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年末調整で慌てないための通勤手当改正対応チェックリスト

年末調整で慌てないための通勤手当改正対応チェックリスト

年末調整で慌てないための通勤手当改正対応チェックリスト

Executive Summary(要点まとめ)

  • 4月以降に支給したマイカー通勤手当は、新しい非課税限度額を前提に年末調整で精算が必要になる場合があります。
  • まずは、4月以降の通勤手当データを「対象者・距離・月額」で一覧化することが出発点です。
  • 次に、旧限度額と新限度額の差額を把握し、源泉徴収簿上で非課税となる部分と課税される部分を整理します。
  • 年の途中で退職した人については、確定申告や源泉徴収票の再交付が必要になるケースがあるため、早めの案内が重要です。
  • 給与計算ソフトの対応状況や顧問税理士との連携も含め、社内の役割分担を決めておくと、年末の混乱を抑えられます。

Day1で見たとおり、今回の通勤手当の改正は「2025年4月に遡って適用」「年末調整で精算」という点が特徴であり、年末ギリギリに気づくと経理担当者にとって大きな負担になります。本稿では、中小企業が現実的に対応できるように、「何から手をつけるか」「どこまでやれば最低限安心か」をチェックリスト形式で整理します。 国税庁のリーフレットやQ&Aに沿って、4月以降の通勤手当データの洗い出し、年末調整での計算の流れ、源泉徴収簿・源泉徴収票の扱い、退職者への対応までのステップを順番に確認していきます。この記事を読みながら自社の状況に当てはめていただくことで、「今年やるべきこと」と「来年以降のルール整備」を切り分け、実務負荷を抑えつつ、税務リスクを避けることを目指します。

1. 対応の全体像:今年やること・来年以降やること

まず、「今年の年末調整までにやること」と「来年以降の運用として整えること」を分けて考えると整理しやすくなります。

今年(2025年分)の年末調整でやること

  • 4月以降に支給したマイカー通勤手当について、旧限度額と新限度額を比較し、「新たに非課税となる部分」があるか確認する。
  • 新たに非課税となる金額がある場合、その分について源泉徴収税額を年末調整で精算し、税金を還付する。
  • 年途中退職者など、年末調整で精算できない人への対応を確認する(確定申告や源泉徴収票の再交付など)。

来年以降の運用として整えること

  • 通勤手当の申請書や就業規則・賃金規程の文言を、新しい限度額を前提とした内容にアップデートする。
  • 給与計算システムのマスタ設定を見直し、「距離区分ごとに自動で新限度額を適用できるか」を確認する。
  • 毎年の年末調整のチェックリストに「通勤手当の非課税限度額の確認」を組み込む。

2. ステップ1:4月以降の通勤手当データを洗い出す

最初の作業は、対象となる通勤手当をきちんと把握することです。

  1. マイカー通勤者の抽出
    • 人事マスタや通勤届から、自動車・バイク・自転車で通勤している従業員をリストアップします(電車・バスのみの人は今回の精算対象外)。
  2. 2025年4月以降分の通勤手当一覧の作成
    • 社員ごとに、4〜12月(または最新月まで)の「片道距離」「月額通勤手当」「支払日」を一覧にします。
  3. 「旧限度額超過」のチェック
    • 国税庁リーフレットの距離区分ごとの旧限度額と比較し、「旧限度額を超えて支給している人」がいるか確認します。
    • 特に10km以上の区分は対象者が多くなりがちなので、重点的にチェックします。

3. ステップ2:年末調整での精算手順のイメージ

次に、国税庁の資料に沿った年末調整での精算の流れをイメージしておきます。

  1. 「新たに非課税となる金額」の計算
    • 4月以降の各月について「新限度額 − 旧限度額」を求め、その範囲内で支給額がある場合、その部分が「新たに非課税となる通勤手当」となります。
  2. 源泉徴収簿への記載
    • 源泉徴収簿の「非課税となる通勤手当」の欄に、新たに非課税となる金額を反映し、課税対象となる給与等の金額を修正します。
  3. 年末調整での税額計算
    • 修正後の「課税対象給与額」を用いて、所得税・復興特別所得税の年税額を再計算し、4月以降に過大に源泉徴収していた税額があれば還付します。
  4. 源泉徴収票への反映
    • 源泉徴収票の「支払金額」欄には、非課税部分を除いた後の給与等の金額を記載します。
    • 年途中退職者には、修正後の源泉徴収票を「再交付」として渡す必要がある場合があります。

ここはどうしても細かい話になるため、顧問税理士や給与計算ソフトのマニュアルとセットで確認する前提で、社内では「大まかな流れだけ共有する」くらいでも十分です。

4. ステップ3:給与計算システムと社内ルールの見直し

年末調整の対応とあわせて、来年以降の運用負担を減らすために、次の点を見直しておくと安心です。

給与計算システム

  • 通勤手当のマスタに、新しい距離区分と限度額を設定できるか確認します。
  • 「距離区分」「支給額」「非課税額」の紐づけを自動化できれば、毎月のチェック負担が大きく減ります。

就業規則・賃金規程

  • 通勤手当の条文で、旧限度額を前提にした金額が明記されていないか確認します。
  • 「法令上の非課税限度額の範囲内で支給する」といった書きぶりに整理しておくと、今後の制度変更にも対応しやすくなります。

社内申請書・通勤届

  • 片道距離の確認、交通手段の記載欄が十分かをチェックします。
  • 在宅勤務やサテライトオフィスが増えている場合、通勤経路の変更申請のルールも合わせて整理しておくとよいでしょう。

5. ステップ4:退職者・従業員への説明とフォロー

最後に、コミュニケーション面の対応です。

年途中退職者への対応

  • 4月以降にマイカー通勤手当を受け取り、すでに退職している人については、年末調整で精算できないため、本人の確定申告で税金を精算することになります。
  • 必要に応じて「通勤手当の非課税限度額が改正されたため、確定申告で税金が戻る可能性がある」旨をお知らせし、源泉徴収票を再交付します。

在職従業員への案内

  • 年末調整前の社内案内や説明会で、「マイカー通勤者については、今年の年末調整で通勤手当の税金を精算する場合がある」と一言触れておきます。
  • 還付がある場合は、12月や1月の給与明細上でわかるようにしておくと、問い合わせが減ります。

窓口の明確化

  • 税金に関する詳細な質問は顧問税理士へ、通勤経路の申請や変更は総務へ、というように、社内の問い合わせ窓口も明示しておくと安心です。

まとめと次の一手(Next Best Action)

この記事のまとめ(5点)

  • 今年の年末調整では、4月以降に支給したマイカー通勤手当について、新しい非課税限度額を前提に税額の精算が必要になる場合があります。
  • まずは、マイカー通勤者の4月以降の通勤手当を「距離・月額・支払日」で一覧化し、旧限度額超過者を把握することが出発点です。
  • 新たに非課税となる通勤手当の金額は、源泉徴収簿・源泉徴収票に反映し、年末調整で税額を再計算します。
  • 年途中退職者については、確定申告や源泉徴収票の再交付が必要になる可能性があるため、早めに整理しておくことが重要です。
  • 給与計算システムや社内規程の見直しをあわせて行うことで、来年以降の運用負担と税務リスクを抑えられます。

Next Best Action(次の一手)
顧問税理士または給与計算ソフトのサポート窓口に、「通勤手当改正への対応メニュー」を確認し、自社でやる範囲と外部に任せる範囲を今日のうちに決めてください。

FAQ(よくある質問)

Q1. 年末調整までに時間が足りなそうな場合、どうすればよいですか?

A. まずは対象となる人数と金額の規模感をつかみ、影響が大きい社員から優先的に対応する考え方もあります。どうしても年末調整で処理しきれない場合は、顧問税理士と相談のうえ、確定申告での調整を案内する選択肢も検討してください。

Q2. 小さな会社で、マイカー通勤者が1〜2人しかいません。それでも対応が必要ですか?

A. 対象者が少なくても、法令上は同じルールが適用されます。影響額が小さい場合でも、通勤手当の支給や税の扱いは社員にとってわかりやすく、公平であることが大切です。対象者が少ない分、個別に丁寧に説明しやすいとも言えます。

Q3. 給与計算ソフトが改正に対応していないようです。手作業でも対応できますか?

A. 対象者や月数が少なければ、Excelなどで「旧限度額」「新限度額」「差額」を計算し、源泉徴収簿を手書きで修正する運用も現実的です。ただし計算ミスのリスクもあるため、可能であればソフトのアップデート情報やサポートを確認し、顧問税理士にもチェックしてもらうと安心です。

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