
建設業法改正の全体像:元請・下請の実務ポイントと初動チェック
資材価格の高止まり、人手不足、長時間労働。こうした課題に対し、改正建設業法は「契約前の情報共有」「契約後の誠実な協議」「工期・労務費の下限ガード」「ICT活用と専任合理化」で現場のしわ寄せを抑える仕組みを整えます。
本ページでは、2025年12月までに全面適用される内容を、元請と下請の立場別に整理します。
1. なぜ改正が必要になったのか
- 就業者は減少・高齢化。若手は少なく、熟練に負荷が集中しがち。
- 賃金は全産業より低く、労働時間は長めで定着。
- 資材費の高止まりに対し、契約での価格転嫁が追いついていない。
2. いつ何が適用されるのか(スケジュール)
改正内容は段階的に施行され、2025年12月までに全面的に運用される想定です。主な柱は次の4点です。
- 価格転嫁の制度化:契約前の情報通知、契約書への「変更方法」明記、契約後の誠実協議。
- 工期の適正化:著しく短い工期での契約締結を避ける仕組み。
- 労務費の下限ガードと原価割れ防止:不当に低い労務費の見積作成・要求の抑止、受注者の原価割れ契約の禁止。
- ICT活用と専任合理化:遠隔確認などで現場管理を効率化、条件を満たせば営業所専任技術者の兼任も可能に。
3. 価格転嫁ルールの実務(契約前・契約後)
契約前(見積段階)
- おそれ情報の通知:資材高騰や供給不安の「根拠(統計・メーカー発表・報道等)」を添えて、電磁的方法で共有。
- 契約書の整備:請負代金の変更方法を明記。変更を一切認めない等の文言は避ける。
契約後(工事中)
- 高騰が顕在化したら、受注者は変更協議を申し出可。
- 注文者は誠実に協議(公共は義務)し、合理的な期間と根拠で判断。
4. 工期・労務費・ICT・専任のポイント
- 工期:極端に短い工期の契約はトラブルのもと。無理のない工程を協議で確保。
- 労務費:不当に低い労務費は見積・要求ともにNG。現実的な単価を基準化。
- ICT:遠隔監理やデータ共有の仕組みを取り入れ、確認作業を効率化。
- 専任合理化:要件を満たせば現場の兼任も可能。移動容易性・遠隔確認・兼任数の管理がポイント。
5. 初動チェックリスト(共通/元請/下請)
共通
- 契約書の変更方法条項を見直し。
- おそれ情報→通知→保存までの手順を社内で統一。
- 協議の記録テンプレを準備(論点・根拠・合意/不合意・理由)。
元請のやること
- 標準下請契約に変更方法・協議手順を明記し、二次以降にも周知。
- 見積・契約・現場の情報を一元管理(メール・稟議・写真・動画)。
- 極端な短工期にならないよう、工程協議の実施記録を残す。
下請のやること
- 見積提出時に根拠資料付きのおそれ情報を添える(URLやPDF)。
- 契約書に変更方法があるか確認。無い場合は追記を依頼。
- 協議・回答のやり取りは必ず保存(メール・議事録・写真)。
まとめ
- 改正は価格・工期・労務・体制をバランスよく守る仕組みです。
- 元請・下請ともに「契約書の変更方法」「通知・協議の型」「記録の残し方」を早めに整えると安全です。
FAQ
下請でも価格変更の相談はできますか?
できます。見積段階からおそれ情報を出し、契約書に変更方法が書かれていれば、顕在化後に変更協議を申し出られます。
「変更を認めない」という条文が入っていました。どうすれば?
変更方法を明記する趣旨に合いません。契約前に修正を依頼し、やり取りの記録を残しましょう。
遠隔確認はどの程度必要?
現場の状況が客観的に分かる写真・動画・位置情報・タイムスタンプ等を基本に、社内の確認手順を決めておくとスムーズです。
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