
意思決定ブリーフ:高年齢労災対策を「今期の経営アクション」に落とす(反対意見FAQつき)
- 努力義務でも、経営としては「事故を減らす仕組み」を作るほど強くなります。
- 決めるべきは、完璧な制度ではなく「優先順位」と「回し方」です。
- 最初の勝ち筋は、点検(週1)+改善(月1)+教育(5分)+記録(4項目)。
- 疲れを減らす設計(休息・連絡の線引き)は、安全対策と相性が良いです。
- Next Best Action:今日、役員・現場で“今月直す1つ”を決めてください。
導入
事故は、起きた瞬間だけが問題ではありません。 休業が出れば、代わりの手配、納期の調整、現場の空気の悪化まで、連鎖が起きます。 とくに高年齢の方が要の戦力になっている会社ほど、影響は大きくなりがちです。
そこでDay5は、経営判断に必要な形にまとめた「意思決定ブリーフ」を用意します。 取締役会や社内会議で、そのまま共有できるように、短く・迷わない形にしました。
目次
Decision Brief(役員共有用)
テーマ
2026年4月からの「高年齢労働者の労災防止」努力義務化に備え、事故を減らす仕組みを今期に作る。
推奨アクション(結論)
- 点検を週1で回す(10分/場所1つ/観点3つ)
- 改善を月1で進める(今月直す“1つ”を決める)
- 教育を5分に固定(注意ではなく手順)
- 記録は4項目だけ(日付/場所/直したこと/次回)
- 混在現場は1分説明を必須化(危険3つ+立入禁止+連絡先)
主要根拠(経営としての理由)
- 人手不足の中で、高年齢の方の離脱は、現場の稼働に直撃しやすい。
- 転倒・腰痛・脚立などは、低コスト改善でも効果が出やすい(まず“回る形”を作れる)。
- 努力義務でも、事故時に「何をしていたか」の説明が必要になりやすい。
- 対策は高年齢だけでなく全員に効き、採用・定着にもプラスに働く。
財務影響(概算の考え方)
※ここでは“考え方”だけ示します。自社の数字に置き換えると、判断が早くなります。
- 事故1件の影響 ≒ 代替要員コスト + 残業/外注 + 納期調整 + 品質ロス + 管理工数
- 安全投資の回収 ≒ (減らせた事故件数)×(事故1件の影響)−(対策コスト)
リスクと対策(先に潰す)
| 想定リスク | 起きがちなこと | 対策(最小で) |
|---|---|---|
| 忙しくて続かない | 点検が“そのうち”になる | 週1・10分・場所1つに固定。カレンダーに予約。 |
| 現場の反発 | 「今さら」「面倒」と感じる | 年齢の話にせず「事故を減らす職場づくり」として全体ルール化。 |
| 属人化 | できる人だけが守る | 脚立の種類統一、置き場固定、5分教育の型で言い方を統一。 |
| 混在現場の穴 | 外注・個人がルールを知らない | 入場時1分説明(危険3つ+立入禁止+連絡先)を必須化。 |
タイムライン(最短の現実解)
- 0〜2週:方針・担当・点検シート作成
- 3〜6週:週1点検スタート+月1改善を1回回す
- 7〜10週:教育を5分の型に統一(転倒・脚立・腰痛)
- 11〜13週:記録4項目を定着(監査用ではなく改善用)
KPIと“見える化”(最小セット)
KPIは増やすほど続きません。最初は4つだけで十分です。 「数字で叱る」ためではなく、改善の当たり所を見つけるために使います。
おすすめKPI(4つだけ)
| KPI | 測り方(簡単) | 狙い |
|---|---|---|
| 週1点検の実施率 | 実施した週に○ | “回っているか”の確認 |
| 今月の改善数 | 直した「1つ」を記録 | 行動を止めない |
| ヒヤリ件数 | 月1で合計(増えてOK) | 報告が出る文化づくり |
| 5分教育の実施回数 | 実施日に○ | 属人化を減らす |
報告が出るようになった証拠です。減らすのは、改善が回ってからで十分です。
会議で揉めない進め方(合意形成の型)
安全は「正しい」だけでは通りません。 そこで、短い会議でも合意が取りやすい進め方を用意します。
15分会議の型(役員+現場)
- 先月の事故/ヒヤリ(1分)
- 今月直す「1つ」(5分で決める)
- 5分教育のテーマ(転倒/脚立/腰痛から1つ)
- 混在現場の「危険3つ」を更新するか(1分)
- 次回日程を固定(1分)
決める言葉(ブレないための一文)
「私たちは、注意力に頼らず、仕組みで事故を減らす。
今月は、ここ(場所)を、これ(改善)で直す。」
この一文を固定すると、議論が“現場の行動”に戻ります。
反対意見への先回り(FAQ)
Q1. 努力義務なら、後回しでもいいのでは?
後回しにすると、事故の芽が育ちます。努力義務でも、事故が起きたときに「何をしていたか」は残ります。 まずは“回る形”を作るだけで十分です。週1点検(10分)から始めれば、負担は小さく、効果は積み上がります。
Q2. お金がない。設備投資は厳しい。
最初は低コスト改善で十分です。通路の片付け、段差の見える化、照明の追加、脚立の統一、台車の位置変更など、 数千円〜で事故が減るポイントは多いです。大きな投資は「点検で当たり所が見えてから」でOKです。
Q3. 「高年齢に配慮」と言うと、気まずい。
年齢の話にせず、「転倒・腰痛を減らす職場づくり」として全体ルールにしてください。 結果的に高年齢の方が助かり、若手も助かります。誰かを特別扱いする話にしないのがコツです。
Q4. 忙しくて点検の時間が取れない。
だから「週1・10分・場所1つ」です。全部やろうとすると続きません。 カレンダーに予約して、やる量を固定してください。続く形こそ正解です。
Q5. 外注・フリーランスが多い現場は、どこを優先すべき?
まずは「入場時1分説明(危険3つ+立入禁止+連絡先)」です。 雇用形態より、現場で起きる事故を減らすことが先です。紙1枚と口頭30秒で、穴が一気に塞がります。
まとめ/次の一手
- 努力義務でも、経営としては「事故を減らす仕組み」を今期に作る価値があります。
- 勝ち筋は、週1点検+月1改善+5分教育+4項目記録。
- 混在現場は、入場時1分説明が最優先(危険3つ+立入禁止+連絡先)。
- 疲れを減らす設計(休息・連絡の線引き)は、安全対策に直結します。
- ストレスチェック等の関連テーマも、早めに“受け皿”を作ると安心です。
Next Best Action:今日、役員・現場で「今月直す1つ」を決め、点検担当と次回日程を固定してください。
相談
📩 「うちの現場だと、どこから直すのが一番効く?」を短時間で整理したい方は、
こちらからご相談ください。
週1点検シート(場所・観点・写真の撮り方)まで落として、90日で回る形に一緒に整えます。
※業種・人数・作業内容(脚立/重量物/通路・段差の状況)だけ分かれば、初回整理は可能です。