
医療費・家族の社会保険料・ふるさと納税も確認を!確定申告で見落としやすい控除
「医療費は10万円を超えていないから、申告には関係ないですよね?」
「子どもの国民年金を払ったけれど、自分の控除になるのでしょうか?」
「ふるさと納税はワンストップ特例を申請したので、もう何もしなくてよいですか?」
確定申告の準備では、このような疑問がよく出てきます。
控除を確認するときは、支払った金額だけでなく、「誰のために、誰が、いつ支払ったか」と「どの手続きをするか」を整理することが大切です。
Day2では、生命保険・地震保険・iDeCoなどの控除証明書を確認しました。Day3では、医療費、家族の社会保険料、ふるさと納税について、見落としやすい点を整理します。
この記事で押さえたい5つのポイント
- 医療費が10万円以下でも、本人の所得によっては医療費控除の対象になります。
- 家族の医療費は、生計の関係と実際の支払者を確認します。
- 保険金などで補填された金額は、その対象となった医療費から差し引きます。
- 家族の社会保険料を本人が支払った場合、条件を満たせば本人の控除対象になります。
- 確定申告をすると、ふるさと納税のワンストップ特例は無効になるため、寄附分も申告します。
今回考えたい問いは、「今年の支払いの中に、条件や手続きの思い違いで見落としている控除がないか?」です。
1.医療費控除は、年間の対象医療費から考える
医療費控除は、本人や生計を一にする配偶者・親族のために、その年に支払った対象医療費について、一定の金額を所得から差し引く制度です。
確認する期間は、原則としてその年の1月1日から12月31日までです。
治療を受けた日だけでなく、実際に支払った年を確認します。未払いの医療費は、実際に支払った年の対象になります。
まず、病院、歯科医院、薬局などの領収書や医療費通知を集めましょう。
医療に関係する支出が、すべて対象になるわけではない
治療のための支払いと、予防や美容などを目的とする支払いでは、扱いが異なる場合があります。
健康診断、予防接種、サプリメント、美容目的の施術などを、医療に関係するという理由だけで一律に含めないようにしましょう。
治療内容や事情によって判断が分かれるものは、国税庁の案内や税務署で確認してください。
通院のための交通費も、利用方法や必要性によって取扱いが異なります。領収書がない支出については、日付、通院先、経路、金額などを記録しておくと確認しやすくなります。
2.「10万円以下だから対象外」と決めつけない
医療費控除の基本的な計算は、次のとおりです。
対象医療費の合計額 − 保険金などで補填された金額 − 10万円
ただし、総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。控除額の上限は200万円です。
ここでいう総所得金額等は、給与の額面収入や事業の売上そのものではありません。
仮の計算例:医療費が8万円の場合
計算方法を理解するための仮の例として、総所得金額等が100万円、対象医療費が8万円、補填された金額がない場合を考えます。
- 差し引く金額:100万円 × 5% = 5万円
- 医療費控除額:8万円 − 5万円 = 3万円
この条件では、医療費が10万円以下でも、3万円の所得控除が生じます。
ただし、3万円がそのまま戻ってくるわけではありません。税負担の軽減や還付の有無は、本人の課税状況などによって異なります。
3.家族の医療費は「生計」と「支払者」を確認する
医療費控除は、自分自身の医療費だけが対象ではありません。
生計を一にする配偶者や親族のために本人が支払った対象医療費も、確認できます。
「生計を一にする」とは、日常の生活費などを共通にしている関係を指します。同じ家に住んでいるかだけで判断するものではありません。
別居していても、継続的な生活費の送金などによって該当する場合があります。
また、医療費控除で家族の医療費を確認するときは、扶養控除の対象になっているかだけで判断しません。
家族の医療費を、税金が高い人へ自由に付け替えられるわけではありません。実際に誰が負担したかを確認しましょう。
夫婦でそれぞれ自分の医療費を負担した場合などは、同じ支払いを重複して申告しないようにしてください。
4.保険金や高額療養費は、対応する医療費と整理する
入院給付金や高額療養費など、医療費を補填する金額がある場合は、控除計算で差し引きます。
ただし、受け取った金額を、関係のない医療費からも差し引くわけではありません。
補填金は、その給付の目的となった医療費を限度として差し引きます。
仮の計算例:入院費より給付金が多かった場合
対象となる入院費が6万円、その入院費を補填する給付金が8万円、別の治療で支払った対象医療費が4万円だったとします。
入院費6万円は給付金で補填されるため、控除計算に残る入院費は0円です。
給付金の余り2万円を、別の治療費4万円から差し引く必要はありません。
この例で、所得に応じた差引額を適用する前の医療費は4万円になります。
医療費と補填金を対応させて記録すると、差し引きすぎや計上漏れを防ぎやすくなります。
5.医療費通知だけで、年間の支払いが全部そろうとは限らない
医療費通知は便利な資料ですが、その年の支払いすべてが載っているとは限りません。
通知に含まれていない期間の支払いや、対象となる自由診療、通院交通費などは、別に確認する必要があります。
反対に、医療費通知に載っている支払いを領収書からも追加すると、二重計上になります。
- 医療費通知に含まれる期間を確認する。
- 同じ支払いの領収書を重ねて追加しない。
- 通知にない支払いは、領収書などで確認する。
- 助成や払い戻しがあり、実際の負担額が違う場合は修正する。
申告では医療費控除の明細書を作成します。領収書を提出しない場合でも、原則として確定申告期限等から5年間の保管が必要です。医療費通知を添付した分などは、扱いが異なります。
申告が終わったからといって、確認用の資料をすぐに処分しないようにしましょう。
6.対象の市販薬は、セルフメディケーション税制も比較する
通常の医療費控除とは別に、医療費控除の特例としてセルフメディケーション税制があります。
本人が一定の健康診断や予防接種などの取組を行い、本人や生計を一にする家族のために対象医薬品を購入した場合に、条件を満たせば利用できます。
補填金を除いた対象購入費のうち、1万2,000円を超える部分が控除対象となり、控除額の上限は8万8,000円です。
薬局で買った商品がすべて対象になるわけではありません。レシートの対象表示や、対象医薬品の情報を確認しましょう。
また、通常の医療費控除と、同じ人が同じ年に併用することはできません。
どちらを選ぶかは、両方の対象額と要件を確認してから考えましょう。
健康診断などの取組にかかった費用が、そのままこの特例の対象購入費になるわけでもない点に注意してください。
7.家族の社会保険料を払った方も確認を
社会保険料控除は、本人が負担する社会保険料だけでなく、生計を一にする配偶者や親族の社会保険料を本人が支払った場合にも、対象になることがあります。
対象となる支払いには、国民年金、国民健康保険、介護保険などがあります。
例えば、生計を一にする子どもの国民年金保険料を親が支払った場合は、親の社会保険料控除として確認できます。
この場合も、家族名義の保険料を自由に誰かの控除へ移すのではなく、実際の支払者を確認します。
年金から天引きされている保険料には注意する
親や配偶者の公的年金から天引きされた社会保険料は、原則として、その年金を受け取る本人が支払ったものです。
家族が生活費を援助していることだけを理由に、援助した人の社会保険料控除に含めることはできません。
納付書や口座振替による支払いと、年金からの天引きを分けて確認しましょう。
8.社会保険料は、二重計上と支払年に注意する
会社員の給与から差し引かれた社会保険料は、通常、源泉徴収票に反映されます。
確定申告では、その内容を引き継ぎ、給与以外で支払った対象保険料があれば、未反映分を確認します。
転職や退職があった方は、自分で納めた国民年金や国民健康保険がないか確認してください。
個人事業主の方は、本人の国民年金や国民健康保険料を、事業の必要経費と個人の所得控除の両方に重ねて計上しないようにしましょう。
国民年金保険料には控除証明書がありますが、社会保険料のすべてに同じ形式の証明書が届くわけではありません。
過年度分を納付した場合や、複数年分を前納した場合も、対象年や所定の取扱いを確認してください。特に国民年金の前納は、証明書や日本年金機構の案内に沿って整理しましょう。
9.ふるさと納税は、寄附した本人の控除として確認する
ふるさと納税は、自治体への寄附です。所定の条件と上限の範囲内で、所得税や翌年度の住民税の控除に関係します。
「返礼品を買う」という考え方だけで進めず、寄附の金額、名義、申告方法を確認しましょう。
寄附した本人と、控除を受ける本人が対応しているかも大切です。
配偶者名義の寄附を、本人の申告にそのまま含めないようにしてください。名義や決済方法に不一致がある場合は、寄附先などに確認しましょう。
自己負担2,000円は、上限内で必要な手続きをした場合の目安
ふるさと納税は、誰でもいくら寄附しても自己負担2,000円になるわけではありません。
所得、家族構成、ほかの控除などにより、控除できる範囲は異なります。
医療費控除やiDeCoなどを利用する場合も、控除上限の見込みに影響することがあります。
年の途中の見込みで寄附した方は、年末の所得や控除の状況を改めて確認しましょう。
10.確定申告をすると、ワンストップ特例は無効になる
ワンストップ特例を申請した方でも、その年分の確定申告をする場合は注意が必要です。
確定申告をするとワンストップ特例は無効になるため、申請済みの分も含め、その年のふるさと納税を申告します。
例えば、次のような理由で確定申告をする場合も同じです。
- 医療費控除を受ける。
- 副業所得などを申告する。
- 住宅ローン控除を初めて受ける。
- 年末調整で反映されていない控除を申告する。
寄附先が5自治体以内でも、確定申告をすればワンストップ特例をそのまま使うことはできません。
寄附金受領証明書や、対象となる寄附金控除に関する証明書をまとめて準備しましょう。
11.仮の例で、三つの控除を一緒に整理する
ここからは、準備の流れを示すための仮の例です。実際の相談事例や、還付額の試算ではありません。
給与収入があり、副業もしている方が、次の支払いをしていたとします。
- 本人と家族の治療費を負担した。
- 生計を一にする子どもの国民年金保険料を支払った。
- ふるさと納税をし、ワンストップ特例を申請した。
この方が医療費控除などのために確定申告をするなら、準備は次の順番で進められます。
- 源泉徴収票で、給与と年末調整済みの控除を確認する。
- 対象医療費と補填金を整理し、医療費控除の要件と計算を確認する。
- 子どもの国民年金について、実際の支払者と年末調整への反映状況を確認する。
- ワンストップ特例を申請した分も含め、ふるさと納税の資料を集める。
- 副業の収入・必要経費なども整理し、申告全体を確認する。
一つの控除だけを追加して終わりにせず、確定申告をすることで必要になる項目も一緒に確認することが大切です。
12.今日できる準備は、支払いと補填・申告状況を並べること
まず、次の表を参考に資料を集めてみましょう。
| 確認する項目 | 集める資料 | 一緒に確認すること |
|---|---|---|
| 医療費 | 医療費通知、領収書、通院交通費の記録 | 支払者、対象年、補填金、二重計上の有無 |
| 対象医薬品の購入費 | 対象表示のあるレシート、健康管理の取組を確認できる資料 | 特例の要件、通常の医療費控除との比較 |
| 社会保険料 | 国民年金の控除証明書、納付記録、源泉徴収票など | 実際の支払者、年金天引き、年末調整への反映 |
| ふるさと納税 | 寄附金受領証明書、寄附金控除に関する証明書など | 寄附者、対象年、全寄附分、確定申告の予定 |
資料が足りない項目は、確認先と一緒にメモしておきましょう。
支払いを増やす前に、すでに支払ったものを正しく整理することから始められます。
よくある質問
Q.家族の医療費は、全部まとめて申告できますか?
A.生計を一にする家族のために本人が支払った対象医療費は、まとめて確認できます。ただし、家族がそれぞれ負担した支払いを自由に付け替えたり、同じ支払いを複数人で重複して申告したりすることはできません。
Q.保険金が医療費より多かったら、医療費控除は使えませんか?
A.その保険金の対象となった医療費から、医療費を限度として差し引きます。余った保険金を別の医療費から差し引く必要はありません。ほかの対象医療費を含めて計算してください。
Q.子どもの国民年金保険料を払いました。親の控除になりますか?
A.子どもと生計を一にし、親が実際に支払ったなどの条件を満たす場合は、親の社会保険料控除として確認できます。すでに年末調整で反映した分を重ねて追加しないようにしましょう。
Q.親の年金から天引きされた介護保険料を、自分の控除にできますか?
A.原則としてできません。年金から天引きされた保険料は、その年金を受け取る本人が支払ったものとして扱われます。生活費を援助していることだけでは、援助した人の控除にはなりません。
Q.ワンストップ特例を申請済みですが、医療費控除だけ申告してよいですか?
A.確定申告をするとワンストップ特例は無効になります。医療費控除だけでなく、ワンストップ申請済み分を含む、その年のふるさと納税も申告してください。
まとめ+要約
医療費、家族の社会保険料、ふるさと納税は、金額だけでなく、支払者や手続きの確認が大切です。
- 医療費が10万円以下でも、所得によっては控除の対象になる。
- 家族の医療費は、生計の関係と実際の支払者を確認する。
- 補填金は、その対象となった医療費から差し引く。
- 社会保険料は、家族分の支払い、年金天引き、年末調整の反映を整理する。
- 確定申告をする場合、ワンストップ申請済み分も含めてふるさと納税を申告する。
今日の一歩は、医療費・社会保険料・寄附金の資料を分け、「誰が支払ったか」と「すでに反映されたか」を確認することです。
分からない点を早めに整理しておくと、申告前の確認が進めやすくなります。
次回は、家族の状況に関する控除を確認します
Day4では、配偶者控除、扶養控除、特定親族特別控除、障害者控除、ひとり親控除など、支払いの証明書だけでは分からない控除を整理します。
家族の収入や年齢、働き方が変わった方は、どこを確認すればよいかを一緒に見ていきましょう。
家計の支払いと、申告に向けた確認事項を整理してみませんか?
医療費や保険料、家族への支払い、老後資金の積立をまとめて見直したい方は、ご相談ください。家計の状況を整理し、必要な確認先につなげていきます。
個別の控除の適用可否、申告書の作成、税額の判断については、税務署や税理士に確認しましょう。
参考情報
- 国税庁:医療費を支払ったとき(医療費控除)
- 国税庁:医療費控除の対象となる医療費
- 国税庁:セルフメディケーション税制
- 国税庁:社会保険料控除
- 国税庁:ふるさと納税(寄附金控除)
- 国税庁:確定申告書等作成コーナー
※2026年10月10日時点の公表情報に基づき、主に2026年分の所得税の申告準備を想定した一般的な説明です。本文の計算例は仮の条件によるもので、還付額や税負担の軽減額を示していません。実際の適用は、支払内容、所得、家族関係、申告する年分の要件に応じて確認してください。