BCP SDGs ブログ 事業継続力強化計画(ジギョケイ)

せっかく作ったBCPが機能しない3つの落とし穴とは?

BCPが機能しない3つの落とし穴

BCPが機能しない3つの落とし穴

BCP ジギョケイ BCM 失敗パターン 机上訓練

Executive Summary(TL;DR 5行)

  • BCPが機能しない理由は、だいたい「連絡できない」「優先が決まってない」「代替がない」に集約されます。
  • 計画の価値は“作成”ではなく“使えるか”で決まります。
  • 小さな会社は、短いチェックと小さな訓練で一気に強くなれます。
  • まずは「机上訓練(頭の中のリハーサル)」で穴を見つけるのが最短です。
  • 今日の一手は「想定シナリオ1つで、10分だけ回す」です。

はじめに

「BCPは作った。でも、正直いざとなったら動ける気がしない」——これ、珍しくありません。 中小企業や個人事業だと、日々の仕事が優先になり、BCPやジギョケイ(事業継続力強化計画)が“置物”になりがちです。

ただ安心してください。BCPが機能しない原因は、たいてい限られています。 逆に言うと、原因が分かれば直せます。しかも、直し方は難しくありません。

本稿では、よくある失敗パターンを3つに絞って、すぐできる改善策までまとめます。 ポイントは「反省」ではなく「仕組み化」です。今日から一段だけ前に進めましょう。

1) 失敗パターンは3つに集約される

ここでまず、気持ちを軽くします。 BCPが機能しない原因は、だいたい次の3つのどれか(または組み合わせ)です。

  1. 連絡できない:誰に何を伝えるかが決まっていない/連絡先が古い
  2. 優先が決まっていない:全部を守ろうとして、結局なにも守れない
  3. 代替がない:場所・人・データが一つに依存している

逆に言えば、この3つを潰すだけで、BCPは“急に使えるもの”になります。 次から、1つずつ具体的に見ていきます。

2) 落とし穴①:連絡できない(情報が集まらない)

非常時は、まず「状況が分からない」「連絡がつかない」から始まります。 ここで止まると、次の判断が全部遅れます。

よくある状態

  • 連絡先がスマホの中だけで、電池が切れたら終わる
  • 主要顧客・外注先・協力会社の担当が変わっていて連絡がつかない
  • 「まず誰が」「誰に」連絡するかが決まっていない
  • 社内チャットが落ちた時の代替がない

すぐ直す方法(5分)

  • 連絡先を“最小10人”に絞る(多いほど見なくなります)
  • 紙 or PDFで持つ(スマホだけに依存しない)
  • 「最初に連絡する3先」を決める(主要顧客/外注先/家族など)
  • 電話が無理な時の手段を決める(LINE/メール/SMSなど)

連絡が通るだけで、非常時の不安はかなり減ります。 BCPはここから始まります。

3) 落とし穴②:優先が決まっていない(全部大事病)

非常時は、時間も人も減ります。 そこで「全部やらなきゃ」となると、判断が遅れて、結果的に全部が崩れます。

よくある状態

  • 重要業務が10個以上あって、どれから手をつけるか迷う
  • 現場ごとに「これが最優先」と言い合ってまとまらない
  • 「とりあえず通常運転」を目指して、戻れずに燃え尽きる

すぐ直す方法(コツは“言い切る”)

優先業務は、上位3つだけにしてください。
そして「何時間/何日で戻すか」を一緒に書きます。
例:受注返信は24時間以内、納品は3日以内、請求は1週間以内

優先を絞るのは、捨てることではありません。 守るものを決めるということです。 これが決まると、代替手段の準備も現実的になります。

4) 落とし穴③:代替がない(場所・人・データが単一)

BCPが機能しない最大の理由は、実はここです。 「いつも通りの場所」「いつも通りの人」「いつも通りのPC」が前提になっていると、 前提が崩れた瞬間に止まります。

よくある状態

  • データがPCの中だけ(壊れたら終わる)
  • 仕事が特定の人に集中(その人が不在で止まる)
  • オフィスに行けないと何もできない(場所依存)
  • 重要情報(契約・顧客・手順)が散らばっていて探せない

すぐ直す方法(順番が大事)

  1. 「なくなると詰むもの」トップ5を出す(顧客連絡先/請求/納品物/契約など)
  2. データの置き場を1つ決める(クラウド等)
  3. 代行できる人を1人決める(家族・共同代表・外注など)
  4. 代替場所を1つ決める(自宅・別拠点・コワーキング)

ここまでやると、BCPは“机の上の資料”ではなく、“現実に動く手順”になります。 そして、この状態を保つためにBCM(点検・見直し)が必要になります。

5) 10分でできる机上訓練(テンプレ付き)

机上訓練というと大げさに聞こえますが、やることは簡単です。 「もし今、○○が起きたら?」を、10分だけ口で回すだけです。

おすすめシナリオ(どれか1つ)

  • 停電・通信障害で、ネットが半日使えない
  • あなた(または担当者)が発熱・入院で1週間動けない
  • PCが壊れて、データにアクセスできない
  • 取引先(仕入先・外注先)が止まって、納期が守れない
  • サイバー被害で、いつものアカウントが使えない

10分机上訓練:進め方

  1. 状況確認:いま何が起きて、何が使えない?
  2. 優先業務:トップ3は何?(何を守る?)
  3. 最初の連絡:誰に、どう連絡する?(3先)
  4. 代替手段:場所・人・データはどう切り替える?
  5. 判断:今日は止める/縮小する/続ける、どれ?

訓練で出た「穴」の書き方(これがBCMの始まり)

  • 連絡先が古い → 来週までに更新する
  • 優先業務が決めきれない → 今日中にトップ3を確定する
  • データの置き場がバラバラ → 置き場を1つに統一する
  • 代行できる人がいない → 外注先候補を1社探す
  • 代替場所がない → 近場の作業場所を決めておく

机上訓練の価値は、「できた・できない」ではありません。 穴が見えることです。穴が見えたら、直せます。 そして、直したらまた回します。これがBCMです。

次回(Day4)の予告

Day4では、BCPやジギョケイを“策定しっぱなし”にしないためのBCM(回す仕組み)を、 90日で運用に乗せるロードマップとしてまとめます。 「月10分の点検」「年1回の訓練」など、続く形に落とします。

まとめ+要約

  • BCPが機能しない原因は「連絡」「優先」「代替」の3つに集約されます。
  • 連絡先は“最小”に絞り、スマホ依存を減らすと強くなります。
  • 優先業務はトップ3に絞ると、非常時の判断が速くなります。
  • 代替(場所・人・データ)を1つずつ用意すると、計画が動きます。
  • 机上訓練で穴を出し、直して回すのがBCMの第一歩です。

Next Best Action:今日10分、ひとつだけ「もし停電したら?」を口に出して回してください。

FAQ(3問)

Q1. 机上訓練って、誰とやればいいですか?
ひとりでもできます。可能なら、家族・共同代表・外注先など「非常時に関わる人」と10分だけ話すと、穴が一気に出ます。 ひとりでやる場合は、スマホのメモに「穴」を書くだけでも十分です。
Q2. 連絡先を紙で持つのは不安です(紛失など)。どうしたら?
紙は「最低限(最小10人)」に絞り、保管場所を固定しましょう。 もしくは、パスワード付きPDFにしてオフライン保存するなど、会社の方針に合わせた形にしてください。
Q3. 代替が難しい業種(現場仕事など)でも意味はありますか?
意味があります。現場仕事ほど「止める判断」「顧客への連絡」「代替日の調整」「資材の手配」など、 事務面の段取りが事業継続を左右します。まずは“連絡と判断”だけでも整えると効果が出ます。

📩 「自社のBCPの穴を10分で洗い出したい」「机上訓練の進め方を一緒にやりたい」方は、 こちらからご相談ください。業種に合わせて“最小で効く形”に整えます。

-BCP, SDGs, ブログ, 事業継続力強化計画(ジギョケイ)