
中小企業経営者の皆さまへ。
2025年4月1日から、高年齢雇用継続給付の支給率上限が従来の15%から最大10%へと引き下げられます。
本記事では、改定内容のポイントを押さえたうえで、どのように自社の賃金設計や手続き対応を進めるべきかを具体的に考察します。
目次
1. 制度改定の背景と狙い
高年齢雇用継続給付は、60歳以降に賃金が75%未満に低下した被保険者の就業意欲を支える制度です。
令和7年(2025年)4月以降に60歳を迎える方については、支給率の上限が15%から10%に引き下げられ、雇用保険財政の持続可能性を高めることが目的とされています。
2. 支給率改定の詳細
2-1. 支給率一覧表(2025年4月以降)
賃金低下率 (支給対象月の賃金÷賃金月額×100) | 支給率 |
---|---|
75.00%以上 | 0.00% |
74.50% | 0.39% |
74.00% | 0.79% |
73.50% | 1.19% |
73.00% | 1.59% |
72.50% | 2.01% |
72.00% | 2.42% |
71.50% | 2.85% |
71.00% | 3.28% |
70.50% | 3.71% |
70.00% | 4.16% |
69.50% | 4.60% |
69.00% | 5.06% |
68.50% | 5.52% |
68.00% | 5.99% |
67.50% | 6.46% |
67.00% | 6.95% |
66.50% | 7.44% |
66.00% | 7.93% |
65.50% | 8.44% |
65.00% | 8.95% |
64.50% | 9.47% |
64.00%以下 | 10.00% |
※2025年4月以降、支給率上限は10%。自社の給与体系と照らし合わせ、どの層がどの程度の支援を受けるか把握が必須です。
2-2. 支給額の計算方法
「支給対象月の実際賃金」×「支給率」で算出。
64%以下は一律10%、64~75%未満は表中の数値を適用。
支給率は小数点第3位四捨五入、支給額は小数点以下切り捨てとなります。
3. 受給要件と留意点
- 60歳以上65歳未満の一般被保険者であること
- 被保険者期間が通算5年以上あること
- 60歳到達時賃金が75%未満に低下していること
- 初回申請は対象月の翌月から4か月以内、以後は2か月ごとに申請
※支給限度額は376,750円、最低支給額2,295円未満は支給対象外。
4. 中小企業が考えるべき対応
- 賃金シミュレーションの実施
どの社員が対象になるか、年齢・職務・賃金シナリオごとに試算し、予算と人件費への影響を把握します。 - 社内手続きフローの整備
賃金証明書の発行体制や受給資格確認票の管理ルールを確立し、申請漏れを防止。 - 就業規則・契約書の見直し
継続雇用時の賃金設定や評価制度を再検討し、給与低下によるモチベーション低下を抑制。 - 人事・管理職向け研修
制度の改定ポイントと手続き要件を周知し、運用面での混乱を防ぎます。
5. まとめ:今すぐ確認し、行動に移すべき項目
1. 自社の高年齢社員に対し、改定後の支給率を適用して賃金シミュレーション
2. 社内申請フローと必要書類の棚卸し
3. 就業規則・契約書の改定検討
4. 担当者への制度周知・研修実施
支給率引き下げはコスト削減の一方、社員の定着・モチベーションに影響します。
中小企業経営者として、制度改定を機に自社の高年齢雇用戦略を再構築し、働き続けやすい仕組みを整えることが急務です。