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2026年4月「高年齢労働者の労災防止」努力義務化に備える:経営者が最初にやること

2026年4月「高年齢労働者の労災防止」努力義務化に備える:経営者が最初にやること

2026年4月「高年齢労働者の労災防止」努力義務化に備える:経営者が最初にやること

Executive Summary(TL;DR)

  • 2026年4月1日から、高年齢労働者の労災防止に必要な措置が「努力義務」になります。
  • 罰則の有無よりも、「事故が起きにくい職場にしていたか」が後から問われやすいテーマです。
  • 国は、事業者が取るべき内容を指針として示す方向で検討が進んでいます。
  • 最初は「危ない場面の洗い出し → 小さく直す → 伝え方をそろえる」の順で十分です。
  • 同じ現場にフリーランス等が入る形も増えるため、ルール共有まで含めて備えると強いです。

いま、なぜこの話が重要なのか

人手不足の中で、60歳以上の方が現場の中心戦力になっている会社は珍しくありません。 一方で、60歳以上の労災は増える傾向にあり、休業が長くなりやすいことも課題として整理されています。 つまり「大事な戦力ほど、ケガで抜けると会社が止まる」状況が起きやすい、ということです。

そこで、2026年4月1日から「高年齢労働者の特性に配慮した労災防止の措置」を 事業者が行うことが努力義務になります。 これは、現場に合わせて対策を積み上げていくことを求める流れです。

このDay1では、難しい言葉を避けつつ、経営者が最初に押さえるべき「変化のポイント」と 「最小の始め方」を整理します。読むだけで、今日から動ける状態を目指します。

1. 何がいつから変わる?

2026年4月1日から、事業者は高年齢労働者の労災を防ぐために必要な措置を講ずるよう努めることになります。 そして、その措置の内容について国が指針を示す形で整備が進められています。

大事なのは、「立派な制度や書類」を先に作ることではありません。 まずは現場の危ないところを減らして、同じ事故を繰り返さない形にすること。 それが結果的に、指針に沿った動きになります。

※「努力義務」は、やらなくてよいという意味ではありません。 事故が起きたときに「どんな配慮や対策をしていたか」が見られやすいテーマです。

2. なぜ高年齢の労災が焦点になる?

厚生労働省の整理では、60歳以上の方は就業者に占める割合よりも、労災に占める割合が高い状況が示されています。 さらに、休業に入ると日数が長くなる傾向もあるとされています。

会社の目線で言い換えると、次の2つが同時に起こりやすい、ということです。

  • 事故が起きると、代替要員が見つからず、現場が回りにくい
  • 復帰まで時間がかかり、繁忙期や引継ぎに影響が出やすい

だからこそ、対策は「気合」ではなく仕組みに落としたほうが、会社も本人も守れます。

3. まずやる「3つ」だけ(これでスタートできます)

(1)危ない場面を3つ書き出す(10〜20分)

いきなり全部は無理です。まずは「事故の入口」になりやすい場面を3つに絞って書き出します。

  • 段差・階段・出入口(つまずき)
  • 濡れ床・油・粉・雨の日の動線(すべり)
  • 脚立・踏み台・高所・荷台(転落)
  • 重い物・中腰・ひねり(腰痛)
  • 暗い場所・見えにくい表示(見落とし)

(2)小さく直す(今週できる改善を先に)

「大きな設備投資」より先に、数千円〜で変わるところを潰すだけでも事故は減ります。

  • 照明を足す(影で段差が消える場所が狙い目)
  • 段差に見やすい目印を付ける(テープ・表示)
  • 滑りやすい床に対策(マット・清掃ルール)
  • 手すり・つかむ場所を作る(階段・段差付近)
  • 脚立の種類をそろえる/置き場を決める

(3)伝え方をそろえる(「注意」ではなく「手順」)

「気をつけてね」は、人によって解釈が違います。 事故が減るのは、次のように行動まで言い切る伝え方です。

  • × 注意して運んで → ○ 「台車で運ぶ」「重いときは2人」
  • × 足元気をつけて → ○ 「この線の内側を通る」「ここは手すりを持つ」
  • × 無理しないで → ○ 「10分ごとに一度伸ばす」「痛みが出たら止めて報告」

ここまでできたら、Day2で扱う「指針(案)の考え方」に自然と近づきます。

5. まとめ/次の一手

  • 2026年4月1日から、高年齢労働者の労災防止措置が努力義務になります。
  • 最初は「危ない場面の洗い出し → 小さく直す → 伝え方をそろえる」で十分です。
  • 同じ現場にフリーランス等が入る場合も、ルール共有が重要です。
  • 休む時間(勤務間インターバル)や、勤務時間外の連絡ルールは安全対策と相性が良いです。
  • ストレスチェックは小規模も義務化の方向(施行日は準備期間あり)なので、今から段取りが安心です。

Next Best Action:今週中に「転倒」「脚立」「腰痛」につながる場面を3つ書き出して、現場を一周してみてください。

FAQ

Q1. 努力義務なら、やらなくても問題ないですか?

「やらなくてよい」という意味ではありません。事故が起きたときに、会社がどんな配慮や対策をしていたかは見られやすいです。 まずは小さく始めて、点検・改善・教育の記録を残すのが現実的です。

Q2. 安全担当がいません。小さな会社でもできますか?

できます。専任が難しければ「経営者のひと言(方針)+現場のリーダー1人」で回せます。 Day4で、90日で形にする最小体制(役割分担の例)を出します。

Q3. フリーランスや一人親方が出入りする現場でも関係ありますか?

関係があります。労働者と同じ場所で働く個人事業者等の安全衛生対策を進める改正の流れがあり、 現場では雇用形態に関係なく「事故が起きないルール共有」が大切です。 入場時に「危険ポイント3つだけ」説明するところから始めるのがおすすめです。

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