
意思決定ブリーフ:雇用確保の義務化にどう決めるか
Executive Summary(TL;DR 5行)
- 選ぶべきは「3択」のどれか
- 定年65強制ではない
- 反対はコストと現場負担が中心
- 対策は“役割×時間”で吸収
- 決めたら規程→面談→周知へ
はじめに
経営の悩みは「制度を守る」よりも、「会社が続く形にする」ことです。 雇用確保の義務化を前に、定年廃止・定年引上げ・希望者全員の継続雇用のどれを選ぶかは、 会社の体力と人材戦略で変わります。
ここでは、取締役会や経営会議でそのまま使える形で、決める要点と反対意見への回答を整理します。 目的は、議論を長引かせず「決めて動く」ことです。
※この記事は一般的な情報提供であり、個別の判断は状況により変わります。必要に応じて労務の専門家や公的窓口へご相談ください。
1. 3つの選択肢の決め方
まず前提として、選ぶべきは「3択」です。 どれが正しいというより、自社の体力・人材・仕事の性質に合うものを選ぶのが正解です。
選択肢① 定年制の廃止
- 向いている会社:人手不足が深刻/専門性の高い仕事が多い/年齢より役割で見たい
- メリット:年齢で区切らないので採用・定着のメッセージが強い
- 注意点:評価・賃金の設計が弱いと「ずっと同じ人が残る」不安が出る
選択肢② 定年を65歳まで引き上げ
- 向いている会社:制度をシンプルにしたい/評価・賃金設計を見直す余力がある
- メリット:制度説明が簡単で、現場も理解しやすい
- 注意点:賃金テーブルや役割設計の見直しが必要になりやすい
選択肢③ 希望者全員の継続雇用(再雇用)
- 向いている会社:中小企業で現実的に進めやすい/段階的に整えたい
- メリット:役割と時間を調整しながら、無理のない形にしやすい
- 注意点:条件が曖昧だと揉めやすい(給与・仕事・更新)
決め方のシンプルな基準(迷ったらこれ)
- 仕事が属人化している → 継続雇用を前提に、引継ぎ・指導の役割を作る
- 制度を一本化したい → 定年引上げ(ただし評価・賃金の見直しはセット)
- 年齢で区切る意味が薄い → 定年廃止(役割で設計)
そして、どの選択肢でも共通して効くのが「役割×時間」の考え方です。 これがあると、反対意見の多くを“設計”で吸収できます。
2. 反対意見への先回り回答
反対①「人件費が増える」
人件費の議論は避けられません。ただ、ここで雑に「一律カット」へ寄せると、揉め事が増えます。 先回りの答えはシンプルです。
- 給与は「役割×時間」で設計する(フル戦力だけが前提ではない)
- 指導役・引継ぎ役など、価値の出し方を変える
- 短時間・週3〜4などの選択肢で、会社の体力に合わせる
“雇うか・雇わないか”の二択にすると、結論が極端になります。 “どう雇うか”の設計に変えると、打ち手が増えます。
反対②「若手が育たない」
これもよく出ます。ただし、現実にはベテランがいることで若手が育つケースも多いです。 問題は「ベテランがずっと前線に立ち続ける」設計になっていることです。
- 指導役を「役割」として明確化し、育成や引継ぎを評価する
- 若手が責任を持つ場を残す(“任せる領域”を設計する)
- 属人化を減らす(手順化・マニュアル化を役割に入れる)
反対③「更新のたびに揉める」
揉める原因は、更新の基準が見えないことです。 本人だけでなく、周囲も「次は自分かも」と感じると、職場全体が不安になります。
- 65歳までは原則更新(健康や重大な問題がない限り継続)
- 更新しない場合は理由を説明できる形にする(記録も残す)
- 評価は役割に合わせる(成果だけでなく育成・引継ぎも見る)
更新設計が整っていると、面談も「詰める場」ではなく「すり合わせの場」になります。 これだけで揉め事は大きく減ります。
反対④「現場が回らない(手間が増える)」
現場が嫌がるのは、制度そのものより「手間が増えるのに、説明がない」状態です。 先回りの答えは、次の2つです。
- 面談シートを用意し、話す内容を定型化する(属人化をなくす)
- 小さく始め、1回だけ見直す(最初から完璧を目指さない)
3. 今日からの実行手順(決めたら一気に動く)
決めた後の失敗は、「結論だけ出て、現場が動けない」ことです。 実行は、次の順番にするとブレにくいです。
- 就業規則の条文確認(定年・継続雇用の部分)
- 条件の軸を決める(役割×時間)
- 面談シートを作る(希望・提示・合意の記録)
- 対象者と面談する(個別条件をすり合わせる)
- 社内へ周知する(方針→個別→全体の順)
この順番は、「誤解の発生」を最小化するためのものです。 個別条件だけが先に出ると反発が強くなるので、まず方針(軸)を共有し、その上で個別を詰めます。
まとめ+要約
- 雇用確保は3択。自社の体力と人材戦略に合うものを選びます。
- 反対意見の多くは「役割×時間」の設計で吸収できます。
- 揉めやすいのは給与・仕事・更新。最初に“軸”を作るのが近道です。
- 決めたら、規程→条件→面談→周知の順で一気に動かします。
- 次の一手は「仮決め」と「反対されそうな点の言語化」です。
FAQ(3問)
Q1. 「3択」のどれを選んでも、結局はコスト増になりませんか?
A. コストの議論は避けられませんが、「一律に増える」わけではありません。 役割×時間で設計すれば、会社の体力に合わせて働き方を調整できます。 また、引継ぎ・育成・品質安定といった価値を仕事として組み込むと、支払う理由が明確になります。
Q2. 役割×時間を作っても、現場が納得しないときは?
A. まずは“方針”を言葉にして共有し、個別条件は面談で丁寧に詰めます。 いきなり個別条件だけを出すと反発が強まりやすいので、 「会社が守りたいもの」と「社員が守りたいもの」を両方言葉にして、すり合わせの場を作るのが有効です。
Q3. 相談するときに、何を持って行けば話が早いですか?
A. ①就業規則(定年・再雇用の部分)②直近の再雇用実績(ざっくりでOK) ③条件の軸案(役割×時間)④面談シート案(希望・提示・合意の記録)を持って行くと話が早いです。
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