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改正物流効率化法で現場はどう変わるのか|中小運送会社の成功・失敗事例

改正物流効率化法で現場はどう変わるのか|中小運送会社の成功・失敗事例

改正物流効率化法で現場はどう変わるのか|中小運送会社の成功・失敗事例

Executive Summary(TL;DR)

  • 対応の差は「現場記録の有無」から生まれます
  • 成功する会社は小さく始めて、続けています
  • 失敗する会社は法律対応を後回しにしがちです
  • 荷主・元請との話し合いには事実の整理が必要です
  • 中小企業でも、早く動けば信頼を高められます

改正物流効率化法への対応は、特別な大企業だけの取り組みではありません。 荷待ち時間や荷役等時間の短縮、多重下請構造の是正、積載効率の向上などは、 実際に現場で荷物を運んでいる中小運送会社にも関係するテーマです。 国土交通省の物流効率化法ポータルでも、荷待ち時間や荷役等時間の算定方法、 取組結果の公表、評価制度などが重要事項として示されています。 本記事では、架空の中小運送会社の事例をもとに、 うまく進む会社とつまずく会社の違いをわかりやすく整理します。 自社の状況に近い部分を見つけることで、明日から何を変えるべきかが見えてきます。

1. 成功事例1:荷待ち記録から改善相談につなげた会社

A社は、車両10台ほどの地域密着型の運送会社です。 長年、食品や日用品の配送を中心に仕事をしてきました。 社長は以前から、ある配送センターでの荷待ち時間が長いことに悩んでいました。 しかし、取引先にはなかなか言い出せませんでした。

理由は単純です。 「仕事を切られたら困る」と感じていたからです。 中小運送会社にとって、長く付き合っている取引先に改善をお願いするのは簡単ではありません。 多少の待機や無理な段取りがあっても、現場の努力で何とかしてきた会社は少なくありません。

そこでA社は、まず1か月だけ荷待ち時間を記録することにしました。 特別なシステムは使っていません。 ドライバーが帰庫後に、次の4項目を事務担当へ伝えるだけです。

  • 日付
  • 現場名
  • 到着時刻
  • 作業開始時刻

1か月後、A社は大きな気づきを得ました。 感覚では「たまに長い」と思っていた荷待ちが、実際には特定の曜日と時間帯に集中していたのです。 また、同じ配送センターでも、午前便と午後便で待ち時間に大きな差がありました。

A社はその記録をもとに、元請へ次のように相談しました。

「この現場では、火曜日と金曜日の午前に荷待ちが長くなる傾向があります。 当社としても安定して運び続けたいので、受付時間や到着時間の調整を一緒に相談できませんか。」

この伝え方のポイントは、相手を責めていないことです。 「待たされて困っている」と感情だけで伝えるのではなく、 「安定して運ぶために改善したい」と相談しています。 さらに、記録があるため話が具体的になります。

結果として、すべてが一気に解決したわけではありません。 しかし、到着時間の一部変更と、受付順の調整が行われました。 ドライバーの拘束時間も少し短くなり、社内では「記録を残せば話が進む」という意識が生まれました。

この事例からわかるのは、法改正対応は大きな設備投資から始めなくてもよいということです。 まずは、現場で起きていることを見えるようにする。 それだけでも、取引先との話し合いは進めやすくなります。

2. 成功事例2:元請との関係を見直した会社

B社は、建材配送を行う小規模な運送会社です。 社長を含めて現場に出ることも多く、配車も事務も限られた人数で回していました。 以前から、元請からの急な依頼や変更に悩まされていました。

たとえば、前日の夕方に翌朝の配送先が変わる。 指定時間が厳しいのに、積み込み側の準備が遅れる。 現場に着いてから追加作業を頼まれる。 こうしたことが日常的に起きていました。

B社は長い間、「中小だから断れない」と考えていました。 しかし、労働時間管理が厳しくなり、ドライバーの負担も増える中で、 このままでは事故や退職につながると感じるようになりました。

そこでB社は、元請ごとに仕事の内容を整理しました。 見た項目は次の通りです。

  • 急な変更が多いか
  • 荷待ちが多いか
  • 追加作業が発生しているか
  • 運賃と作業負担が合っているか
  • 相談したときに改善してくれるか

すると、売上は大きいものの、負担が重い仕事があることがわかりました。 反対に、売上はそこまで大きくなくても、段取りがよく、ドライバーからの評判がよい仕事もありました。

B社は、すぐに取引をやめるのではなく、まず元請に相談しました。 「法改正への対応と安全な運行のため、急な変更や追加作業について事前共有のルールを作りたい」 と伝えました。

このときも大切なのは、単なる値上げ交渉にしないことです。 安定輸送、ドライバーの安全、法改正対応という共通の目的を示すことで、 元請も話を聞きやすくなります。

その結果、すべての元請がすぐに改善してくれたわけではありません。 しかし、改善に前向きな取引先と、そうでない取引先がはっきりしました。 B社は今後、改善に協力してくれる取引先との関係を深める方針に切り替えました。

この判断は、短期的には不安があります。 しかし、無理な仕事を続けてドライバーが辞めてしまえば、会社の土台が崩れます。 改正物流効率化法への対応は、取引先を見直すきっかけにもなります。

3. 失敗事例1:現場任せで対応が遅れた会社

C社は、長年の経験と人間関係で仕事を回してきた運送会社です。 社長も配車担当も現場をよく知っており、何か問題があれば電話で調整していました。 そのため、記録や書類の整備は後回しになっていました。

法改正の話を聞いても、最初はこう考えていました。 「うちは小さい会社だから関係ない」 「大手が対応する話だろう」 「今まで通りで何とかなる」

ところが、ある元請から荷待ち時間や再委託の状況について確認が入りました。 C社は実態としては真面目に仕事をしていました。 しかし、記録が残っていなかったため、すぐに説明できませんでした。

配車担当はドライバーに聞き取りをしましたが、過去の待ち時間は人によって記憶が違います。 「あの現場はいつも長い」 「いや、最近はそうでもない」 「先月はひどかった」 といった話になり、数字として整理できませんでした。

結果として、元請への回答に時間がかかりました。 その後、元請からは「今後は記録を残してください」と言われました。 取引がすぐになくなったわけではありません。 しかし、C社は「対応が遅い会社」と見られてしまいました。

この失敗の原因は、現場が悪かったからではありません。 むしろ現場は一生懸命に動いていました。 問題は、現場の努力が記録として残っていなかったことです。

中小運送会社では、現場力が強い会社ほど、記録が後回しになることがあります。 しかしこれからは、現場力に加えて、説明できる力も必要になります。 「やっています」だけでなく、「このように確認しています」と言える状態を作ることが大切です。

4. 失敗事例2:安さだけで仕事を受け続けた会社

D社は、価格の安さを武器に仕事を増やしてきた会社です。 台数は多くありませんが、社長の営業力で多くの案件を受けていました。 しかし、実際には無理な運行が増え、ドライバーの疲れも目立っていました。

D社の問題は、単価が低いことだけではありませんでした。 低い単価のまま、荷待ちや追加作業、急な変更まで受けていたことです。 結果として、見た目の売上はあっても、現場の負担に見合わない仕事が増えていました。

ある時期から、ドライバーの不満が強くなりました。 「待ち時間が長い」 「休憩が取りにくい」 「帰庫が遅い」 「この仕事内容でこの運賃は厳しい」 という声が出るようになりました。

しかしD社は、仕事を失う不安から取引先に相談できませんでした。 その結果、ドライバーの退職が続き、受けられる仕事が減ってしまいました。 売上を守るために安く受けていた仕事が、結果的に会社の体力を削っていたのです。

改正物流効率化法の流れでは、荷待ち時間や荷役等時間の短縮、積載効率の向上などが重視されます。 これは、運送会社が無理をしてすべてを背負うという意味ではありません。 むしろ、荷主・元請・運送会社がそれぞれの立場で改善する必要があるということです。

D社のように、安さだけで仕事を受け続けると、改善の話をする余地がなくなります。 その場では仕事が取れても、長い目で見ると人が辞め、車が動かず、会社の信用にも影響します。

中小運送会社に必要なのは、すべての仕事を断ることではありません。 仕事ごとに負担を見える化し、続けるべき仕事と見直すべき仕事を分けることです。

5. 成功と失敗を分ける5つのポイント

ここまで見てきたように、成功する会社と失敗する会社の違いは、 会社の規模だけでは決まりません。 大きなシステムを導入しているかどうかでもありません。 むしろ、日々の小さな管理と、取引先への伝え方が大きな差になります。

1. 現場の困りごとを記録しているか

荷待ち、荷役、急な変更、追加作業などは、記録して初めて改善の材料になります。 記憶だけでは、取引先との話し合いで弱くなります。

2. 「何となく大変」を数字にしているか

「待ち時間が長い」ではなく、 「平均で60分以上待っている」 と言えるだけで、相談の説得力は変わります。 完璧な数字でなくても、まずは傾向をつかむことが大切です。

3. 元請・荷主を責めずに相談しているか

改善を求めるときは、相手を責める言い方ではなく、 「安定して運び続けるために相談したい」と伝えることが大切です。 法改正対応は、対立ではなく協力のきっかけにできます。

4. 無理な仕事を放置していないか

売上がある仕事でも、ドライバーに過度な負担がかかるなら見直しが必要です。 人が辞めてしまえば、売上どころか運ぶ力そのものが失われます。

5. 社内で担当を決めているか

記録や改善は、誰かが何となくやるだけでは続きません。 社長、配車担当、事務担当、ドライバーの中で、誰が何を確認するのかを決めることが重要です。

この5つを押さえるだけでも、会社の対応力は大きく変わります。 法改正対応は、難しい書類をそろえることだけではありません。 現場の実態を見える化し、取引先と前向きに話し合える状態を作ることです。

まとめ+要約

  • 成功する会社は、まず現場の記録を始めています
  • 荷待ちや荷役の実態を見える化すると相談しやすくなります
  • 元請や荷主を責めず、安定輸送のために話すことが大切です
  • 安さだけで無理な仕事を受け続けると、人材流出につながります
  • 小さな会社でも、早めに動けば信頼される会社になれます

Next Best Action:
取引先ごとに「荷待ち・急な変更・追加作業・相談しやすさ」を一覧にしてみましょう。

FAQ

Q1. 取引先に改善をお願いすると、仕事を切られませんか?

伝え方を工夫することが大切です。 「困っています」と一方的に言うのではなく、 「安定して運び続けるために、現場の状況を共有したい」と伝える方が話し合いになりやすくなります。 記録をもとに相談すれば、感情的な対立も避けやすくなります。

Q2. 小さい会社でも記録を取る意味はありますか?

あります。 小さい会社ほど、限られた人数と車両で仕事を回しています。 荷待ちや無理な運行が続くと、会社全体への影響が大きくなります。 記録は、取引先への説明だけでなく、自社の働き方を守るためにも役立ちます。

Q3. 成功事例のように、すぐ改善されない場合はどうすればいいですか?

すぐに結果が出なくても、記録を続けることが大切です。 1回の相談で変わらなくても、継続して状況を共有すれば、取引先も問題を理解しやすくなります。 また、改善に前向きな取引先とそうでない取引先を見極める材料にもなります。

参考情報

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