれど、どう使えばよいか分からない」という方にも、順番に分かるようにお伝えします。
自分に関係する控除を、一緒に整理してみませんか?
働き方や家族構成、保険や積立の利用状況によって、確認したい項目は変わります。家計や老後資金の準備も含めて整理したい方は、ご相談ください。
個別の控除の適用可否、申告書の作成や税務判断については、税務署や税理士に確認しましょう。
参考情報
※2026年10月10日時点の公表情報に基づく一般的な説明です。主に2026年分の所得税の申告準備を想定しています。所得税と住民税では、控除額や取扱いが異なる場合があります。制度改正による変更もあるため、実際に申告する年分の国税庁の案内をご確認ください。