
就業規則・再雇用条件をどう直す?揉めない実務手順
Executive Summary(TL;DR 5行)
- まず“条文”を現実に合わせる
- 希望者全員が対象が基本
- 条件は「役割×時間」で組む
- 更新は年1でも設計が必要
- 話し合いの段取りで揉めにくい
はじめに
制度対応で一番つらいのは、「法律の話」よりも、現場の感情が絡む「条件の話」です。 2025年4月以降は、希望者全員を対象とする形が基本になるため、まず就業規則や運用ルールを“今の現実”に合わせる必要があります。 本稿では、難しい言葉は避けて、直す順番(条文→条件→更新→周知)を示します。 実行するなら、まずは「案を作って話し合う」準備から始めましょう。
※この記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は状況により変わります。必要に応じて労務の専門家や公的窓口へご相談ください。
1. まず直すべき就業規則のポイント
いきなり「給与をどうするか」から始めると、だいたい混乱します。 先に“土台”である就業規則を整えないと、話し合いのたびに解釈がブレて、揉めやすくなるからです。
就業規則のチェックは、まず次の2点だけ押さえると十分です。
-
「希望者全員を65歳まで継続雇用する」ことが読み取れるか
文章があいまいだと、担当者や上司によって対応が割れます。 -
経過措置の前提のまま止まっていないか
古い表現(対象者を限定する基準を前提にした書き方)が残っていると要注意です。
ポイントは、「制度として対象にする」ことと、「運用として、誰がどの条件で継続雇用になるか」が一貫していることです。 条文だけ整っていても、現場が違う運用を続ければ、結果的に火種になります。
※就業規則の変更は、会社の規模や状況によって手順が変わります。迷ったら社労士や労働局などへ相談すると安全です。
2. 条件設計は「役割×時間」で組む(給与・時間・役割)
再雇用(継続雇用)で揉めやすいのは、だいたい次の2つです。
- 「前と同じ働き方なのに、給与が大きく下がった」
- 「給与は下がったのに、責任はそのままだった」
ここでおすすめなのが、条件を「役割×時間」で組む方法です。 これだけで、給与の説明がしやすくなり、本人も納得しやすくなります。
(1)役割を3つに分ける
- フル戦力:現役と同じく、成果を中心に期待する
- 指導役:若手育成・引継ぎ・品質安定が中心
- 補助・定型:負荷を抑え、できる範囲で支える
(2)時間を3つに分ける
- 週5フル
- 週3〜4
- 短時間
(3)この2軸で、給与の「考え方」を作る
例えば、「フル戦力×週5フル」は成果に合わせた設計に、 「指導役×週3〜4」は育成や引継ぎを評価する設計に、 「補助・定型×短時間」は業務範囲を明確にして設計する、という具合です。
大切なのは、給与を「一律に下げる」か「上司の気分で決める」ように見える状態を避けることです。 そう見えた瞬間に、当事者だけでなく周囲も不安になります。
※この段階で細かい金額まで決めなくてもOKです。まずは「どういう考え方で決めるか」を言葉にできれば、話し合いが前へ進みます。
3. 1年更新はOK?更新設計の注意
「再雇用は1年契約で更新」という会社は多いです。 ここで怖いのは、毎年の更新が“切られるかもしれない不安”を生み、本人の意欲や職場の空気を悪くすることです。
1年更新にするかどうかよりも、重要なのは更新の設計です。 たとえば、次のような点を決めておくと、揉めにくくなります。
- 65歳までは原則更新(健康や業務上の重大な問題がない限り継続)
- 更新しない場合の理由を、本人に説明できる(面談の記録も残す)
- 評価の見方:成果だけでなく、引継ぎ・育成など役割に合った評価を用意する
もし更新の基準があいまいだと、「年齢を理由に早めに終わらせたいのでは?」と疑われやすくなります。 会社側にその意図がなくても、そう見えるだけでトラブルは起きます。 だからこそ、更新は「誰が見ても分かる形」にしておくのが得策です。
4. 伝え方(周知)のコツ
制度を整えても、伝え方が雑だと反発が起きます。 とくにこのテーマは、生活や将来不安に直結するので、言い方ひとつで受け止め方が大きく変わります。
(1)「会社が守りたいもの」と「社員が守りたいもの」を両方言う
- 会社が守りたいもの:事業継続、収益、職場の安全、品質
- 社員が守りたいもの:生活、健康、尊厳、働きがい
どちらか片方だけを強調すると、「会社都合だ」「感情がない」と受け取られがちです。 両方を言葉にするだけで、話が通りやすくなります。
(2)条件は“急に出す”ほど反発が出る
先に「給与はいくら」「仕事はこれ」と個別条件だけを出すと、反発が強くなりやすいです。 おすすめは順番を逆にすることです。
- 先に「軸(役割×時間)」を共有する
- 次に「個別面談」で条件を詰める
- 最後に「文書で合意」して、全体の運用へ
この順番だと、「会社としての考え方」が先に見えるので、個別条件の話が感情だけになりにくいです。 面談も、攻める場ではなく「すり合わせの場」になります。
まとめ+要約
- まず就業規則を“希望者全員”前提で、現実に合わせて整えます。
- 条件は「役割×時間」で設計すると、説明がしやすく揉めにくいです。
- 1年更新にするなら、「65歳までの更新設計」を最初から用意すると安心感が出ます。
- 周知は“軸→個別”の順で進めると、反発が減りやすいです。
- 次回は、よくある「つまずき事例」を見て、地雷を避ける方法を整理します。
FAQ(3問)
Q1. 希望者全員が対象って、能力が足りなくても雇うのですか?
A. まず「制度として対象にする」ことが基本になります。 ただし、実際の就労に支障がある場合は、健康状態や業務の適性なども含めて個別に丁寧な判断が必要です。 大切なのは、最初から“排除”の発想で進めず、役割と時間を調整して「働ける形」を作ることです。
Q2. 条件が合わず本人が断ったら会社は違反?
A. 重要なのは、条件提示が一方的になっていないか、話し合いが十分か、です。 「役割×時間」の軸があり、合理的な条件提示と丁寧な面談があれば、無用な対立は避けやすくなります。 その上で合意できない場合は、次善の案(時間短縮・職務変更など)も含めて検討するのが現実的です。
Q3. どこに相談すべき?
A. 就業規則の見直しや運用設計は、社労士など労務の専門家に相談すると早いです。 また、地域の労働局やハローワークなど公的窓口も活用できます。 「条文」「条件」「更新」「周知」を順番に整理して持ち込むと、相談がスムーズです。
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