
Day3:フリーランスが自分の身を守る「労災・保障」の基本
Executive Summary(TL;DR 5行)
- フリーランスは「休業補償」「退職金」がなく、ケガや病気に弱い働き方です。
- 仕事中のケガには、労災保険の特別加入など、公的な仕組みで守れる部分があります。
- 一方で、「働けないあいだの生活費」を補うには、民間の所得補償保険などが重要になります。
- まずは「もし3か月働けなくなったら?」を前提に、生活費と既存の保障を棚卸しすることが第一歩です。
- 完璧を目指すより、「一番困るところから一つずつふさぐ」考え方で、ムリなく備えを進めましょう。
はじめに
Day2では、フリーランスを受け入れる企業側の「安全配慮の最低ライン」を整理しました。一方で、どれだけ企業が配慮してくれても、「自分の生活を守る最後の砦」はフリーランス自身の備えです。仕事中のケガや、長引く病気で働けなくなったとき、どこまでが公的な制度で守られ、どこからが自分で準備すべき部分なのかは、意外とイメージしづらいものです。そこで本記事では、難しい専門用語をできるだけ避けながら、「公的な仕組み」と「民間の保障」を整理し、今日からできる5つのステップに落とし込みます。読み終えたあとには、「とりあえずここだけは押さえておこう」と思えるポイントが、一つは見つかるはずです。
目次
- フリーランスはなぜ「ケガ・病気」に弱い働き方なのか
- もし3か月働けなくなったら何が起きる?をイメージする
- 公的な仕組みで守れるところ(労災特別加入など)
- 民間の保障でカバーしたいところ(所得補償・傷害保険など)
- 今日からできる自己防衛5ステップ
フリーランスはなぜ「ケガ・病気」に弱い働き方なのか
フリーランスや個人事業主は、時間や場所の自由がある一方で、ケガや病気に対しては会社員より弱い立場にあります。
- 会社員のような「有給休暇」が基本的にない
- 休んでも給料は出ず、「収入=働いた分」になりやすい
- 会社が入ってくれる健康保険・厚生年金・団体保険などがない場合が多い
- 代わりに仕事をしてくれる「同僚」がいないので、止まると全部止まる
だからこそ、「元気で働けているとき」に、最悪のケースを軽くでもイメージしておくことが、将来の自分を助けます。
もし3か月働けなくなったら何が起きる?をイメージする
いきなり保険や制度の話に入る前に、「自分にとって何が一番困るのか」をはっきりさせておきましょう。
1. 毎月、最低限かかるお金を書き出す
ざっくりで構わないので、次のような項目を紙やメモアプリに書き出します。
- 家賃・住宅ローン
- 食費・光熱費・通信費
- 子どもの教育費や家族への仕送り
- 事業の固定費(サブスク、オフィス費用、リース料など)
- 社会保険料・税金の見込み分
2. 「収入ゼロの3か月」でどこまで耐えられるか考える
貯金や家族からの支援などを含めて、「今の状態で、どれくらいの期間なら収入がなくても耐えられそうか」を考えてみます。
このとき、「なんとかなるだろう」ではなく、「数字でおおまかに見える化する」のがポイントです。
3. 一番守りたいものは何かを決める
すべてを完璧に守るのは難しいからこそ、優先順位をつけます。
- まずは「家賃・住宅ローン」だけは守りたい
- 子どもの教育だけは止めたくない
- 事業の固定費が払えなくなると再起が難しい…など
この「守りたいもの」がはっきりすると、公的制度や保険を選ぶときの軸がぶれにくくなります。
公的な仕組みで守れるところ(労災特別加入など)
ここから、「制度としてどこまで守られているのか」を整理します。まずは公的な仕組みです。
1. 労災保険の特別加入(仕事中のケガ・病気)
通常、労災保険は「会社に雇われている労働者」を守る制度です。ただし、一定の条件を満たす個人事業主や一人親方などは、「特別加入」という仕組みを使って、自分で労災保険に入ることができます。
労災保険の特別加入でカバーされるのは、ざっくり言うと次のような場面です。
- 仕事中のケガや、業務が原因で起きた病気の治療費
- ケガや病気で働けないあいだの、一定の休業補償
- 後遺障害が残ってしまった場合の補償
- 万が一の死亡時に、遺族に支払われる補償
ただし、どんなフリーランスでも入れるわけではなく、業種や働き方によって対象かどうかが変わります。また、多くの場合は「特別加入団体」を通じて手続きする必要があります。詳細は、厚生労働省の情報や所属業界の団体・専門家に確認してください。
2. 健康保険(国民健康保険など)で守られる部分
日本に住む多くの人は、会社員なら「協会けんぽや組合健保」、フリーランスなら「国民健康保険」に加入しています。これらは、仕事中かどうかに関わらず、病気やケガの治療費の一部を公的に負担してくれる仕組みです。
ただし重要なのは、「治療費はある程度守られる一方で、『働けないあいだの生活費』まではカバーされないことが多い」という点です。ここが、公的な仕組みだけでは足りない部分になりやすいところです。
3. 年金・遺族年金などの長期的な守り
重い障害が残った場合や、家族を残して亡くなった場合には、国民年金や厚生年金の仕組みの中で、障害年金・遺族年金などが支給されるケースがあります。金額や受け取れる条件は人によって大きく異なるため、ここでは詳細には踏み込みませんが、「長期的な下支えとして存在する」ことだけは頭に入れておく価値があります。
一方で、「数か月〜1年程度の休業による収入ダウン」を埋めるには、公的な仕組みだけでは足りないことが多く、次に見るような「民間の保障」が重要になります。
民間の保障でカバーしたいところ(所得補償・傷害保険など)
公的な仕組みの「足りないところ」を埋めるために、多くのフリーランスが検討しているのが、民間の保険や共済です。ここでは、代表的な種類と考え方を整理します。
1. 所得補償保険・就業不能保険
病気やケガで働けなくなったときに、「一定期間、毎月○万円」といった形で収入を補うタイプの保険です。保険会社によって名称はさまざまですが、ポイントは次のような点です。
- どんな状態になったら支払われるのか(入院のみ/自宅療養も含むなど)
- 支払いが始まるまでの待ち期間(●日以上働けなかった場合など)
- 支払われる期間(半年・1年・最長何年までか)
- 「仕事がなくなった」だけでは対象外で、「病気やケガ」が原因であることが条件のことが多い
月々の保険料を抑えたい場合は、「長期の入院や重い就業不能」のような、本当に困る場面に絞って備えるという考え方もあります。
2. 傷害保険(ケガを広くカバーするタイプ)
仕事中・プライベートを問わず、事故によるケガを幅広くカバーする「傷害保険」と呼ばれるタイプもあります。こちらは、死亡・後遺障害に対する大きな補償や、入院・通院1日あたりの給付などがセットになっていることが多いです。
商品によって、「仕事中のケガが対象になるか」「危険度の高い仕事は保険料が高くなるか・加入できるか」が異なりますので、自分の仕事内容を伝えたうえで確認することが大切です。
3. 団体保険・プラットフォーム付帯の保障
最近では、フリーランス協会や業界団体、仕事マッチングのプラットフォームなどが、会員向けに団体保険や独自の補償を用意しているケースも増えています。
- 年会費や手数料の中に、一定の補償が含まれている
- 個人で入るより、保険料の負担が抑えられる場合がある
- 仕事中の賠償責任(お客様のものを壊した等)をカバーするものもある
すでに所属しているコミュニティや団体がある場合は、「どんな保障が付いているのか」「追加で入れるプランがあるか」を一度確認してみる価値があります。
今日からできる自己防衛5ステップ
ここまで見てきた内容を、「今日からできる行動」に落とし込んでみます。一度に全部やる必要はありません。できそうなところから一つ選んでみてください。
ステップ1:収入と固定費を1枚にまとめる
直近3か月くらいの売上の平均と、毎月の固定費(家計+事業)を1枚のメモにまとめます。まずは「自分の足元」を数字で把握することがスタートラインです。
ステップ2:「3か月働けない」前提で不足額をざっくり計算
現在の貯金や、家族からのサポート見込みなどをざっくり考え、「3か月収入ゼロになった場合、いくら足りなさそうか」を書き出します。完璧な計算でなくて構いません。
ステップ3:すでに入っている公的・民間の保障を棚卸し
次のような項目を、保険証や契約書を見ながら書き出します。
- 加入している健康保険の種類(国民健康保険・協会けんぽなど)
- 労災保険の特別加入の有無(加入団体名など)
- 生命保険・医療保険・傷害保険・所得補償保険などの有無
- フリーランス協会や団体の会員特典(補償の有無)
「よくわからない保険に入っていたけれど、実はこれでかなり守られていた」というケースもあれば、その逆もあります。一度、内容を見直してみるだけでも価値があります。
ステップ4:「一番困る穴」を一つだけ決める
棚卸しをすると、「ここがスカスカだな」という部分が見えてきます。
- 仕事中の大きなケガ(高所作業・移動が多いなど)
- 長期間の就業不能(メンタル不調・慢性疾患など)
- 家族の生活費や住宅ローン など
その中から、「今の自分にとって一番困るもの」を一つだけ選びます。ここが、最初に埋めたい「穴」です。
ステップ5:小さくでいいので、一歩踏み出す
最後に、その「穴」を少しでも小さくする選択肢を一つだけ実行します。
- 労災保険の特別加入について、業界団体や専門家に相談してみる
- 現在加入している保険の担当者に、「フリーランスとしてのリスク」を前提に見直しを依頼する
- フリーランス協会や団体に加入し、どんな補償があるか確認する
- まずは毎月○円だけでも、「休業用の貯金」口座をつくる
大事なのは、「何もしていない状態」を卒業することです。小さな一歩でも、次の行動につながるきっかけになります。
まとめ+Next Best Action
要点(5つ)
- フリーランスは、ケガや病気で働けなくなったときの「収入ストップ」に対して弱い働き方である。
- 公的な仕組み(健康保険や労災保険の特別加入など)で守れる部分と、守れない部分を切り分けて考えることが大切。
- 「働けないあいだの生活費」を補うには、所得補償保険や傷害保険、団体保険など民間の保障が重要な役割を果たす。
- まずは「3か月働けない」前提で、生活費・事業費・既存の保障を見える化し、「一番困る穴」を一つだけ決める。
- 完璧を目指すより、小さな一歩(相談・見直し・貯金づくり)を踏み出すことが、将来の自分を一番助ける。
Next Best Action(次の一手)
今日このあと10分だけ時間をとって、「直近3か月の平均売上」と「毎月の固定費」をメモに書き出してみてください。その紙が、労災・保障の備えを考えるための「マイ台帳」の第一ページになります。
FAQ(よくある質問)
Q1. 収入が不安定なので、保険料を払えるか心配です。それでも入ったほうが良いのでしょうか?
A. 無理な保険料で生活が苦しくなっては本末転倒です。まずは「貯金+公的な仕組み」でどこまで耐えられそうかを把握し、そのうえで「本当に困る場面」に絞って、少額から備えるのがおすすめです。たとえば、保険金額を抑えたり、対象を大きなケガや長期の就業不能に限定したりすることで、保険料を下げる工夫も考えられます。
Q2. フリーランスになったばかりで、どの制度に入れるのかもよくわかりません。何から確認すれば良いですか?
A. まずは「今入っているもの」を確認するのが近道です。健康保険の種類(国民健康保険かどうか)、以前から入っている生命・医療・傷害保険の内容、加入している団体や協会の補償などを洗い出しましょう。そのうえで、「仕事中のケガ」「長期の就業不能」「家族の生活」のどこが弱いかを見て、必要に応じて労災特別加入や所得補償保険などを検討する流れがおすすめです。
Q3. これまで大きなケガや病気もなく、「保険に入っても結局使わないのでは?」と感じてしまいます。
A. その感覚はとても自然です。ただ、保険は「よく使うもの」ではなく、「滅多に起きないけれど、起きたら人生が大きく揺らぐ出来事」に備える道具です。自分でカバーできる範囲(貯金など)を超える部分だけを保険でカバーする、と考えると、納得感が持ちやすくなります。それでも迷う場合は、まずは小さな金額から始め、定期的に見直していく方法もあります。
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公的制度と民間の保障を切り分けながら、「やりすぎない・足りなさすぎない」ラインを一緒に考えていきましょう。
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