
SDGsとCSVを事業につなげるには?社会への価値と自社への価値の見つけ方
前回は、SDGsを顧客や地域の課題に気づく手がかりとし、CSVをその解決と自社の仕事を結びつける考え方として紹介しました。
では、見つけた課題をどのように事業につなげればよいのでしょうか。「社会に役立つこと」と「会社を続けること」の両方を考えようとすると、難しく感じるかもしれません。
私がおすすめするのは、誰の何がよくなるのか、自社にはどのような変化があるのかを、分けて書き出すことです。この二つが具体的になると、取り組むべきことと、まだ確かめるべきことが見えてきます。
この記事で考えたいこと
顧客や地域に役立つ取り組みを、自社が無理なく続けられる仕事にするには、何を確かめればよいか。これが今回の問いです。
- 社会への価値は、「誰の、どの困りごとが、どう軽くなるか」で考えます。
- 自社への価値は、売上だけでなく、費用、手間、仕事の質も含めて考えます。
- 両方によい変化がありそうでも、実際に続けられるかは小さく試して確かめます。
- SDGsの目標との関係は、取り組みの中身を整理してから確認すると自然です。
最初に「誰の困りごとか」をはっきりさせる
「地域を元気にする」「環境に配慮する」という目標には意味があります。ただ、それだけでは何をするか決めにくいものです。
まずは相手を具体的に思い浮かべてみましょう。たとえば「地域の人」よりも「災害への備えを後回しにしている近隣の小規模事業者」、「顧客」よりも「専門用語が難しく、サービスを選べずにいる人」と考えたほうが、必要な助けを検討しやすくなります。
次の三つを書ければ、課題の輪郭が見えてきます。
- 誰が困っているのか。
- どの場面で困っているのか。
- どうなれば少しよくなるのか。
ここでは、経営者の想像だけで答えを決めないことも大切です。日々の相談や問い合わせを振り返り、可能なら相手に直接聞いてみましょう。
社会への価値と自社への価値を、二つの欄に分ける
課題が見えたら、次は一つの取り組みについて、相手と自社の双方に起きる変化を整理します。
| 確認すること | 考えるための問い |
|---|---|
| 顧客・地域への価値 | 困りごとは軽くなるか。必要な情報やサービスに届きやすくなるか。 |
| 自社への価値 | 仕事の質、顧客との関係、売上や費用にどのような変化がありそうか。 |
| 続けるための条件 | 誰が担当し、どれくらいの時間と費用をかけられるか。 |
| 確かめる方法 | 何を見れば、役立ったか、続けられるかを判断できるか。 |
たとえば、専門的な説明がわかりにくいという声を受けて、相談時に使う説明資料を見直すとします。顧客には「選択肢を理解しやすくなる」という価値が考えられます。自社には「説明の行き違いを減らし、相談の質をそろえやすくなる」という価値が考えられます。
これはあくまで検討例です。資料を作れば必ず成果が出るわけではありません。実際の相談で使い、顧客が理解しやすくなったか、作成や更新にかかる手間は適切かを確かめる必要があります。
自社への価値を「売上が増えるか」だけで判断しない
小さな会社にとって、利益を確保することは大切です。一方で、取り組みの価値がすぐ売上に表れるとは限りません。
たとえば、材料の無駄を減らす工夫なら、仕入れや廃棄にかかる費用を見直せるかもしれません。説明をわかりやすくする工夫なら、問い合わせや手戻りにかかる時間を減らせるかもしれません。働きやすさを高める工夫なら、従業員の声や日々の業務の進み方を見ていく必要があります。
ただし、「きっと費用が減る」「信頼が高まるはず」と決めつけるのは避けましょう。期待する変化と、実際に確認できた変化を分けることが、次の判断を助けます。
最初は簡単な記録で十分です
複雑な計算をする前に、取り組みの前後で次のような情報を記録してみてください。
- 準備と実施にかかった時間
- 追加でかかった費用
- 利用した人の声や、相談で繰り返し出た質問
- 廃棄、手戻り、問い合わせなどの変化
- 継続を希望する人がいるか
売上につながる取り組みなら、価格から材料費や外注費などを差し引いたうえで、必要な作業時間に見合うかも確認します。数字がまだそろっていない段階で、投資効果を断定する必要はありません。
SDGsの目標は、事業の内容が見えてから照らし合わせる
「SDGsに取り組むなら、まず17の目標から一つ選ぶべきでしょうか」と聞かれることがあります。目標を読むことは、課題を知るうえで役立ちます。ただし、番号を選ぶこと自体が目的になると、顧客が本当に必要としていることから離れてしまう場合があります。
おすすめの順番は、困りごとを聞く → 自社にできることを考える → 小さく試す → 関係するSDGsの目標を確認する、です。
たとえば、働き続けやすい職場づくりに取り組むなら、従業員が具体的に何に困っているのかを先に把握します。そのうえで、勤務の進め方や相談の仕組みを見直し、関連する目標を確認します。この順番なら、目標の表示だけで終わらず、実際の改善に目を向けられます。
続けられるCSVにするための三つの判断
判断1.相手が必要としているか
よいと思った案でも、相手が困っていなかったり、別の助けを求めていたりすることがあります。顧客の声を聞き、試した後の反応を確かめましょう。
判断2.自社の強みを生かせるか
自社が経験を持つ分野なら、今ある仕事を改善する形で始められます。専門外の課題まで一社で抱え込む必要はありません。必要に応じて、地域の事業者や専門家との連携も選択肢になります。
判断3.負担に見合う形で続けられるか
担当者の時間、必要な費用、通常業務への影響を確認します。負担が大きければ、対象を絞る、提供方法を変える、有償化を検討するなど、形を見直しましょう。社会への価値があるからこそ、続けるための条件を曖昧にしないことが大切です。
今日できること:一つの案を四行で整理する
まず、いま思いつく取り組みを一つだけ選び、次の四行を書いてみてください。
- 困っている人と、具体的な困りごと
- 自社が提供できる助け
- 顧客・地域への価値と、自社への価値
- 小さく試す方法と、続けるか判断するために見ること
四行目まで書けないときは、案をあきらめる必要はありません。「誰に聞けば確かめられるか」を次の行動にしましょう。わからないことを明らかにすることも、経営判断の大事な一歩です。
まとめ
SDGsとCSVを事業に結びつけるには、まず顧客や地域の具体的な困りごとを知ることが出発点です。次に、その解決が相手にどんな価値を生み、自社にはどんな変化をもたらすかを分けて考えます。
売上だけを見るのでも、社会への思いだけで進めるのでもなく、相手に役立つか、自社の強みを生かせるか、無理なく続けられるかを確かめましょう。小さく試して得た事実が、次の取り組みを選ぶ材料になります。
よくある質問
Q.売上につながらない活動は、CSVとは考えられませんか?
A.売上への直結だけで判断する必要はありません。ただし、CSVとして事業に組み込むなら、自社の仕事や競争力にどのようにつながるかを具体的に考えることが大切です。純粋な地域貢献活動にも価値がありますが、その目的と続けるための費用は別に整理しましょう。
Q.取り組みの効果を厳密な数字で示せないと、始められませんか?
A.最初から厳密な効果を示す必要はありません。かけた時間や費用、利用者の反応など、記録できるものから始めましょう。得られた情報をもとに、続けるか、変えるかを判断できます。
Q.同業他社もSDGsに取り組んでいる場合、差別化できますか?
A.目標を掲げるだけでは違いは伝わりにくいでしょう。自社が誰のどんな困りごとを、どのような方法で軽くしているかを具体的に示すことが、違いを伝える出発点になります。
次回は、実際に取り得る方法を比べながら、小さな会社が自社に合うCSVの形をどう選ぶかを考えます。
自社の取り組みが顧客や地域にどう役立ち、事業として続けられるかを整理したい方は、お気軽にご相談ください。