
BCP/ジギョケイを“動く計画”にする決め方
BCP ジギョケイ BCM 意思決定 合意形成 次の一手
Executive Summary(TL;DR 5行)
- 経営が決めるべきは「優先業務」「復旧目標」「回す頻度」の3点です。
- 反対意見は「忙しい」「お金がない」「効果が不明」に集約されます。
- 解決策は、最小で作って、月10分で回し、年1回の机上訓練で穴を直すことです。
- 判断の材料は「止まった時の損失」と「戻るまでの時間」です(完璧な数字は不要)。
- 今日の一手は“点検日をカレンダーに入れる”ことです。
はじめに
ここまで(Day1〜Day4)で、BCP・ジギョケイ・BCMを「作る→使える→回す」流れとして整理しました。 最後のDay5は、これを経営の意思決定として「決める」「続ける」「相談につなげる」回です。
どんなに良いテンプレがあっても、決めない限り動きません。 逆に言えば、経営として“決めるポイント”を押さえれば、小さな会社でもちゃんと回ります。
本稿では、経営者・役員がそのまま使えるDecision Brief(意思決定ブリーフ)と、 よく出る反対意見への先回り回答、そして今日できる「次の一手」をまとめます。
1) 経営が決めるべき3つ(これだけで回り始める)
まず結論です。経営が決めるべきは、次の3つだけです。 現場に丸投げすると、ここが曖昧になって止まります。
- 優先業務(トップ3):非常時に守る仕事は何か
- 復旧目標(いつまでに戻すか):何時間/何日で復旧したいか
- 回す頻度(BCM):点検・訓練・見直しをいつやるか
なぜこの3つが最優先なのか
- 優先業務が決まると、守るものが明確になります。
- 復旧目標が決まると、必要な準備の強さが決まります。
- 頻度が決まると、策定しっぱなしが止まります。
メモ:小さな会社ほど、判断が遅れるとダメージが大きいです。
だから「迷わないための決め事」が最大の投資になります。
2) Decision Brief(そのまま使える雛形)
ここはコピペで使えるように、最小の意思決定ブリーフにしました。 まずは空欄があってもOKです。埋めながら強くします。
# Decision Brief(経営共有用)
- テーマ:BCP/ジギョケイを「作って終わり」にせず、BCMで回す
- 推奨アクション:最小BCP(4つの箱)+月10分点検+年1回の机上訓練
- 守るもの(優先業務トップ3):
1)
2)
3)
- 復旧目標(いつまでに戻すか):
- 優先業務1:
- 優先業務2:
- 優先業務3:
- 主要リスク(想定シナリオ):
- 例:停電・通信障害/PC故障/自分(担当)が動けない/取引先停止/サイバー
- 体制(担当):
- 主担当:
- 代替(いれば):
- 運用(BCM):
- 月1回(10分):連絡/データ/代替場所の点検
- 四半期1回(30分):机上訓練+見直し
- 年1回(60分):少し本番想定の訓練
- 測定KPI(できる範囲で):
- 点検実施回数
- 連絡先更新回数
- 訓練実施(年1回)
- 復旧にかかった時間(振り返り)
- 次の一手(NBA):次回の点検日をカレンダーに入れる
“KPI”といっても、立派な数字は不要です。
まずは「点検したか」「連絡先を更新したか」「訓練したか」の3つで十分です。
3) 反対意見への先回り(忙しい・お金がない・効果が不明)
BCP/BCMが進まない理由は、ほぼここです。 反対意見は悪ではありません。現実の制約なので、先に潰します。
反対①「忙しくて無理」
回答:だから10分からやります。
月10分の点検が「策定しっぱなし」を止めます。完璧を狙うと止まるので、最小で回します。
- 点検項目は3つだけ(連絡/データ/代替場所)
- 日付は固定(例:毎月1日、月末、締め日など)
- やった証拠は日付を書く(積み上がる)
反対②「お金がない」
回答:最初は“決め事”が中心で、設備投資は後回しでOKです。
まずは「優先業務」「復旧目標」「連絡」「データ置き場」の整理で効果が出ます。
- データの置き場を1つ決める(無料〜低コストから)
- 外注・代行候補を1つ作る(すぐ契約しなくても候補だけでも)
- 代替場所は「自宅」からで十分なケースが多い
反対③「効果が分からない」
回答:効果は「止まった時に戻れる」ことです。
机上訓練で“穴”が出た時点で、すでに価値が出ています(穴は放置すると事故になります)。
- 机上訓練で「穴3つ」が出れば成功
- 穴を埋めて、次回同じ穴が出なければ改善
- これを積み上げるのがBCM
4) 「効果が見えない」を見える化する超簡単な考え方
BCP/BCMの効果は、売上のように毎月きれいに見えません。 だから「やる意味ある?」が起きます。 そこで、見える化は1つの式で十分です。
効果(ざっくり)=止まった時の損失 × 止まる時間の短縮
例:1日止まると失う金額(売上・信用・機会)を想像し、
それを「半日で戻せる」「3日で戻せる」に変えるのがBCP/BCMです。
完璧な数字でなくてOKです。あくまで意思決定のための目安です。 迷う場合は、こう考えてください。
- 売上の損失:受注が止まる、納品が遅れる、請求が遅れる
- 信用の損失:返信が遅れる、説明できない、代替案が出せない
- 機会の損失:新規案件が逃げる、紹介が止まる
だから最初に「優先業務トップ3」と「復旧目標」を決めるのが重要になります。 この2つが決まると、止まる時間を短くする準備がはっきりします。
5) 相談につながる“次の一手”の作り方
最後に、この記事を読んだ方が「じゃあ自分は何をすればいい?」で止まらないように、 行動を3段階に分けます。自社の状況に近い所から選んでください。
ステップ1(今日10分):最低限の点検
- 連絡先:最小10人(主要顧客・外注・家族)を確認
- 優先業務:トップ3をメモ
- データ:顧客・請求・納品物の置き場を確認
ステップ2(今週30分):机上訓練で穴を3つ出す
「停電+通信障害」か「自分が1週間動けない」を選び、10〜30分で回します。
出た穴は3つだけメモ。全部直そうとしないのがコツです。
ステップ3(90日):運用に乗せる
- 月1回(10分)点検日をカレンダー固定
- 四半期1回(30分)机上訓練日も予約
- 年1回(60分)で少し本番想定の訓練
ここまでやると、BCP/ジギョケイは“書類”ではなく“習慣”になります。 もし「自社だとトップ3が決められない」「業種特有の止まり方が怖い」などがあれば、 外部の視点を入れるだけで一気に整理できます。
シリーズの総まとめ(Day1〜Day5)
- Day1:BCP(計画)とBCM(回す仕組み)の違いを整理。まずは3点検(連絡・優先・代替)。
- Day2:最小BCPは「4つの箱」。トップ3と復旧目標を決めてA4一枚に落とす。
- Day3:落とし穴は3つ(連絡・優先・代替)。机上訓練で穴を出して直す。
- Day4:BCMは月10分で回る。90日で運用に乗せる(担当・頻度・内容を決める)。
- Day5:経営が決める3点(優先・復旧目標・頻度)。反対意見に先回りし、次の一手を固定する。
最後に一言:BCP/BCMは「怖がるため」ではなく、「戻るため」にあります。
小さく回せば、ちゃんと強くなります。
まとめ+要約
- 経営が決めるべきは「優先業務」「復旧目標」「回す頻度」の3点です。
- 反対意見は「忙しい」「お金がない」「効果が不明」に集約されます。
- 解決策は、最小で作って、月10分で回し、年1回の机上訓練で穴を直すことです。
- 効果は「止まった時の損失 × 止まる時間の短縮」でざっくり見える化できます。
- 今日の一手は“点検日をカレンダーに入れる”ことです。
Next Best Action:今すぐ、次回の「BCM点検10分」をカレンダーに入れてください。
FAQ(3問)
- Q1. どこまでやれば「十分」と言えますか?
- 最初は「優先業務トップ3」「復旧目標」「連絡先(最小)」「データの置き場」が揃えば十分です。 そこからBCM(点検・訓練・見直し)で育てていけばOKです。
- Q2. 相談するタイミングはいつが良いですか?
- 「トップ3が決められない」「業種特有の止まり方が怖い」「取引先への説明が必要」などが出た時が最適です。 机上訓練を一回やってから相談すると、課題がはっきりして進みが速いです。
- Q3. 起業したばかりで、まだ取引先が少ないのですが必要ですか?
- 必要です。むしろ今の方が整備が簡単です。 取引先が増えるほど連絡・データ・手順が増え、後から直すほど大変になります。 まずはA4一枚で十分なので、早めに型を作っておくのがおすすめです。
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