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中小企業がまずやるべきストレスチェック全事業場化に備える初手

ストレスチェック全事業場化に備える初手

ストレスチェック全事業場化に備える初手

対象:中小企業経営者・役員/起業したばかりの経営者|読了目安:5分

※大事な前提: 本記事は一般的な情報提供です。社内の規程や運用は、状況に応じて専門家(社労士・産業保健の支援機関等)と確認してください。

Executive Summary(TL;DR 5行)

  • 義務化の波は「制度」より先に来ます
  • 小規模ほど、やり方次第で信頼が増えます
  • 最優先は「守る約束(プライバシー)」です
  • 次に「外部の力」を前提に設計します
  • 90日で“無理なく回る形”にできます

はじめに

労働安全衛生法の改正により、これまで努力義務だった50人未満の事業場でも、 ストレスチェックの実施が義務になることが決まっています(施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」)。

ただ、現場の感覚では「制度の話」よりも先に、 「社員が不安になる」「誰が結果を見るの?」「うちは人が足りない」という“運用の悩み”が一気に押し寄せます。

本シリーズでは、制度を“やらされ仕事”にせず、信頼感と共感を損なわずに、 相談が増える形で整える方法を扱います。まずは「何が変わるか」「何を守れば信頼を落とさないか」を整理し、 次に最小の体制で回す設計へ落とし込みます。今から準備すれば、施行前に「うちは大丈夫」と言える状態まで持っていけます。

1) 変化のポイント:一言でいうと「対象が広がる」

これまでストレスチェックは、常時50人以上の事業場で実施が義務、 50人未満は当分の間、努力義務という整理でした。

今回の改正では、その対象が50人未満にも広がる形になります。 さらに、50人未満の負担に配慮して十分な準備期間を設けること、 施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされています。

つまり「いつか来る」ではなく、「準備期間が明確に置かれたうえで、必ず来る」タイプの変更です。

2) 中小企業が一番困るのは“制度そのもの”ではない

困るのはだいたいこの3つです。

  • 担当者がいない(総務が一人、経営者が兼務)
  • 専門家が近くにいない(産業医がいない)
  • 社員が少ない分、噂が早い(不信感が広がりやすい)

だからこそ、最初に整えるべきは「手順」よりも信頼の土台です。

3) 優先順位は「信頼→体制→運用」

① 信頼(守る約束)

ストレスチェックは、社員にとっては「本音を書いていいのか?」が最大の関心事です。 小規模事業場向けのマニュアルでも、プライバシーの保護不利益取扱いの禁止が章立てで強調されています。

ここが曖昧だと、回答率が落ちるだけでなく、「会社に見られる」「評価に使われるかも」という不安が増え、 むしろ職場がギスギスしやすくなります。

② 体制(外部の力を前提にする)

改正対応として、50人未満に即した、プライバシーに配慮した現実的な実施体制・実施方法のマニュアル作成や、 医師による面接指導の受け皿となる地域の支援(地域産業保健センター等)の拡充が示されています。

小規模ほど、最初から外部の力を使う前提で設計したほうが安全です。 「丸投げ」ではなく、「社員の安心を守るために外部を使う」という発想です。

③ 運用(小さく始める)

制度は“毎年まわる”ものです。初年度に完璧を目指すと燃え尽きます。 まずは「回る形」を作り、改善は小さく積み上げるのが現実的です。

4) 今日の結論:最初の一歩は「社内メッセージ」を決める

まず決めるのはこの3つの“約束”です。

  • これは社員を守るため。結果を人事評価に使わない
  • 個人結果を見られる人を限定する
  • 困った人が相談できる道を用意する

この“約束”があるだけで、協力率も、その後の相談の質も変わります。 制度の成功は、実は最初の説明のしかたでほぼ決まります。

まとめ+要約

  • 改正により、50人未満もストレスチェックが義務化され、施行日は「公布後3年以内に政令で定める日」とされています
  • 小規模ほど「信頼の土台」が成否を分けます
  • 最初に整えるのはプライバシーと不利益取扱い防止です
  • 次に外部の力を前提に体制を組むのが現実的です
  • 運用は完璧より「回る形」を優先します

Next Best Action:社内向けに“守る約束3つ”を文章化してください。

FAQ(3問)

Q1. 施行日がまだ決まっていないなら、何もしなくていい?

A. 「何もしない」は一番高コストになりがちです。社内メッセージ(守る約束)と体制だけでも先に作ると、 後から慌てずに済みます。

Q2. 社員が少ないと、誰が回答したか特定されませんか?

A. 特定リスクは上がります。だからこそ、個人結果の扱い(閲覧権限)と集計の出し方を慎重に設計します。 小規模向けマニュアルでも、プライバシー保護と集団分析の留意点が整理されています。

Q3. うちは産業医がいません。面接指導はどうする?

A. まずは外部の相談・面接導線を確保しましょう。改正概要では、医師による面接指導の受け皿となる地域の支援体制拡充などが示されています。 小規模ほど、外部支援を前提に設計するほうが安全です。

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