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サプライチェーンのリスクは経営にどう響く?小さな会社が対策の優先順位を決める方法

サプライチェーンのリスクは経営にどう響く?小さな会社が対策の優先順位を決める方法

前回は、サプライチェーンを「自社の仕事を成り立たせる社外とのつながり」として整理しました。顧客、仕入れ先、外注先、メール、クラウドなどを利用する小さな事業にも、社外から影響を受ける側と、取引先に影響を与える側の両面があります。

では、そのつながりに問題が起きたとき、自社の経営には何が起きるのでしょうか。

「対策が必要なのはわかるけれど、費用をかける余裕がない」。そう感じる経営者や個人事業主もいるでしょう。限られた予算だからこそ、すべてを一度に整えるのではなく、仕事への影響を確認し、優先順位を決めることが大切です。

この記事で考えたいこと

自社のどの仕事を優先して守り、そのために何を確認してから費用をかけるべきか。これが今回の問いです。

  • リスクの影響は、売上、復旧費用、顧客対応、取引継続に分けて考えます。
  • 売上が遅れることと、売上そのものを失うことは区別します。
  • 対策の優先順位は、止まる仕事の重要性、扱う情報、代わりの方法の有無から考えます。
  • SCS評価の取得に向けた費用と、日々の対策を維持する費用を分けて確認します。
  • 投資効果を推測で決めず、自社の記録と取引先の要求を判断材料にします。

まず、どの仕事が止まるかを具体的にする

「システムが止まると困る」という言葉だけでは、対策にどれくらいの費用をかけるか判断しにくいものです。止まる仕事まで具体的に考えてみましょう。

たとえば、メールが使えなくなった場合でも、顧客への連絡を電話で続けられる会社と、受注内容をメールだけで管理している会社では影響が異なります。同じクラウドの停止でも、別の場所に必要な資料があるかどうかで対応は変わります。

私なら、次の三つを先に確認します。

  1. 何の仕事が止まるか:受注、制作、納品、顧客対応、請求など。
  2. どれくらい待てるか:顧客への約束や締切に、いつ影響するか。
  3. 代わりの方法があるか:別の連絡手段、保存先、協力先など。

ここで決める時間は、自社の業務に合わせた目安です。根拠なく「一日以内なら大丈夫」と決めず、顧客への約束や必要な手続きから考えましょう。

経営への影響を四つに分ける

1.売上と入金への影響

仕事が止まれば、受注や納品、請求が遅れる可能性があります。ただし、遅れた売上が後で回収できる場合と、注文の取消しなどによって失われる場合は違います。

請求の遅れであれば、売上そのものがなくならなくても、入金までの期間が延びることがあります。その間も家賃や外注費などの支払いが続くなら、手元資金への影響を確認する必要があります。

2.復旧と追加対応の費用

問題が起きた後には、原因の確認、機器やアカウントの復旧、外部への相談などに費用がかかることがあります。

経営者や従業員が対応する時間も、通常業務から離れる負担です。支払った金額だけでなく、誰がどれくらいの時間を使ったかも記録すると、対策を見直す材料になります。

3.顧客対応と取引先への影響

納品の遅れや情報の問題が取引先に及ぶと、説明、連絡、調整が必要になります。自社の仕事を再開するだけで、すべてが終わるとは限りません。

どの取引先に何を伝えるか、誰が窓口になるかを決めていないと、対応に時間がかかるおそれがあります。

4.今後の取引への影響

取引先から対策の説明を求められた際、現状がわからなければ、回答や契約の調整が進みにくくなる場合があります。

ただし、「対策が不足していれば必ず取引を失う」とは言えません。取引先が何を求め、いつまでに、どの業務を対象としているかを確認することが先です。

影響を整理する、一枚の表

自社が利用するサービスや協力先について、次のように書き出してみてください。

確認する対象 止まる仕事 経営への影響 先に確かめること
メール 受注確認、顧客連絡 対応の遅れ、注文の取りこぼしの可能性 別の連絡方法と、顧客連絡先の確認方法
資料を保存するクラウド 相談、制作、納品 作業の遅れ、復旧や再作成の負担 必要な資料を復元できるか、停止時に取り出せるか
外注先・協力先 制作、加工、業務処理 納期の遅れ、代替手配の費用 連絡窓口、対応範囲、代わりの方法
請求・会計サービス 請求、入金確認 請求の遅れ、手元資金への影響 必要な記録の取得方法と、代替手順

これは検討のための例です。すべての会社に同じ影響が出るわけではありません。実際の業務と契約に合わせて書き換えましょう。

限られた予算で、何を優先するか

優先順位を決めるときは、起きる可能性だけでなく、起きた場合の影響と現在の備えを合わせて考えます。

重要な仕事が止まるものを先に見る

顧客への約束を守れなくなる仕事や、入金に直結する仕事は、優先して確認する候補です。その仕事がどのサービスや担当者に依存しているかを見ます。

取引先の重要な情報を扱う場所を確認する

顧客から預かる資料や、取引先と共有する情報について、保存先、アクセスできる人、共有範囲を確認します。不要な共有や使っていないアカウントが残っていないかも、点検する対象になります。

代わりの方法がないものを確認する

一つのサービスや一人の担当者が使えなくなると、そのまま仕事が止まる状態なら、代替手順や復旧方法を考えます。代替手段にも費用や管理の負担があるため、重要な仕事から検討しましょう。

影響が大きく、現在の備えに不足があり、代わりの方法もない。こうした対象は、優先して対策を考える理由があります。一方、専門的な技術判断が必要な部分は、サービスの提供元や専門家に確認しましょう。

SCS評価制度への対応費用をどう考えるか

前回紹介したSCS評価制度は、取引に関わる事業者のセキュリティ対策を確認するための制度です。取得を検討する場合は、取引先の要求と、自社が対象とする業務を確認したうえで費用を整理します。

考えたい費用は、次の三つです。

  • 準備の費用:現状の確認、不足する対策、手順や記録の整備に必要な費用。
  • 評価の費用:申請・登録や、専門家による確認・評価などに必要な費用。
  • 維持の費用:サービス利用料、点検、教育、日々の運用に必要な費用。

具体的な金額は、評価段階、業務の範囲、現状の対策、依頼先によって異なります。公式の料金情報と、必要な支援の見積もりを分けて確認してください。

評価取得に必要な準備と、通常の事業を守るための改善が重なる部分もあります。すでに実施している対策を把握してから、不足するものを確認すれば、重複した支出を検討しやすくなります。

対策費用だけでなく、続けるための負担を見る

初期費用が安くても、設定や確認を誰も担当できなければ、運用が続かない場合があります。導入時には、何を守るかに加え、誰が使い、誰が点検し、困ったときに誰へ相談するかを確認しましょう。

個人事業主なら、自分で対応する時間と、外部に依頼する費用を比べます。従業員がいる会社なら、担当者に仕事が集中しないかも見ます。

私が重視したいのは、導入した対策を、自社の人数と仕事量で維持できるかです。費用と運用の両方に見通しが立ってから、次の判断へ進みましょう。

同業他社との差別化は、取引先が必要とする説明から

対策に費用をかけたこと自体が、顧客に伝わるとは限りません。取引先が知りたいのは、預けた情報をどう扱い、仕事をどう続け、問題が起きたときにどう連絡するかです。

実施していることを正確に説明し、確認が必要な点には期限や担当を示せるようにしましょう。こうした対応が評価されるかは取引先によって異なりますが、自社の体制を具体的に伝える材料になります。

受注増加を当然の効果として計算せず、実際に顧客が求めていることを確かめることが大切です。

今日できること:最も止めたくない仕事を一つ選ぶ

まず、顧客への影響が大きい仕事を一つ選び、次の五つを書き出してみてください。

  1. その仕事が依存している取引先やサービス。
  2. 止まった場合に影響する顧客と約束。
  3. 売上、入金、追加費用に起きそうな変化。
  4. 現在ある代替手順や復旧方法。
  5. 不足を確認するために、次に誰へ何を聞くか。

金額がわからない場合は、無理に埋めず「確認中」とします。納期、請求、支払いの記録など、自社にある情報から少しずつ確かめましょう。

まとめ

サプライチェーンのリスクを経営の問題として考えるには、仕事の停止が売上、入金、復旧費用、顧客対応にどうつながるかを整理することが大切です。

限られた予算では、重要な仕事、取引先の情報、代替手段の有無から優先順位を考えます。SCS評価制度への対応も、自社の現状と取引先の要求を確認してから判断しましょう。

何を買うかを決める前に、何の仕事を守るかを決める。その整理が、必要な費用と続けられる対策を選ぶ土台になります。

よくある質問

Q.仕事が止まった場合の損失額は、必ず計算すべきですか?

A.最初から正確な金額を出す必要はありません。売上の消失、入金の遅れ、追加費用を分け、わかる範囲から整理しましょう。数字を置く場合は、停止期間や受注状況などの前提を明記します。

Q.予算が少ないと、十分な対策はできないのでしょうか?

A.まず、重要な仕事と現在の不足を確認することができます。そのうえで、運用の見直しで対応できる部分と、製品や外部支援が必要な部分を分け、優先順位を付けましょう。

Q.SCS評価の取得費用だけを見ればよいですか?

A.いいえ。不足する対策の準備と、取得後の日々の維持にも時間や費用が必要です。評価に関わる費用と、対策を続けるための費用を分けて確認してください。

Q.対策によって受注が増えることを、投資効果に含めてもよいですか?

A.取引先の要求や具体的な商談など、根拠がある場合は検討材料にできます。ただし、未確認の受注増加を確実な効果として扱わず、期待と確認済みの事実を分けましょう。

次回は、自社で対応する、外部に支援を依頼する、取引先と調整するという選択肢を比べ、小さな会社に合う対策の進め方を考えます。

自社のどの仕事を優先して守るべきか、対策費用をどう考えるか迷っている方は、お気軽にご相談ください。業務、取引先の要求、現在の備えを整理し、次に確認することを一緒に考えます。

参考資料

-SDGs, サイバーリスク・セキュリティ, ブログ, 法改正等