
SDGsから考えるCSVとは?小さな会社が「社会の役に立つ」を事業につなげる第一歩
「SDGsには関心があるけれど、うちのような小さな会社に何ができるのだろう」
「社会の役に立つ活動は大切。でも、費用や手間が増えるだけでは続けられない」
中小零細企業の経営者や個人事業主なら、そう感じるのは自然なことです。限られた人手や資金の中で、新しい活動を増やすのは簡単ではありません。
そこで考えたいのが、SDGsを「地域や顧客が抱える課題に気づく手がかり」として使い、CSVを「その課題の解決を自社の仕事につなげる考え方」として使うことです。最初から大きな社会貢献事業を始める必要はありません。
この記事で考えたいこと
自社が無理なく続けられる形で、社会の課題と事業をどう結びつけるか。これが今回、経営者として答えたい問いです。
- SDGsは、自社と関係のある課題を見つける手がかりになります。
- CSVは、課題の解決と事業の継続を一緒に考える視点です。
- 取り組みは、顧客の困りごとや日々の業務を見直すところから始められます。
- 続けるには、顧客への価値だけでなく、必要な費用と利益も確かめることが大切です。
SDGsとCSVは、どう違うのでしょうか
SDGsは、2030年に向けて国連が掲げた17の目標です。健康、働きがい、資源の使い方、地域の暮らしなど、幅広い課題が含まれます。
一方、CSVは「共通価値の創造」と訳されます。社会の課題に役立つことを、商品やサービス、仕事の進め方と結びつけ、社会と事業の双方に価値を生み出そうという考え方です。
小さな会社が考えるときは、次のように整理するとわかりやすくなります。
| 考える視点 | 自社への問い |
|---|---|
| SDGs | 顧客や地域では、どのような困りごとが起きているか? |
| CSV | その困りごとの解決に、自社の仕事はどう役立てるか? |
| 事業の継続 | 必要な費用をまかないながら、無理なく続けられるか? |
たとえば、地域の事業者が災害への備えに困っているとします。防災や事業継続に関わる課題を知ることが入口です。そこから、自社の知識やサービスを生かして、事業者が備えを進めやすくする方法を考えます。
ただし、「役立ちそう」というだけで新しいサービスを始めると、準備にかかる時間や費用が重くなることもあります。誰が何に困っているのか、どこまで支援を求めているのかを確かめてから、小さく試すことが大切です。
なぜSDGsから考えると、CSVがわかりやすくなるのか
CSVという言葉だけを聞くと、「社会にも会社にもよいことを考えなければ」と話が大きくなりがちです。SDGsを手がかりにすると、まず具体的な困りごとに目を向けられます。
たとえば、次のような身近な場面です。
- 高齢の顧客が、必要なサービスの情報を見つけにくい。
- 従業員が働き続けやすい環境を整えたい。
- 材料の廃棄が多く、仕入れ費用もかさんでいる。
- 地域の事業者が、災害への備えを後回しにしている。
ここで「どの目標の番号に当てはまるか」だけを急いで決める必要はありません。先に確かめたいのは、その困りごとは実際にあるか、自社に役立てる力があるかです。SDGsは課題を見つける助けになりますが、顧客の声を聞くことの代わりにはなりません。
中小零細企業や個人事業主は、何から始めればよいのでしょうか
1.いまの仕事で受けている相談を書き出す
最初に、顧客から繰り返し聞かれることを三つほど書き出してみてください。「説明が難しくてわからない」「準備する時間がない」「費用を抑えたい」といった声も、課題を見つける材料になります。
新しい事業の案を机上で考えるより、普段の相談に目を向けるほうが、自社の強みと結びつきやすくなります。
2.自社がすでにできることを確かめる
次に、その困りごとに対して、自社の知識、商品、設備、取引先とのつながりをどう生かせるか考えます。
たとえば、難しい説明をわかりやすくする、無駄な材料を減らす、地域の専門家につなぐなどです。すでに行っている仕事の質を高めることも、立派な出発点です。
3.続けるための条件を決める
社会に役立つとしても、担当者の善意や無償の追加作業に頼り続ける形では、長続きしません。
始める前に、必要な時間、費用、担当する人、顧客が受け取る価値を整理しましょう。売上につながる取り組みなら、その価格で費用をまかなえるかを見ます。業務改善なら、廃棄や手戻りが減るかを見ます。すぐに数字で判断できない場合も、何を確かめれば続けられるかを決めておくことが大切です。
「よい活動」を自社らしい強みに変えるには
同業他社との差別化は、SDGsに取り組んでいると宣言するだけでは生まれません。顧客が困っている場面で、自社だから提供できる具体的な助けがあるかどうかが大切です。
同じ「地域に役立ちたい」という思いでも、業種や得意分野によってできることは異なります。相談を丁寧に聞くことに強い会社もあれば、素早い対応、わかりやすい説明、地域の事業者との連携に強い会社もあります。
差別化を考える際は、「何をしている会社か」に加え、「顧客のどの困りごとを、どのように軽くできるか」を言葉にしてみてください。その答えが、社会への価値と自社の強みを結びつける土台になります。
まずは一つの困りごとから考えましょう
私なら、最初に次の三つを一枚の紙に書きます。
- 顧客や地域から、よく聞く困りごとは何か。
- その解決に、自社がすでに持っている力をどう使えるか。
- 時間や費用の面で、無理なく試せる最小の形は何か。
この段階では、すべてのSDGsに対応しようとしなくて大丈夫です。一つの課題と、一つの小さな試みから始めましょう。試した後に顧客の反応と自社の負担を確かめれば、続けるか、内容を変えるかを判断しやすくなります。
まとめ
SDGsを考えるときは、目標の一覧から自社に合う項目を探すだけで終わらせず、顧客や地域の具体的な困りごとに目を向けてみてください。CSVは、その解決を自社の仕事に結びつけ、双方に価値が生まれる形を考えるための視点です。
中小零細企業や個人事業主にとっての第一歩は、大きな投資や新事業ではありません。いまの仕事で聞こえている困りごとを一つ選び、自社の強みを生かして小さく試すことです。そして、役に立つかどうかと同じくらい、無理なく続けられるかを確かめましょう。
よくある質問
Q.個人事業主でもCSVに取り組めますか?
A.はい。規模よりも、顧客や地域の課題と自分の仕事をどう結びつけるかが大切です。ただし、一人で担える時間には限りがあるため、小さく試して負担を確かめましょう。
Q.SDGsの17の目標をすべて理解してから始めるべきですか?
A.最初からすべてを事業に結びつける必要はありません。まず顧客の困りごとと自社の仕事を整理し、関係の深い課題から考えると進めやすくなります。
Q.社会に役立つ活動なら、無償で提供したほうがよいですか?
A.必ずしもそうではありません。無償で続けられる範囲を見極め、有償のサービスにする場合は顧客が受け取る価値と価格を確かめることが、活動を続けるうえで重要です。
次回は、身近な課題を見つけた後に、社会への価値と事業への価値をどう整理するかを考えます。
自社の仕事と地域・顧客の課題をどう結びつけるか、一緒に整理したい方は、お気軽にご相談ください。